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11.リュカの来訪理由

 感動したビビアンはたーちゃんを抱き上げる。


「すっげぇ! すっげぇよ、たーちゃん! 本当にご飯食べてる!」

「びびあん、おともだちできてうれしい?」

「うん!」

「あっちもおともだち?」


 たーちゃんが指さしたのはリュカだった。ビビアンはそこで初めてオーレルとリュカの存在に気付いたようだ。


 じいいっと見つめてから、たーちゃんを抱きしめたままリュカ達との距離を詰める。


「君、王宮錬金術師採用試験にいた子だよね? ジゼルの飴食べてた子。たーちゃんに呼ばれてきてくれたの? 僕のお友達になってくれるの?」


 どうやらリュカとビビアンは初対面ではなかったようだ。

 ジゼルは王宮錬金術師採用試験に足を運んではいないが、そこでも彼らほどの年齢の子は珍しかったのだろう。


 目をキラキラさせて「ねぇねぇ」と迫っている。

 一方でドランの緊張は解けていく。


「なんだ、たーちゃんが呼んだのか」


 突然の登場に驚いたが、ジゼルもドランと同じ意見だ。きっとビビアンのために同年代の錬金術師であるリュカを呼んでくれたのだろう。


 ずっとこの場にいたたーちゃんがどうやって呼んだのかは謎だが、そう思えてしまいそうなほどのタイミングだった。


「いや、別に呼ばれたってわけじゃないが……まぁいい。試験参加者が作った錬金アイテムは一通り見たけど、ビビアンの名前はよく覚えている。とても丁寧な作業をする錬金術師だと感じた」

「やったぁ! 今日だけで友達いっぱいできた」

「友達になるのはいいけど、なんでジゼルの契約精霊と錬金術を使ってたんだ?」


 リュカはビビアンの勢いに押されながらも、すぐにいつもの大人びた表情に戻る。


「たーちゃんが手伝ってくれるって言ってくれたんだ」

「たーちゃん、びびあんのおともだちだから」

「答えになっていない。いや、精霊に人間の枠にハマった答えを求める方が間違ってるのか? 僕の理解力が足りていないのかもしれない。ジゼルの錬金飴だって予想を越えていた。まだまだ精進しなければ」

「ジゼルの錬金飴美味しいよね! 僕も好き!」

「ああ」


 ツンとした言葉を並べながらも口元は笑っている。年が近いのもそうだが、二人はよき友人になりそうだ。


「それにしてもビビアン、それは黄色いアヒルの貯金箱か? ビビアンがこんなに綺麗なアイテムを作れるようになっていたなんて、じいちゃん知らなかったぞ~。本当にビビアンはすごいな」

「黄色いアヒルの貯金箱、というとオーレルさんの国のお伽話に出てくるアイテムでしたっけ?」

「うん! 今日から僕のお友達で相棒なんだ〜。お金貯まったらいろんな材料を試して、道具も母ちゃんのお古じゃないの買って、ジゼルの飴を買う分も貯めとかないと! 今日持ってきた分はなくなっちゃうからまた一から頑張んないとなんだ。あ、そうだ。リュカ、このお金返すね。貸してくれてありがとう」


 ビビアンはハッとして、貯金箱から出てきた金貨を差し出す。

 けれどそれを受け取ったリュカは流れるようにジゼルの手に載せた。


「ジゼル、疲労回復の錬金飴を瓶入りで二つ売ってほしい。ストックが切れないように気を付けてたのにあいつらが勝手にバクバク食べるから。飴の代金を入れておけばいいというものじゃないと言っているのに、人の話を聞きもしない」

「もしかしてリュカも食べてくれてたの?」

「母上からもらったんだ。納得するアイテムじゃなかったらあの日、ジゼルを引きずってでも試験会場に連れて行っていた」

「いじわるはだめだよぉ」

「そんなことをすればお前は今頃錬金術を続けられなかっただろうな」


 先程の緊張とは比べ物にならないほど、部屋の温度が一気に下がった。ジゼルを背中に隠すドラン。だがリュカは一歩も引かない。


「そのくらいの威嚇で僕が引くとでも思うか。舐めるなよ、ドラゴン使い。君を敵に回すくらいでジゼルという錬金術師の未来が守れるなら安いものだ」

「まぁまぁドラン、ひとまず落ち着いてくれ。リュカも言い方が悪いぞ。この子はジゼルを慕っていて、いきなり辞めさせられたジゼルのことを本気で心配していただけなんだ」

「僕はただジゼルの錬金術師としての才能を認めているだけです。誰かに邪魔されて潰れるなんて僕が許さない」


 リュカは淡々とした言葉を紡ぐが、言葉の裏にはジゼルの解雇に関わった者への怒りが滲んでいる。


 クビになった直後は、自分のことなんてオーレル以外は必要としていなかったのではないかと落ち込んだものだ。


 けれど時間が経ち、少しずつ交流を重ねていくうちにジゼルの作った錬金アイテムを必要としてくれる人が、認めてくれる人がいることを知った。


 ギルドの中でもきっと、全員が全員ジゼルのことを嫌っていたわけではなかったのだ。少なくとも、目の前にいるリュカは怒ってくれている。


 そしてジゼルの作った錬金アイテムを求めている。それだけであの頃のジゼルは報われた。


 けれどリュカの目的は錬金飴だけではなかったようだ。オーレルはニマニマと笑いながらリュカの頭を撫でる。髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜられたリュカが少しだけ不機嫌になるのもお構いなしだ。


「今日だってジゼル達があとで焦らないようにお話に来てくれたんだもんな〜」

「話?」

「……別に大した話じゃない。先日、他国の王子を歓迎するために王家主催の大規模なお茶会が開かれた。そこでとある方が着用していたクラバットが、錬金飴の包み紙と同じ柄だった。赤や青なら偶然だと思えるが、緑だ。錬金飴を食べたことのある人間ならすぐに気づく。近々、貴族達からクラバットに関する問い合わせが来ると思うが、知らなかったらジゼルは焦るだろ。断るにしたってジゼルはそういうの上手くないから、言葉を考えるのに時間かかりそうだし。……錬金飴を買うついでに教えてあげようと思っただけだ」


 フンッと顔を逸らすリュカだが、耳は真っ赤に染まっていた。


リュカはビビアンと同様に『【閑話】王宮錬金術師採用試験会場にて』に登場した子です。


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