専門学校
月曜日
家族が家を出るのを見届けて僕は学校に行く準備をする。
最近、母さんから「いつも、家事してもらってごめんね。本当に辛くなったら言ってね。」と言われるのが増えてきた。
家事をするのは好きなので気にしてないが心配してくれていることが分かり、嬉しかった。
父さんは……相変わらず何も話さなかった。
僕は青色のパーカーにジーンズを着る。
この間、妹に服装を指摘されたのでなるべく目立たないと思う服装にした。
さっきまで家族で朝ごはんを食べたことを思い出す。
ましろはリスみたいにご飯を頬張ってたな〜。
リビングはほのかに暖かい。
急いで着替えたのだろうか、ましろのシャツがソファに裏返しで脱ぎ捨ててあった。
「ディフフ、こういうところはまだ子供なんだよな〜」
そう言って僕はましろのシャツを洗濯機に入れた。
そして、忘れ物がないか最終確認をする。
「ふぅ、よし準備はオッケー。」
そう言って僕はリュックを担ぎ、教材セットを持って家を出る。
───────
1時間後──
電車に乗り、路面電車に乗って僕は専門学校に着いた。
僕の通う桜木調理専門学校は将来料理人を目指す学生が集まる場所だ。
最新の設備が揃っているだけでなく、料理の経験がない人でも講師が丁寧に教えてくれる。
和洋中だけでなく、学びたい各国料理があれば、それを学ぶことができる。
「ふぅ、着いた〜。」
着いたと同時に教材セットを調理専用ロッカーに入れる。
ふと、時計を見ると講義まで10分前だった。
「やばい!!!」
急いで僕は教室に入る。
入った瞬間、周りから何か視線を感じる。
視線の方に目を向けると椅子に座っている女性が3人、目線を逸らした。
次に窓側の方を見る。
男性と女性がいたが、さっきの女性たちと同じように視線を逸らした。
最近、こんなことが多い。
なんだろう?
やはり、こんな大きくて太っている男が料理の専門学校にいるのは目立つのか?
僕が心配しながら講義の準備をしていると隣から「おい。」と声が聞こえた。
隣を見るとスキンヘッドの男性が座っていた。
「おい、聞いてるんか?えっと神崎だっけ?」
「はい、おはようございます。えっと……」
「佐藤だ!佐藤隆太だ。同じ学年の名前くらい覚えろよ。」
「あっ、すみません。なかなか覚えられなくて。」
「ったく、しっかりしろよ。」
そう言って佐藤さんは腕を組む。
初めて話すのにすごいグイグイ話してくる。
苦手なタイプの人だ。
「なぁお前、今日の午後にある実技覚えてるか?」
「あっ、ええっと野菜を切るんだっけ?」
「そう!お前、できるか?」
「まぁ、家でしていることならある程度できると思う。」
僕が言うと佐藤さんは、「ほほぅ」といった表情でニヤリと笑った。
えっ、何?
何を思っているの?
怖い!
「ところでお前、店で料理したことある?」
急に話が変わった。
「えっ、一応バイトは今もしているけど。」
「なるほど分かった。なら、今日も楽しみだ。」
一体何が楽しみか分からず、僕はポカンと口を開ける。
「なんだ、その顔?気持ち悪い。」
こいつ嫌いだ。
もう、隆太でいいや。
僕はそう思いつつ、講義の準備をした。
───────
午後12時、午前の講義が終わった。
僕は持ってきた弁当をリュックから取り出す。
今日はオムライスを作ってみた。
今頃、ましろも昼食の時間だろう。
僕はそんなことを思いつつ、楽しみにしていた弁当箱を開けた。
「なぁ、それお前作ったんか?」
横から隆太が話しかけてくる。
「あぁ、うん。」
僕は眉間にシワを寄せた。
今度は何だ?
僕がそう思っていると隆太が箸で僕のオムライスをつまみ、口に入れた。
「むぐむぐ、おーなかなかうまいな。」
「何するんだよ!」
僕は慌てて弁当箱を隠す。
「おいおい、少し食べただけで怒るか?男なら気にするなよ。」
隆太が笑いながら答える。
「いやいや、普通嫌がるから。」
「あー、でもお前のオムライス少し甘すぎるな。」
「はぁ?」
お前のために作ったんじゃねえよ。
僕はイライラしていたが他の人もいる中で怒るのはまずいと思いぐっと堪えた。
「ところで午後の実技は確か大根のかつらむきだそうだな。」
隆太が突然僕に言う。
「あっ、そうだね……」
「はぁ、かつらむきなら小さい頃、嫌ほどやったわ。」
「へぇ〜そうなんだ。」
そう言いながら、僕はそそくさと荷物をまとめる。
「そう。俺は、寿司屋の息子だからな!こんなのできて当たり前なんだよ。」
「お〜すごいすごい。」
隆太が天狗になっている間に僕は教室を後にする。
「そうだろう。だからお前も……てっおい!どこ行ったーーー!」
教室の中から隆太の声が響いている。
佐藤隆太か……
そういえば、今日の講師の名前も佐藤だったような?
まぁ、多分親戚とかではないんだろうけど。
そう思いつつ、僕は静かな場所を探しに向かった。




