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31 清く正しい関係の定義

窓が小さいからか、背の高い戸棚に囲まれているからか、それとも昼なのに室内が少し薄暗いからか、ロザリナ様に質問されるたびに圧迫感を覚える。


「リヴィアをどう思っているか、ですか。」


「ええ。」


妹に嫉妬しちゃった感じだろうか。


「そうですね、可愛い元気な子だと思います。とても素直ないい子ですね。」


とりあえず褒めておくべきだと思う。どれも事実だし、仮にもロザリナ様の妹だ。


「パウロ様はその、リヴィアをそういう対象として見られておりますか。」


やはりか、という質問がきた。


「いいえ、俺は一人っ子なので、あんな妹がいたらいいなとは思いますが、そういう対象として見たことはありません。」


ちょうどよくぼかした質問だったので、ぼかして返す。


「そうですか。」


ロザリナ様は嬉しがる様子もなく、淡白な感じの反応を見せた。表情を読むのは難しいが、これは誓いの一件を持ち出すチャンスかもしれない。


「それに関して、あの誓いについてなのですが、」


「はい。」


「なんと言葉にしていいか迷うのですが。あの誓いについて、ですね、」


なんと言葉にしていいか本当に迷う。なぜなら言うことなんてないから。


「どう言えばいいのか、ううむ。」


悩んでいる感じを出してみる。さあ、「察して」くれロザリナ様。


「何かお悩みでもあるのですか。」


極めて一般的な返答が返ってきてしまった。困る。


「ロザリナ様には私が何に悩んでいるように見えますか。」


「言葉を選ぶのに苦悩していらっしゃいます。」


そうじゃない、そうじゃないんだロザリナ様。


「どうお伝えしていいやら、なかなか最善の答えが見つからないのです。」


このセリフは別れを切り出しそうな雰囲気が出すぎているかな。でもいつかは別れるのだから、泣き出したら頑張って修道院行きを止めると言う戦略でいくべきだろうか。


「誓いの話題でしたら、ジュスティーナ も同席させましょう。ジュスティーナ 、こちらへ。」


ご友人だと言うジュスティーナ が入ってきた。パウロよりも黒い髪をゆるく結っていて、目は赤茶色。若干狐みたいな印象を与えるが整った顔立ちをしていて、背は女性にしては中くらいだろうか。茶色のドレスに黒のエプロンみたいなものを着ている。


「パリス伯爵、お久しぶりです。」


「ジュスティーナ様、お久しぶりです、お元気そうで何よりです。」


冷たい声をしている人だ。鈴みたいに高い音だけど、無機質な響きがする。


「早速ですが、私が証人を務めた誓いについて、どうも不穏な会話がありましたね。」


やっぱり不穏なのに気づいていたのか。ジュスティーナ 様は聞き耳を立てていたようだ。不安だったロザリナ様にそう頼まれたのかもしれないけど。


「不穏なんてとんでもない。ただ、少し困ったことがあったので。」


「困ったこととはなんですか。私にできることならなんでもいたします。パウロ様の力になれるのならば。」


ロザリナ様がいつになく自信に満ちた言い方をした。健気ないい人なんだけどね。


「それが、こればかりは。」


やっぱり言うべきだろう、ロザリナ様をお嫁にはもらえないと。これを延ばせば延ばすほど彼女に残酷な気がしてきた。


「さてはパウロ様、女に恋をしましたね。」


流石に察したのだろう。ジュスティーナ様は、そのセリフとはかけ離れた冷たい声で言い放った。


逃げられない。


俺はゆっくり、しっかり、頷いた。


「パウロ様・・・」


さっきまで凛とした姿勢で立っていたロザリナ様が、どこかが折れたように泣き崩れた。





狭い部屋をロザリナ様の泣き声が支配していた。どう慰めたらいいのかわからないが。


「ごめん、本当にごめん。」


「約束していただいたのに。神に誓っていただいたのに。」


ロザリナ様が泣きじゃくっている。とてもか弱そうで、思わず抱きとめてあげたくなる。でもそれも残酷かもしれない。


かすれてきた声で、彼女は続けた。




「私と、修道院に入っていただけると。」


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