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『反逆の咎人(とがびと)勇者 〜仲間に裏切られ追放された俺は、邪神の力を喰らって真の救世主(魔王)となる〜』  作者: 白狸
第3部【世界法則(フォーマット)崩壊編】〜星を喰らう原初神と、すべてを終わらせる究極の魔王〜
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【世界の初期化】白き絶望の裁定者

天界が崩壊し、傲慢な神々の支配から世界が解放されてから数ヶ月。


地上の人々は、運命という縛りから解き放たれ、種族の壁を越えて真の自由を謳歌していた。


魔王軍の拠点である漆黒の魔王城の周辺でさえ、かつての争いが嘘だったかのように静かで穏やかな時間が流れていた。


だが、その平穏は「音もなく」終わりを告げた。


「……アレン様。空の様子が、少しおかしいですわ」


魔王城のバルコニーで、アレンに赤ワインを注いでいたイリスが、ふと怪訝な顔で天を仰いだ。


青く澄んでいたはずの空が、まるで一枚の巨大な絵画から絵の具が剥がれ落ちるように、端の方から徐々に**「真っ白」**に染まり始めていたのだ。


雲が白いのではない。空という空間そのものが、色と概念を失ったかのような、不気味で無機質な『白』。


風が止み、鳥のさえずりが消え、世界から一切の「音」が奪い去られた。


「……チッ。今度は何だ」


アレンが不快げに眉をひそめたその時、真っ白に染まった上空の空間が幾何学的な形に割れ、一つの『影』が音もなく降臨した。


それは、神でも悪魔でもない異質な存在だった。


純白の法衣を纏った人型のシルエットの背後には、無数の「幾何学的な光の輪」が精密な歯車のように回転している。


顔に該当する部分には目も鼻も口もなく、ただ冷たい光の十字が刻まれているだけだった。


『――警告。世界管理システム・運命の天球儀の完全停止を確認』


その存在から発せられた声には、怒りも、悲しみも、傲慢さすらもなかった。


ただ淡々と事実を述べるだけの、完全な機械音声(システム・ボイス)。


『本世界は回復不能なエラー領域に達したと判定。原初神アルファの意志に基づき、これより裁定者エノクが、汚染された世界の**初期化(フォーマット)**を実行する』


「初期化……だと?」


『肯定。すべてのバグを消去(デリート)し、世界をゼロから再構築する』


裁定者エノクと名乗った存在が、ゆっくりと顔を東の方角――かつてアレンが滅ぼした王国が存在していた広大な大陸へと向けた。


『まずは、対象エリアA。概念消去を実行』


エノクが光の十字の顔を向けた、ただそれだけだった。


魔力が高まる気配も、呪文の詠唱も、魔法陣の展開も一切ない。


だが次の瞬間、アレンとイリスの目の前で、信じられない光景が繰り広げられた。


――スッ……。


何の音も、光も、爆発もなかった。


ただ、地平線の彼方に広がっていたはずの広大な大陸の半分が、海も、山も、残っていた都市の跡形もすべて含めて、『はじめからそこには何も存在していなかったかのように』、ただの真っ白な虚無へと変貌したのだ。


「な……っ!?」


イリスが持っていたワインボトルを取り落とし、ガシャンと甲高い音を立てて砕け散った。


「大陸が……半分、消えた……? 魔法の破壊ではありません。ただの一瞥で、世界の空間そのものが、無かったことに……!」


「……なるほど。魔法や物理法則の枠外、『世界そのもののルール』を書き換える力ってわけか」


アレンは目を細め、静かに立ち上がった。


破壊を伴う魔法であれば、アレンの黒炎で喰らい尽くすことができる。


しかし、エノクが行ったのは「攻撃」ではなく、システムによる「存在の取り消し」だ。


これまでの常識が一切通じない、本当の意味での規格外の化け物。


『対象エリアAの消去完了。続いて、本世界における最大のバグ……エラーコード【魔王アレン】の消去プロセスへ移行』


エノクの無機質な十字の顔が、魔王城のバルコニーに立つアレンを真っ直ぐに捉えた。


同時に、アレンの足元からバルコニーの石造りの床が、音もなく真っ白な虚無へと変わり、パラパラと崩れ落ち始める。


「アレン様! 危険です、私の障壁で――きゃあっ!?」


イリスがアレンを守ろうと血魔術の結界を展開しようとしたが、魔法が発動するより早く、彼女の展開した魔力そのものが「無効なプログラム」として空間からデリートされてしまう。


どれほど強大な魔力を持っていようが、それを振るうための「世界の法則」そのものを否定されてしまえば、手も足も出ない。


絶対的な、白き絶望。


しかし。自身の足場が虚無に侵食されていく中でも、アレンの表情には微塵の焦りも恐怖もなかった。


「……おい」


アレンは、虚空から自分を見下ろすエノクを、氷のように冷たい赤い瞳で睨み上げた。


「さっきから聞いていれば、エラーだのバグだの、人の存在を勝手に不具合扱いしてんじゃねえよ」


アレンの右手から、ドス黒い**『漆黒の炎』**が猛烈な勢いで吹き上がる。


『無意味な抵抗です。対象の有する魔力・熱量はすべてシステムによって――』


「俺を誰だと思ってる?」


アレンは、自身の黒炎がデリートされそうになる空間の圧力に対し、不敵で凶悪な笑みを浮かべて言い放った。


「俺は、お前らのシステムを根本からぶっ壊すために存在している『魔王』だ。――俺のオモチャ(世界)を、勝手にリセットしてんじゃねえよ、ポンコツ機械」


神の支配という檻を壊した先に現れた、世界を管理する原初のシステム。


概念すらも消去する絶対無敵の裁定者を前に、誰にも支配されない究極の魔王の、存在すべてを懸けた最後の反逆劇が幕を開けた。

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