03-03 襲撃のこと
初めてのお茶会が終わって、私は悩んでいました。
イリスは、先日の襲撃に加担した父親の助命を願いました。
同じ魔族、それも名門シトウ伯爵の娘アネットが私に「好きだ」と言っただけで不敬罪を心配されたのです。
人間の大罪人の娘が、父親の助命を魔族の私に願うというのは決死の覚悟だったはずです。
私がもしお父様の命が危ないと聞けばやはり何とかして助けようとするでしょう。
たとえお父様が咎人だったとしても。
だからイリスの気持ちは理解できます。
でもあの襲撃は思い出したくもないほどひどい経験でした。
アネット達侍女も大怪我を負いました。
イリスの願いは却下して忘れるべきなのでしょうか?
でも、それも正しくない気がします。
私はお母様にあの襲撃について伺いに行くことにしました。
アネットが私を心配してついてきてくれました。この子の気配りは嬉しいです。
お母様は思案顔でした。
大罪人の娘が私のお茶会に出ていたというのは想定外だったようです。
イリスは元商業ギルド長ルーセントの隠し子だったせいでチェックをすり抜けたようです。
お母様はお城の調査役にご立腹です。
それよりも私はあの襲撃のことを聞きたいのです。
お母様は言いました。
「あれはあなたにとっても辛い経験のはずです。
罪人の処置についてはあなたの母ではなく次期魔王として嫌なことを言わなければなりません。それでも聞きたいのですか?」
私は「はい。」と答えました。
お母様は仰います。
「分かりました。アネット、あなたが見ていてソフィアが辛いようなら私の話を止めなさい。」
お母様によると、あの襲撃は人類解放同盟という暴力的組織が魔族の王族殺害を狙って起こしたことだそうです。
私を人質にしてお父様やお母様をおびき出して殺そうとしたそうです。私も「乱暴」された後殺される予定だったそうです。
話を聞いているだけで足が震えます。涙も浮かんできます。アネットが私に触れました。「大丈夫。」と答えます。
乱暴というのは余程酷いことだと想像できます。
イリスの父ルーセントは、魔族と交渉して街の人間の地位を向上させることを目指していたのだそうです。
でも親族に暴力的な人類解放同盟に共感する者がいたそうで、いつの間にか王都の責任者にされてしまったそうです。
私は言います。
「それではルーセントが悪いわけではないのでは?」
お母様は答えました。
「経緯がどうであれ王族襲撃という大罪です。犯人とその家族は連座で死罪に相当します。」
「親族の人類解放同盟に共感した者とは誰ですか?」私は聞きました。
「ルーセントの妻カーランと弟ルーヴァイスのようです。」
「では悪いのは妻と弟ではないのですか?」
私の問いにお母様は
「王族への弑逆は家族を含めて死罪、それが歴代魔王陛下が維持してきたローナ王国の法です。」
と突き放します。
家族を含めて?ではイリスは?
「勿論あなたのお茶会に出席したイリスも例外ではありません。彼女は現在咎人として拘束されています。」
「自分が知らないことで死罪になるなんておかしいと思います!それにイリスは必死に助けを求めて来たんです!」
私の叫びにお母様は答えます。
「たとえあなたがおかしいと思っても法は法、ここ以外で法をおかしいと言うのは王国への反逆行為です。
王女のあなたといえど罪に問われるでしょう それが王国を治めるということです。」
アネットが口を開きました「セラルド様、お話はもう十分かと……」
私は肩を落として部屋に帰りました。アネットがつないでくれた手がとても暖かく感じられました。




