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27 敵の味方を敵にしないのは難しい

さっとお湯を被って汗を流したあと、過ごしやすそうな麻のシャツに着替えた。夕食の前にマリーノ、フォスカリ、ストルネロ夫人とピエトロを招集する。アンドレアは領地に出向いていて不在だった。


「集まってもらったのは、以前も話題になったロザリナ様との誓いの一件です。残念だけど、今日リヴィア様に内容をたずねる計画は成功しなかった。」


「やろうとしなかったのだから成功するはずがないでしょう。」


ピエトロが早速茶々を入れる。話の腰を折るのはやめてほしい。


「ちなみに今晩ピエトロに発言権はない。」


「じゃあなんで呼んだんですか。」


「人数分のホットミルクを用意してくれ。」


とりあえず面倒な一人を追い払うと、真面目で人生経験豊富そうな3人が揃った。


「考えてみたんだけど、ロザリナ様に記憶喪失の件を教えてあげてもいいと思うんだ。」


ロザリナ様は秘密を守ってくれそうだし、噂話を吹聴するタイプでもない。


「おやめになるべきです。」


マリーノが断定口調で答える。


「パウロ様は大公殿下の一族で唯一教皇派と交流を持っていらっしゃいました。現にアンセルメ伯爵の舞踏会に招待されたのは、スカラ家ではパウロ様だけです。その一人が記憶を失ったとなれば、教皇派は大公家とのパイプを失います。」


そういえば、あの場では知り合い少なかったんだよね。家格の問題だと思っていたけど。


「アルベルト様はともかく、バルトロメオ様は割と教皇派に寛容だって聞いたけど。」


「バルトロメオ様の奥方、コンスタンツァ 様は皇帝陛下の親類です。教皇派から見れば油断のならない相手になります。」


金髪の鮮やかなコンスタンツァ 様を思い出す。政略結婚ってこう見ると味方も作れば敵も作るんだな。


「またアルボイーノ 様は現在皇帝の軍団に参陣しておられますし、マーキューシオ様とヴァレンティノ様は皇帝派の中でも過激なモンテッキ家と非常に親しくしています。」


マリーノはスカラ一族を詳細に把握しているようだった。アルボイーノ なんて親族がいたとは知らなかったけど。


「自転車を献上したカングランデ 様は。」


「まだ10歳でいらっしゃいます。またアルベルト様が可愛がっておいでですので、おそらくは皇帝派として育たれるのではないかと。」


こう見ると、一族で皇帝派とあんまり縁がないのはパウロだけらしい。もっとも、みんな皇帝派と親しくしているってだけで、反教皇派とは限らない気もするけど、詳しくないのでなんともいえない。


「でも、俺がパーティーに出たところで、教皇派に便宜を図っている訳ではないし、あまり関係ないんじゃない。」


教皇派の人が何かを頼んできたこともないし、頼まれたところでパウロ様に何かの権限があるとは思えない。


マリーノが口を開きかけたとき、突然ドアが開いた。ピエトロがミルクを持ってきたのだと思ったが、そこに立っていたのは懐かしい黒服の老人だった。


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