━━━第七章・白き三ツ鱗と黒き震皇━━━ 4
近くに現れたと思ったらすぐさま消えて、次は──遠くに現れては消える。何も知らなければ、目の錯覚だと疑ってしまう。
「足の裏が地面にさえ付いていれば、地続きならどこへだって、瞬時に行けるのさァ」
「じゃあなんで、メザシを取りに行くのに一分もかかったんだよ?」
双七は、反射的に素朴な疑問を口にした。瞬間移動が本当ならば、鎌槍を取りに行った最初の縮地が一分も掛かっているのは、どう考えてもおかしい。
「あァ……、簡単な事だよォ。これは屋敷の床に転がっていたからねェ」
要するに──土と裸足が直接触れ合うのが、縮地の条件らしい。目的の鎌槍は建物の中にあった為、わざわざ徒歩で取りに行った。そこで時間のロスが生じたという。
「そうかよ……、くそっ」
格が違い過ぎた。自由に瞬間移動できる敵に攻撃をヒットさせるなど、到底不可能に思える。それだけでも勝てる気がしないのに、まだほんの一部しか能力を見せていないのだ。今さながらに、伝説の<もののふ>と云われた震皇の強さに絶望する。
「おやおや、どうしたのかなァ?」
「くっ……、なんでもねぇってんだよ!」
心中を悟られまいと、双七はやぶれかぶれに師匠の大太刀を振るう。焦りの為か、いつもより大振りになる太刀筋。もちろん、手応えは全然感じられない。無駄に土埃を立てているだけ。
「くっひゃひゃひゃあ、無駄無駄無駄ァ!」
もはや、勝ち目は無いのだろうか。このままヤラれるのを待つばかりなのか。




