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02-SS-04 勇者アーランド

【お知らせ】

お陰様で手術も無事終わり退院できました。今夜から拙作「ローナ王国物語」を再開いたします。

お待たせいたしました。今後ともよろしくお願いいたします。


俺はアーランド・グラウン。

元は魔族の国ローナ王国の西方の都市ウリフシで武装商人をしていた。といっても女房と娘を養うので精一杯のささやかな商売だったが、幸せだった。

俺がルーバハラでの仕入れからの帰途、ある村の宿でウリフシの様子がおかしい、という噂を聞いた。

「どうやらウリフシに勇者が現れたらしい。」という内容だった。

勇者なんてろくなものじゃない。どういう訳か、勇者が現れた街では魔族への叛乱が起きる。勇者の叛乱が成功した例なんか聞いたことが無い。それでも反乱は起きるのだ。……その結末は……降伏しない者全ての鏖殺だ……

俺はすぐに宿を飛び出して夜を日に継いで馬車を走らせ、ウリフシを目指した。間に合ってくれ、何とかして妻と娘だけは街から連れ出さないと……

一頭の馬が泡を吹いてつぶれ、馬車も仕入れた荷も捨てて、俺は残った一頭の馬を走らせた。


だが、そこには故郷ウリフシではなく廃墟があった。魔族達が街の人間を門の外に積み上げていた。俺は、放り投げられた人間の顔が妻であることを見てしまった。次に放り投げられた子供の顔が娘であることも。俺は魔族の兵をかき分けて躯の山に走った。そして妻と娘を抱きかかえつつ魔族を見た。

「お前らが殺したのか!?」魔族への恐怖よりも激情が先に走り出た。

だが、そこにいたのは、生物らしからぬ存在だった。元々化物である魔族にしてもおかしすぎる。小柄な体躯に白髪の長髪、感情の欠片も無い青緑の瞳。死神の姿を模したような硝子細工の少女だった。

「降伏勧告に応じなかった者達だ。」地を這うような冷たい言葉だった。

「女子供が反乱に加担するはずないだろうが!」俺の涙交じりの怒声に帰ってきたのは

「私達にそれを判断する術はない。」という心を凍り付かせる言葉だった。

この化物には人間のような情は無い!俺は思わず武器を抜き放った。サンセツコン、これは敵の意表を突ける、せめて妻と娘の敵に一撃でも加えられたら……

しかし、俺の渾身の一撃は白髪の悪魔の側にいた大男の斧で弾かれた。

大男の斧の背が俺の顔を打ったと気づいたのは、暫く地面を転がった後だった。

魔族の軍はいなくなっていた。俺の横には妻と娘の死体、向こうには焼き払われた躯の山があった。

俺は最後の力で地面に穴を掘り、妻と娘を埋めた。そして祈るために膝を付いてそのまま気を失った。


「成功だ……」

どれぐらい眠ったのだろう?俺は遠くから響く言葉に目を覚ました。

俺が目覚めた時、横には坊主が二人いた。

「やあ、助かって良かった。魔族にやられたようだね。大怪我をした君を偶々我々が見つけたんだ。アルシアス神のお導きに違いない。私はホランド、彼はモルタだ。君の名前と事情を教えてくれないか?ここはヴィクラの街だ、もう君は安全だよ。」

歳を取って人のよさそうなホランド司祭、それに若く敬虔な助祭モルタ。

「俺はアーランド、名乗るべき家名は妻と娘と共に亡くした。」そして俺は故郷ウリフシの街が魔族に滅ぼされたことを語った。

ホランドもモルタも涙をぬぐいながら俺の話を聞いていたが、俺はふと駆け出しの武装商人だった頃に騙された詐欺師どもを連想した。だが、彼らの次の言葉に、俺は奴らが何者であれどうでもよくなった。

「アーランド君、この教会で君を治療していた時、我々は神の御力が君に宿るのを感じた。魔族に大切な人を殺され、大きな悲しみと喪失を感じた者には、稀にアルシアス神の御慈悲が下されることがあるのだ。そう、人間の守り手、勇者としての覚醒だよ。ちょうど君と同時期に勇者として覚醒した者が他に四人いる。」

「回りくどい話はいい!俺に何をさせたい?魔族に一矢報いられるのなら俺は何でもやるぞ!」

モルタが割り込んだ。「待ってくださいアーランド殿、勘違いしないで下さい。我々は争いを戒めるアルシアス神に仕える者だ。だが、君と君の力を必要とする方を引き合わせることぐらいはしよう。ロナーリアの商人、ルーヴァイス・スロフト殿とその義姉上カーラン・スロフト殿だ。」


そして俺はルーヴァイスとカーランの元で、4人の勇者とやらに引き合わされた。

一人目はフローラ、メセド公国の弓手の生き残りらしい。魔族の襲撃で国を滅ぼされ恋人を殺されて魔族に弓を射る機械になったらしい。

二人目はシダーク、シュターテンとかいう国の「レスラー」だったらしいが、対戦相手2人と「レフェリー」とかいう奴の3人を殺して追放になったとか。日頃は呑気な筋肉親父という感じだが、戦になると狂ったようになるらしい。

三人目はミラン、キーノとかいう国の剣士で「人ならざる者」を斬りたいんだそうだ。

最後がフライ、フライハイトの略らしいが、アルマニとかいう国の、話が通じないいけ好かない鎖使いのガキだ。

ルーヴァイスとカーランは俺達に仕事を依頼した。魔族の王女を誘拐する仕事だそうだ。


写真とかいう魔術具を見ながらシダークが言った。

「うちの娘とかわらない歳恰好なのに、かわいそうなもんですね。」

俺はこみ上げる怒りと共に叫ぶ。

「間違えるな、こいつらは人間の天敵、人喰いの魔族だ。ガキでも情けは無用だ。叛乱が起きた街に住んでいた、ただそれだけの理由で殺された俺の家族の仇だ!」

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