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『反逆の咎人(とがびと)勇者 〜仲間に裏切られ追放された俺は、邪神の力を喰らって真の救世主(魔王)となる〜』  作者: 白狸
第1部 王国崩壊編 第1章【偽聖討伐編】〜神を騙る狂信者たちを、漆黒の魔王が蹂躙する〜
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【狂気の王国】光を狂信した者たちの末路

魔王アレンによって、王都の地下にあった『魔力炉』が完全に破壊されてから数日。


王国は、かつてないほどのパニックに陥っていた。


「ど、どうなっている! なぜ結界が消えた! 大地から作物が枯れていくぞ!」


「魔王だ! あの悪魔が、我々の世界を終わらせようとしているんだ!」


魔力炉という「命の搾取システム」を失ったことで、王都の偽りの繁栄は音を立てて崩れ去った。暴動が起き、人々は恐怖に逃げ惑う。


そんな大混乱の王都から、一部の特権階級――王族と、彼らに付き従う『偽りの勇者』レオンを乗せた馬車だけが、真っ先に逃げ出していた。


逃げ込んだ先は、王国と太いパイプを持つ国教『聖教団』の総本山。


雪のように白い大理石で造られた、巨大で美しい白亜の大聖堂である。


「クソッ……! アレンの野郎、調子に乗りやがって! 俺は真の勇者だぞ、あんな化け物に負けるはずがないんだ!」


大聖堂の豪華な特別室。


レオンは高級なワイングラスを壁に叩きつけ、血走った目で爪を噛んでいた。


かつての親友を裏切り、彼を奈落へ突き落とした時に得た絶頂感は、今や見る影もない。


あるのは「いつ自分が殺されるか」という底知れぬ恐怖と、築き上げた名声が崩れていくことへの焦燥感だけだった。


「――おや、勇者レオン殿。随分と取り乱しておられますな」


静かに扉が開き、一人の老人が入ってきた。


金糸の刺繍が施された純白の法衣を纏う、聖教団のトップ――教皇ザカリアだ。


温和そうに見えるシワだらけの顔の奥には、ドロドロとした権力欲と狂信の光が宿っている。


アレンを陥れる計画に加担した、黒幕の一人である。


「教皇! あの悪魔をどうにかしろ! お前たちの教団には、隠し持っている兵器や魔法があるだろう!?」


「落ち着きなさい、勇者殿。確かに、あの忌まわしき魔王アレンの力は我々の想像を超えていました。既存の魔法大砲程度では傷一つつけられないでしょう」


ザカリアはそう言いながら、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。


「しかし、ご安心を。我が教団に伝わる『究極の奇跡』を起こす時が来たようです。……**『神の使い(天使)』**を、この地に降臨させるのです」


「天使、だと!?」


レオンの顔に希望の色が浮かぶ。


神の使いならば、あの規格外の魔王に対抗できるかもしれない。


「す、素晴らしい! すぐに召喚しろ! その天使でアレンを八つ裂きにしてやる!」


「ええ、もちろん。ですが、天使の降臨には莫大な神聖力と……**『清らかなる代償』**が必要となります」


「代償? 金なら王族がいくらでも出すぞ」


「金などという下世話なものではありませんよ」


ザカリアはレオンの耳元に顔を近づけ、毒蛇のように囁いた。


「必要なのは、**数万人の『命と魂』**です。教団領の端にあるスラム街……あの薄汚い貧民たちを集め、神への生贄とするのです」


「なっ……!?」


レオンは息を呑んだ。


いくら彼が腐っていても、一応は「人間を守る勇者」という建前がある。


自国民を数万人規模で生贄にするなど、正気の沙汰ではない。


「ば、馬鹿な! そんなことが公になれば、俺の勇者としての名声が……!」


「公になどしませんよ。『教団が安全なシェルターに保護する』とでも言って集め、儀式の部屋に閉じ込めればいいだけのこと。それに……」


ザカリアは、レオンの弱点を突くように言葉を続ける。


「このままでは、アレンがここまで攻めてきて、貴方様は無惨に殺されるでしょう。あの魔王は、貴方様を生かしておくはずがありません。


……数万のゴミくずのような命で、貴方様という『真の勇者』の命と、人類の未来が守られるのです。これこそが**『大義』**ではありませんか?」


大義。人類の未来。


その言葉が、レオンの心の中にあったわずかな躊躇を完全に吹き飛ばした。


(そうだ……俺は真の勇者だ。世界を救うために選ばれた特別な存在なんだ。底辺のゴミ共が俺のために犠牲になるのは、当然の権利じゃないか……!)


恐怖と保身から生まれた狂気が、レオンの瞳を濁らせていく。


彼は歪んだ笑みを浮かべ、ザカリアに向かって力強く頷いた。


「……やれ、教皇。そのスラムの連中を全員かき集めろ。人類の平和のために、その命を使わせてやろうじゃないか」


「御意のままに、勇者殿。神の光で、あの憎き魔王を浄化してご覧に入れましょう」


かくして、「光」と「正義」を名乗る者たちによって、自国民の命を食い物にする最悪の儀式が開始された。


彼らは気づいていない。


自分たちが魔王アレンを「悪魔」と罵りながら、自分たち自身が人間として最も醜い『本物の悪魔』に成り下がっていることに。


そして、その身勝手な狂気が、さらなる圧倒的な絶望(アレン)を引き寄せることを。

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