03-SS-06 決断の時
クラウスです。
最近体がおかしいのです。
いや、体調が悪いという訳じゃなくてむしろ絶好調なのですが、ご飯を食べてお腹は一杯になっても心が満たされないというか何か物足りないというか……
この恰好ですか?これはエスティーカに「着てみてね」と渡されたものです。普通ならこんな女の子の服装なんてスミカ様じゃないんだからお断りのはずなのに、なぜか言われるままに着てしまったというか……渡された女物のぱんつまで履いてしまって、鏡の前で自分のパンチラにドキドキしてみたり……体のおかしさが心の不安定にもつながっているのだろうか?と不安になったりしています。
独りで心配していてもしかたない、困った時はまず相談、とエスティーカのところへ行きました。
僕の顔を見るなりエスティーカは僕の手を取りました。彼女はうつむいているので表情は伺えません。
「エスティーカ、僕の身体のことで相談があるんだけど……」
僕がそう切り出すとエスティーカは僕の顔を見た後悲しそうな表情になり、両手で顔を覆ってしまいました。もしかして僕の身体に何か重大な問題があるのかも……不安になります。
「クラウス、ごめんなさい。私は今、生まれの不幸を呪っています。私ではクラウスを助けてあげられない……」
それは絶望に打ちひしがれた声でした。
「私にリマドお婆様やセラルドお母様、ソフィアちゃんのような力があれば……」
リマド様から受け継がれた因果の糸を操る異能は聞いています。そんな力が無いと僕は助からないのだろうか?覚悟を決めた方がいいのかも……
「クラウス、以前私に王位を目指さないのか?、って聞いたよね?今私は心を決めたよ。私は魔王ソフィア様の忠実な下僕になる!そしてソフィアちゃんにお願いしてクラウスを立派な男の娘にしてみせる!」
……彼女は何を言っているのでしょう?
「そんなことよりも……」
と言いかけた僕の言葉をさえぎってエスティーカは言います
「そんなこと、じゃないよ!クラウスの一生に関わる大事なことなんだよ!……そうよ、私はリマドお婆様のお気持ちが分かった、逸材を目の前にして放置するのは罪!リお婆様がスミカお父様にしたようにクラウスを世界一の男の娘にする!それが私が生きる意味なんだね!」
エスティーカにはもう僕の声は届いていないようです。
しかたがないのでエスティーカを連れてセラルド様にご相談に行きました。ちょうどスミカ様も帰国していました。
「男の娘になりたいのならお母様の方が詳しいわよ。」
僕の姿を見るなりセラルド様は言います。まったくこの母娘は……違いますよ!
僕が体の異常、特に正体不明の渇望について説明するとスミカ様は瓶を持ってきました。そして中身をスプーンに少量移します。
差し出されたスプーンを僕は口に入れました。青く透き通る液体、初めての味……何か分かりませんがとてもおいしかったです。
ずっと感じていた満たされなさが少し和らぐよう。そしてもっと飲みたい!という強い欲求が体の奥から湧いてきます。
我慢できそうにありません。
僕の訴えを聞いたスミカ様は妄想全開のエスティーカを揺すって正気に戻しました。そして僕達に言います。
「クラウス君はかなり魔族化が進行している。人間の魂への渇望が強く出ているということは、人間でいる限界点だろう。」
???さっき飲まされたのは人間の魂だったの???
事情聴取された結果、毎晩エスティーカに毎日キスで魂をぺろぺろされていたことで、少しずつ僕は魔族化していたらしい、と分かった。
普通人間を魔族化する時は魔族の血を一気に与えて2~3日で変化させるから僕はレアケースらしい。しかもエスティーカは母親エレイン様からそのあたりの教育を受けていなかったようで「ごめんなさい!」とひたすら謝っていた。
セラルド様からも母親として不注意でした、と謝罪された。
そしてエスティーカと僕は決断を迫られた。今後エスティーカが僕の魂に触れるのを控え、僕が渇望を我慢しながら生活するなら「人間」の範疇でいられるだろう。ただし一口でも魂を味わってしまった以上渇望は激しいものになるだろう、それが嫌ならばここでひとおもいに人間をやめて魔族化するか、ということだ。
セラルド様は言う。
「魔族になって正式にエスティーカ姫のお相手になれば、立ち位置もこれまでの中途半端ではなくはっきりします」と。
今の僕は魔族の中で問題視されているらしい。……人間の勇者が魔族の王宮にいたらまずいよな……
「それに魔術による男の娘化人体改造も魔族内で容認されるでしょう」と余計なこともつけ加えた。
僕的に問題なのは、血をもらって魔族化すると血の主に絶対服従なことだけど、エスティーカならまあいいか。
僕は「一晩二人で相談して決めます」と一旦お部屋を辞しましたが、横で浮かれているエスティーカを見ると結論は出ているんだよなあ……




