【究極魔王形態】終焉の支配者(オーバー・ロード)
星の深淵の最奥。
そこは時間も空間も意味を持たない、どこまでも続く真っ白な幾何学空間だった。
その中央に座すのは、星の意志そのものである原初神アルファ。
顔も感情も持たない、数十メートルに及ぶ無機質な光の巨人が、侵入者であるアレンを正確に捕捉した。
『――致命的エラーを検知。対象コード【魔王アレン】。当システム領域への侵入は不可能。論理矛盾の肥大化を確認』
アルファの全身から、星を丸ごと一つ創り出せるほどの圧倒的なエネルギーが収束していく。
『これより、対象を宇宙の塵ごと完全消去する。――消え去れ、バグ』
放たれたのは、ビッグバンにも匹敵する超圧縮エネルギーの奔流。
天界の神将ミカエルが放った光など、児戯に等しい。
触れれば魂の概念すら残さず「無」に還される、星の創造主による絶対的な一撃だった。
極大の光の海が、アレンの小さな体を完全に飲み込む。
――しかし。
「五月蝿いな。誰に向かって指図してるんだ」
――ズバァァァァァァァンッ!!!!
次の瞬間、迫り来るビッグバンの光の海が、まるでモーゼの海割りのように「真っ二つ」に引き裂かれた。
『……!? システム・エラー。対象の消去に失敗。未知のエネルギーを検知』
光の波を裂いて現れたアレンの姿に、感情を持たないはずの原初神アルファの動きがピタリと止まった。
アレンの背中に展開された六枚の『邪神の翼』は、漆黒から宇宙の深淵そのもの――星々の瞬きを宿した果てしない暗黒空間へと変貌している。
そして何より異質なのは、彼が右手に纏っていた炎だった。
すべてを喰らい尽くす『黒炎』すらも超越した力。
それは、色を持たず、光も闇も熱すらも一切発しない**『無色透明な虚無の炎』**。
邪神ノアと完全に魂を同調させたアレンは、世界の創造・破壊の概念すらも超越した究極の魔王――**『終焉の支配者』**へと至ったのだ。
『対象のデータ解析……不能。存在確率……計算不能。あり得ない。バグがシステムを上回ることは――』
「エラーだの初期化だの、ブツブツとうるさい機械だな」
アレンは虚空を蹴り、光の巨人アルファの真正面へと悠然と歩みを進める。
アルファは無機質な焦りを見せるように、幾何学的な光のレーザーや、空間そのものを削り取る概念攻撃を雨あられとアレンへ放った。
しかし。
――パァンッ! ガキンッ!
アレンはそれら全能の攻撃を、右の素手で次々と「平手打ち」して叩き落としていく。
彼が纏う『虚無の炎』に触れた瞬間、あらゆる法則やエネルギーは「最初から存在しなかったこと」にされてしまう。
どんな絶対的な攻撃も、アレンの前ではただの無害なそよ風と同じだった。
「お前らが世界を創った偉いシステムだってのは分かったよ。だがな……」
アレンは光の雨の中を無傷のまま突き進み、巨大なアルファの眼前にまで迫った。
その赤い瞳には、世界の創造主に対する敬意など微塵もない。
あるのは、己の邪魔をするものすべてを壊すという、絶対的なエゴと暴君の輝きだけだった。
「俺のオモチャ(世界)を、勝手にリセットしてんじゃねえよ。ポンコツ機械」
アレンが右の拳に『虚無の炎』を極限まで圧縮して引き絞る。
世界で最も理不尽な「バグ」が、星のシステムそのものを完全に粉砕するため、その絶対的な牙を突き立てようとしていた。




