04-20 化物対化物 1
クラウスです。
この場に割り込んだスミカ様はあの女、エレインに冷たく微笑みます。
「この女には僕も、妻セラルドのことでオトシマエをつけさせなければならないんだ……」
あの女、エレインはスミカ様に応えます。
「妻とは食用人間の雌となり仔を孕んだ我が孫娘のことか?良い声で啼いておったぞ。
其方はユノアの嫁リマドが造り上げた化け物だったな。良い機会だ、その片鱗を見せておくれ。」
そう、僕も見たい。これでも勇者の端くれだった僕を指一本で行動不能にした、王国の最大戦力スミカ様とはどんなものなのか!
エレインの姿が揺らぎました、空間に溶け込むように。
「私も魔族の血の極み、化け物と呼ばれた者だ、さあ、スミカよ、其方の力を見せておくれ。」
エスティーカ姫様が叫びます「スミカお父様! 母は時空に潜ることができるのです!」
スミカ様は姫様のお言葉にやわらかい微笑みで返し、一歩進みました。踏み込みが深い!
スミカ様の剣はエレインを両断するに十分なものだった…ような気がします。
全力で注視していたのに太刀筋は見えなかった!慚悔が僕の全身を包みます。
けれど、エレインは何事も無かったかのようにスミカ様を見つめました。
「その程度か!?そこな小僧でさえ我が障壁を砕き、私に掠り傷を負わせたぞ。化物と言われる者が私に触れることもできなかったのか!?期待外れもこの上ないぞ!」
スミカ様は無言でエレインに王国貨幣をはじきます。
貨幣はエレインの額に当たり、床に落ちました。
「痛っ!?障壁が消えている!?スミカ!?其方いったい何をした!?」
「かつて私は故郷で魔神と戦いました。
巨大な魔力は空間を歪め、この世界から少し位相が違う場所にはみ出すのです。
あなたの魔力も同様。この世をはみ出た場所にいるもう一人の私の眼には、はっきりと見えましたよ。
そう、私はあなたの魔力だけを斬ったのです。
両方の世界を同時に斬らなければならなかった魔神よりも遥かに簡単でした。」
「なん…だと!?」
エレインに動揺の色が見えました。
必死に魔力を呼び起こそうとして、何も起きず表情が絶望に代わります。
「次はこの世界の貴方です。」
スミカ様は冷たい微笑みのまま一歩踏み出しました。
僕は必死に考えます エレインは先のソフィア様襲撃後、悄然と処罰を受け入れたはず……おかしい!
ならば、エレインの心を歪め、悪しき行いを吹き込んだのは誰だ!?
「まさか、ナイトメアか!?」かつての朋輩の名が脳裏に浮かびました。
「スミカ様!今のエレインを斬ってはいけません!」
叫びつつ、僕の声がスミカ様に届くよう祈りました。




