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25 酒が水よりも安全だった時代

ジュ・ド・ポームは楽しかった、でも1時間もすると流石に疲れてきた。やっぱりボールが弾まないので、リヴィアに比べてパウロはかなり腰を落としていないといけないし、ボールが落ちた近くに駆け寄るのも大変。有酸素運動としてはすごくいいんだろうけど。


あと、バドミントンやテニスと違って左にきたボールを左手で返すのはコントロールが結構難しい。右手の甲で打っても時々あさっての方向に飛んで行ってしまうし、奥が深いというか不便というか。


「休憩にしようか、リヴィア。」


「リヴィアはまだできるわ。」


ダンスをねだっただけあって、リヴィアは運動には自信があったみたいだ。


「ほら、水分を補給しないと。」


運動をしたあと水だけを飲むとダメだと聞いたけど、ポカリスエットなんてないだろうし、とりあえず喉が渇いた。


「使用人が冷やしたワインを用意していますわ。」


リヴィアが手を叩くと、花壇に隠れるようにして見ていた使用人が、レモンと冷やしたワインを差し出してきた。やっぱりワインか。


「今日は久しぶりに運動したからお酒が回ってしまいそうなんだ。せっかくだからレモンと水だけもらえるかな。」


「わかりました。井戸はここから少しあるから、パオロ様も一緒に歩きましょう、ね!リッツォ、私にはワインを頂戴。」


15歳くらいだろうに、レモン入りワインをガブガブ飲むリヴィアはたくましい。


リヴィアの家の使用人がコートやワインを片付ける中、屋敷方面へと二人で歩く。正確には使用人が後についてくるから、ギャラリーを引き連れたゴルファーみたいな感じだ。久しぶりに運動したし、夏にしてはそこまで暑くない日だったので、庭園を散歩するのもなかなか気持ちがいい。


「パウロ様、初めてのジュ・ド・ポーム、楽しんでいただけたかしら。」


リヴィアがこちらを覗いてくる。並木の木漏れ日に照らされて、ちょうど修学旅行中に見た印象派の絵のような、柔らかい雰囲気の少女だ。


「うん、楽しかった。この夏で一番楽しかったよ。」


嘘ではない。ただテニスみたいなスポーツをして庭園を歩いているだけだけど、牧歌的な感じがして幸せな気分になっている。なんなら21世紀に遠藤や伊東たちと行ったライブフェスや夏祭りを合わせても、かなり上位にくる。


「嬉しいわ。そうだ、まだ完成していないのですけれど、フランス風の室内コートを作らせたんです。水を飲んだ後に少し試してみましょう、ね!」


「いいね。楽しみだよ。」


リヴィアとはいいジュ・ド・ポーム仲間になれそうだ。

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