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21 握手は本来帯刀しているときの挨拶

「このティボルトを軽く見るな。」


「この」ティボルトはそう言い捨てるとベルトに手をかけた。よく見るとすごい重厚なベルトをしている。ベルトホルダーみたいなやつには何が入ってるんだろう。この時代のズボンはポケットがないこともあるし、財布でも入れているのかな。


きゃあ、という何人かの女性の悲鳴が聞こえてきた。なんだ、まさかティボルトはズボンを脱ぐ気なのか。


「ティボルト、いい加減になさい。」


セシリア様の声が響いて、一瞬場面が止まったような気がした。静かになった空間に、カツカツと彼女がティボルトに近づく足音だけが鳴り響いている。


そのまま平手打ちをするかと思った。それくらいの迫力で、ティボルトに至近距離に近づくとセシリア様は言い放った。


「カプレーティの名に泥を塗るつもりですか。」


声が低いわけでもないし、表情は仮面で見えない。それでも怒りは伝わってくる。セシリア様が場を支配している気がした。


「叔母さま、、、」


ティボルトも気圧されたか絶句しているようだ。


そこでドアがバアンと音を立てて開かれ、さっきのメタボ気味の男性が入ってきた。


「パリス伯爵、アンセルメ伯爵、私の未熟な甥が迷惑をかけた。本当にすまない。ティボルト、お前は今日限りで勘当だ。ヴェローナから出て行け。」


低いバリトンのような、よく通る声だ。さっきと違って威厳がある。どうやら思ったより偉い人だったみたいだ。相変わらず顔はわからないけどどんな人なのか。


いや、確かにパーティーで怒るのはどうかと思うけど、俺が叔母さんを口説いていたのは事実だし、どう見ても勘当・追放はかわいそうだ。


「失礼ですが、勘当は行き過ぎでは。」


恐る恐る意見してみる。また「はっ」と息を飲む声が聞こえた。手袋のときと一緒だ。また間違えたのかな。


「いえ、ティボルト君が叔母さまを守ろうとしたのは当然のことだと思うんです。」


何から守っていたかって、口説いていたと自白するのは気がひけるので、勘違いということにしよう。


「こちらも、勘違いを招いてしまった責任がありますから。」


追放されるのがパウロじゃなくてよかったくらいだ。パウロへの対応が甘いのはやっぱり大公の権威があるんだろうか。


「ティボルトを許すというのですか。あなたを亡き者にしようとしたのに。」


メタボおじさんが低い声でゆっくり聞いてくる。


「許してほしいのは俺の方です。こんな騒動になってしまって。ティボルト君は悪くありません。」


叔母さんを浮気者から守ったつもりが、みんなの前で叱責された上で勘当って、ちょっと踏んだり蹴ったりだよね。1301年の理不尽のスタンダードを俺は知らないけど。あと、亡き者ってどういうことなのかわからない。


周りを見回すと皆黙っている。仮面で表情がわからないのは難しい。とりあえず巻き込まれてしまった人にはお詫びをしないと。


「セシリア様、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございました。アンセルメ伯爵、お騒がせしました。素敵なパーティーでした。」


では、お暇させていただきます、と言おうとしていると、どこからか拍手が湧き上がった。みんな仮面を取ってこちらを見ている。ティボルトが勘当にならずに済んだのが嬉しいのか、皆お祝いのムードだ。


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