2.お久しぶりと初めまして
部屋には二人と一匹分のティーセットとクッキーが置かれていた。ドランは三つのカップにお茶を注いでくれる。彼に短くお礼を告げてから紅茶を啜る。
「はぁ……美味しい」
「このクッキーに入ってるのなんだ? 初めて食べた」
「れもんかーど。おじちゃんがおしえてくれたのをおやじさんがつくってくれたんだぁ~。おいしいよぉ〜。たーちゃんもおじちゃんもおきにいり」
フルーツサンドをきっかけに、サンドイッチさんは甘いサンドイッチもお気に入りになったようだ。必ず「甘いものも」との注文が入る。
以前来た際にたーちゃんのレモネードも気に入っていたことから、親父さんはレモンを使ったサンドイッチも作れないものかと考えた。そして完成したのがレモンカードのサンドイッチである。
また、たーちゃんのレモネードが早くもヒットする兆しが見えたことで、それに付ける用のおやつや持ち帰り用のおやつも考案しているようだ。
「ああ、これが『美味いやつ』か。あいつ、親父さんにもどんどん遠慮がなくなってくんだよな……」
「親父さんも楽しそうだからいいんじゃないかな」
「そうそう、とってもなかよし」
ため息を吐くドラン。だが悪い話ではない。なにせ親父さんにレモンカードの作り方を教えてくれたのは他でもないドラゴンさんなのだ。
レモネードの試飲をしてもらっていた際、食べ物トークに花が咲いていたらしい。
最近の親父さんはドラゴンさんに教えてもらった料理を次々に試作している。レモネードが完成した今は、こちらの試食をしてもらうために龍舎に通っている。
たーちゃんと一緒に次は何持って行こうかと話す親父さんの表情はキラキラとしていて、お友達に会いに行っているかのよう。
女将さんとジゼルは密かに『レモネードの集い』と呼んでいる。メンバーは親父さんとたーちゃんとドラゴンさん。たまにボスが混ざる。たーちゃんはサンドイッチさんも仲間に入れたいようだ。みんなで集まる姿を想像するとほのぼのする。
「巣材集めの時によさそうなもの見つけたら親父さん用に持ち帰らないとなぁ」
ドランはポリポリと頬を掻きながら呟いた。ジゼルも今度市場に行った際には、たーちゃんが『レモネードの集い』に持っていく物を何か見繕うことにしよう。
「ジゼルたーちゃんドラン、オーレルさん達来たよ〜」
「はーい、今行きます!」
オーレルが到着したのは、おやつを食べ終わってから少し経ってのことだった。なんでも乗せてもらう予定の飛鳥族が少し遅れていたらしい。
途中、事故などがなくてよかった。
ホッと胸を撫で下ろし、客間に向かう。
「お久しぶりです、オーレルさん」
「ご無沙汰しております」
「いらっしゃあい」
数ヶ月ぶりのオーレルは以前よりも元気そうだ。心なしか出会った頃よりも背筋がピンと伸びており、若く見える。皺も薄くなっているのではないか。
ギルドマスターを辞めた後は娘さん家族と共に暮らし、近くの温泉で湯治をすると聞いていた。温泉との相性が抜群だったのか。それとも緑が多い土地がよかったのか。どちらにせよ、ジゼルとしては嬉しいものだ。握手する手には自然と力が入る。
「久しぶりだな、ジゼル、ドラン。そしてたーちゃん、初めまして。会えて嬉しいよ。それでこっちが私の自慢の孫達だ」
オーレルが少し身体をずらすと、そこにはジゼルよりもいくつか若い男性と、小さな男の子が立っていた。以前、オーレルに子供達の写真を見せてもらったことがあるのだが、二人とも三番目のお子さんにそっくりだ。
五人の子供のうち、錬金術師になった娘を特に溺愛していた彼のことだ。彼女によく似た孫達が可愛くて仕方ないのだろう。
「オーレルの孫のフェリックスです。こっちは弟のビビアン。今日はじいちゃんがよく話してくれた錬金術師に会えてとても嬉しい」
「え、そうなんですか?」
握手を求められ、目をパチクリとさせるジゼル。だが兄に続くビビアンの発言の方がもっと衝撃的だった。
「ジゼル、僕を弟子にして!」




