05-03 身重の母
アネットです。
お目覚めになったソフィア姫様はお母上セラルド様に会いに行かれました。
私だけではなく姉君エスティーカ様とクラウスさんもご一緒です。
あらかじめご説明はしていたのですが、それでも臨月に近づきつつあるセラルド様のお姿を見た姫様は狼狽のご様子でした。
「お母様、お腹の子供はお父様との子では無いですよね?」
「ええ、私とメルデオラの人間ユリアとの子供よ」
姫様のお顔が凍り付いた…ような気がしました。
「お幸せそうですね、お母様?」
「ええ、愛するユリアの赤ちゃんだもの。この子は王家の一員としてあなた達の弟か妹になるの。かわいがってあげてね。」
「その子を私の弟か妹としてかわいがるのは構いませんが、お母様は人類解放同盟の工作員の被害者だと伺いました。その工作員を愛している、とは?」
「この子が産まれた後に、あなたは両親が愛し合って生まれた子供よ、と教えるためよ。
ソフィア、あなたや私と同じ異能を持つ子供が素直に育たなかったら、自分は望まれなかった子だと感じたら、どんなことになるかしら?」
「なるほど、お母様の深いお心を理解できずに申し訳ありませんでした。
でも、ユリア…さんとはきちんと区切りをつけられたのでしょうか?
お母様はその子を出産後魔王に即位なさいます。しかしユリア…さんへの愛情は変わらないご様子。お立場的に慎重な行動をお願いします。」
「お黙りなさい!」
今度はセラルド様の空気が凍り、ひび割れた気がしました。
「ソフィア、実の娘のあなたでも親の恋愛や性について口を出すことは許しません。たとえそれが不義の類だったとしても。
それが許されるのは私の夫であるスミカだけです。」
セラルド様は一度息を吸って感情を整えたご様子です。
「しかし、あなたの懸念は心に留め置きましょう。」
エスティーカ様が私に囁きました。
「1年間の記憶を失ったことは、ソフィアちゃんの情操に大きな影響を与えているようね。お母様と問題が起きないように気を付けてあげて。
私は何があってもお母様の味方だから。」




