春の章 憂来無方 3
金兜と各務が加わり、ようやく会議が始まる。
最初に直江(愛の元夫で現警視総監)の調査報告を剣が述べる。
登場人物紹介
王生 剣
王生家の中心人物。現在に目覚めた不動明王。普段は天然で抜けているふりをしているが、先見の明を持っており何事も卒なくこなす正に聖人君子。
職業は仏像学芸員。
王生 三世
降三世明王が現在で体を借りている人物。意識だけは降三世明王が支配している。
10年前、とある島で三世の意識を支配してからは王生家で生活している。
職業は獣医師。車で診察を行う移動動物病院を経営している。
王生 愛
剣の今の奥さん。現在に目覚めた愛染明王。剣との間に煌徳を産んでいる。大耶の実母。職業は舞台女優。仕事の関係で北海道にはいないが、クリスマスと年末年始は必ず家族と過ごしている。
王生 煌徳
剣と愛の実子。現在に目覚めた大威徳明王。現在酪農大学の学生で三世の跡を継ごうと獣医師を目指している。愛くるしい顔をしているが怒ると家族の中では一番怖い。
各務 恵光
M.C.H.の館長。剣とは公私共に面識あり。
彼は現在に目覚めた恵光童子。剣に仕える立場の人物である。
三世だけは「えこう」と呼んでいる。
阿達 金兜
王生家御用達のタクシー運転手。
正体は現在に目覚めた 阿耨達童子。
星、金、キラキラしたもの好き。
クリスさん
王生家で飼っている白毛のアイヌ犬。三世のお目付け役でもある。
ベアドッグ、セラピードッグ、レスキュードッグ、医療アラート犬。
正体は俱利伽羅竜王。
143年前は剣の愛馬として登場。
直江 菱耶
大耶の実父(現在の剣の妻である愛の元夫)。警視総監。
何故か剣の良き理解者。
九条 道隆
143年前、大自在天が意識を支配していたと思われる人物。
表向きは陸軍省総務局少佐。実は大日本帝国陸軍の諜報員だった。
在原の家系図を辿ると彼に行きつく。
父は 九条 幸恒。陸軍省大臣。
「おじゃましまーす」
金兜と各務が玄関に靴を揃え、リビングルームまでやって来た。
「いらっしゃい。金兜、今 一人就寝中なので静かにお願いしますね」
大耶が出迎える。
「了解です」
「ここ、どうぞ座ってください」
二人分の座布団を用意する。
「恵光、先に言っておくけど 寝てるの さくらだから」
三世が先に伝える。
「烏丸さんが寝てるの?どうして?」
「三世が連れ込んだ」
「痛っ」
三世がお決まりのパターンで煌徳を軽く叩く。
「可哀想に…」
金兜が煌徳の頭を優しく撫で、寄り添い、慰める。
「金兜、ありがと」
「煌徳、俺もノンアルちょうだい」
「飲んでも大丈夫なの?」
「大丈夫。発泡性の炭酸飲料だから。1缶だけ。ねっ」
金兜が手を合わせてお願いする。
念のため 煌徳が商品ラベルを確認する。
【アルコール度数 0.00%】
「はい。カシスオレンジでいい?」
「サンキュ」
嬉しそうにプルタブを引く。
「食事は片付けてしまったんでポテチしかありませんが、いいですか?」
大耶がポテチを2袋開封し、お皿に盛る。
「全然いいっすよ」
グイっと一口飲んで、目の前の山盛りポテチをつまむ。
「これ美味いわ。ホタテと昆布の味がする」
「5月までしか販売していない北海道限定のポテチです。先日大人買いしてしまいました」
実は北海道限定のキーワードに弱い大耶。
剣と清隆が二階のベランダから戻って来た。
「二人ともお疲れ様。金兜、連絡ありがとな」
「いいえ。清隆がいて良かったです」
「えっ!?」
各務が思わず顔を歪める。
おいおい、確かさっき信用してないとか正直不安だったとか言ってたよな。
……世渡り上手な奴だな。
一方、剣は言うか言わないか眉間を寄せ腕まで組んで迷っていた。
「金兜、今度から連絡は電話で頼む。モールス信号の解読は少々不安だ」
ストレートに告げる。
「えー。王生さんしかわかってくんないのに、今度から何処で使えばいいんですか」
「金兜、声が大きいです」
大耶が小声で注意する。
「じゃあ両方使おう。曇り空に星が輝いていたら絶対おかしいだろ?臨機応変に。なっ」
流石 不動明王。救いの一手矢。要領がいいな。
各務がしれっと大きな手でポテチを掴むと一気にかさが減った。
「三世、クリスさんがゲストルームの前で寝てたけど、いいのか?」
剣は寝場所を移動していたクリスさんに気が付いていた。
「さくらを護ってる」
「そっか。いつもみたく丸くなって寝てなかったから」
「スフィンクスみたいだったろ?」
「スフィンクスは体がライオンじゃなかったっけ?」
煌徳が頭の中でエジプトの有名なギザの彫像を思い浮かべる。
「顎の骨から気配や振動を感じ取る警戒中の姿勢のことだよ」
「流石、三世。尊敬するわ」
「勉強頑張れ!後継者君」
「はい」
意識は降三世明王が支配しているけど知識は三世のままなんだ。
器用な体だよね。時々千世の意識も現れるし…。
「俱利伽羅竜王が烏丸さんを守護しているということは、在原…大自在天の出現と何か関係しているのか?」
各務が部下でもあるさくらの身を案ずる。
「今日さくらさんを大耶と炎、清隆、愛さんに紹介したんだ。宴会みたいに盛り上がって遅くなってしまったのもあるが、危惧したのは大自在天が突如M.C.H.に現れたことだ」
「やはり大自在天の気配を感じていたのか。すまない。胎内仏を強奪された」
各務が正直に答える。
「そうか…。なので身の危険を案じて泊まるよう勧めたというわけだ」
「なるほど」
「だってあいつのマンション、彼女のマンションから100メートルほど先にあるんだよ。絶対危ないと思うよ」
金兜が打ち明ける。
「聞き捨てならないな」
三世の口調から怒っているのが ありありと分かる。
「柑橘系の香水の匂いがきつかったし。そうそう彼女に一度だけ車内で何かこう変な術みたいのをかけて朦朧とさせ、何かしようとしてた。あと寒気がするとか言ってたかな」
三世のこめかみの上の血管が浮き出てくる。
「あーもう…金兜 喋りすぎ。炎の㊙情報が…」
「おい。宝…どういうことだ?」
「えっとぉ……その…何らかの術を使ってさくらさんを操り…無理矢理その気にさせちゃった?みたいな。違ってたらごめん。お酒入ってたから曖昧で…」
「へぇー。ますます懲らしめたくなってきたわ」
「宝、ほぼほぼ合ってますよ。三世に言ったら、直ぐ行動に出るから黙っていたんです。今だって恐ろしい形相ですよ」
これ以上二人が揉めないよう大耶が間に入る。
「まさか」
「目が真っ赤ですよ。降三世明王」
「そんなはずは…」
三世が慌ててスマホを片手で操作しカメラで自分の顔を確認する。
映っていたのは琥珀色の瞳の三世。
「いつもの俺じゃないか」
「成長しましたね」
わざとらしい笑顔で答える大耶。
絶対 千世が降三世明王の意識を抑えてる。
さっきから右手をテーブルの下に隠したままだ。左手だけでスマホを操作するなんて怪しすぎるだろ。
大耶は三世に心を読まれないようスムーズな動きでポテチの袋を開け、少ししか残っていないお皿に中身を移す。
すかさず各務が掴む。
「ところで、奥さんはここにいないみたいですが…」
各務が室内を見回し愛の姿を探す。
「あぁ。実はさっきまでパソコンを通して見せていたんだ」
「そうだったんですね」
「時間も時間だし愛さんの美容に気を遣ってシャットダウンした。内容は後で私がマネージャーに報告しておくことになっている」
「三人も側に置かなくても…。剣さんは母のことになると人一倍心配性になるんですね」
剣に対する嫉妬?大耶の心の中には自分でもよくわからないジェラシーがあった。
「愛してるから」
「はいはい。わかってます」
二人の間にただならぬ空気が漂う。
「宝、三人って?」
「三世は知らなかったっけ?父さんったら清隆以外の三人の童子を愛さんのボディーガードにつけてるんだよ」
「だから側にいるのは清隆だけなんだ」
「愛してるが故に…ね」
「それ愛って言うの?束縛じゃね?」
剣が咳払いして開始の挨拶をする。
「家族会議…いや、作戦会議を始める。大自在天が現在で進めているこの世の支配計画を阻止する。そして在原朝臣を救う。それが今回の我々の使命だ」
一瞬でこの場にいる全員の気が引き締まる。
「先ずは私と恵光、そして直江の報告だ。煌徳。冷静にな」
「え?は、はい」
何故 僕を名指し?
もしかして白石さんの件か…。
「先日 直江が島で地道に捜査して掴んだ情報を共有する」
「父が?」
「在原が大学生時代に研修船に乗って小笠原を訪れていた理由。そして、10年前。三世が何故 在原を救助したのか」
三世が心する。
煌徳の宿命通でもその肝心なところが見えなかった。
それを今、知ることができる。
「それは在原朝臣が自分の先祖が代々隠していたものを全て知ってしまったからだ」
誰一人声を出さずに静聴する。
「未遂とはいえ歴史的な国家を揺るがす一撃。
143年前、陸軍省総務局少佐 九条道隆の父である九条 幸恒にが企てた陸軍のクーデター」
剣の目が見開く。
「恐らく大自在天が企てた143年前のこの世の支配計画の一端だろう」
いつも読んでいただきありがとうございます。
ご当地ポテトチップスに目がないです。
美瑛のおいも 大好きです。
まだ白黒ポテトチップス見かけてないな…。
主人が単身赴任先から月1回帰って来る。PC使ってたらちょくちょく見に来る。止めて欲しい。




