【機神融合】化け物に堕ちた偽勇者
――ドゴォォォォォォンッ!!!
王城の最奥、『玉座の間』を閉ざしていた数十センチの厚みを持つ重厚な扉が、まるで爆弾でも直撃したかのように粉々に吹き飛んだ。
もうもうと立ち込める粉塵を切り裂き、漆黒の外套を揺らしながら、アレンが静かに足を踏み入れる。
「ひぃぃぃっ!?」
玉座にふんぞり返っていた国王アルベルトは、無傷のアレンの姿を見た瞬間、腰を抜かして玉座の陰へと無様に這いずり込んだ。
「バ、バカな! 我が国が誇る最強の近衛騎士団が、なぜ……ッ!」
「あんなブリキのオモチャの集まりで、俺の足止めができるとでも思ったか?」
アレンは服の裾を軽く払い、氷のように冷たく、見下すような視線をアルベルトへと向けた。
「さあ、お前の番だ。下民の命をすすって空に逃げた気分の感想を、その舌を引き抜く前に聞かせてみろ」
「ヒッ……! く、来るなァッ! そうだ、私にはまだこの城の『最終兵器』がある! やれ! あの悪魔を塵ひとつ残さず消し飛ばせ!!」
アルベルトが恐怖で顔を引きつらせながら、手元の装置を乱暴に叩き込む。
直後、玉座の間の床の中央が真っ二つに開き、重低音の駆動音と共に、地下から巨大な「何か」がせり上がってきた。
それは、厚い鋼鉄の装甲と無数の魔法砲管で構成された、城の天井に届くほど巨大な機械の塊だった。
しかし、その機体の中心に埋め込まれていたものを見て、アレンはピクリと眉を動かした。
コアの内部には、無数の極太ケーブルに手足や胴体を貫かれ、顔の半分を無機質な機械パーツに侵食された男――レオンの半身が、グチャグチャに融合していたのだ。
『ア……アレンンンッ……!』
機械のパーツが埋め込まれた喉から、ギリギリと不快な機械音声が響く。
「……レオンか。随分と趣味の悪い姿になったな」
『オレガ……! オレコソガ、セカイヲスクウ、シンノ、ユウシャダァァッ!!』
もはやそこに、かつての狡猾な親友の自我はなかった。
あるのはアレンへの異常な憎悪と、「自分が勇者である」という狂った妄想だけ。
王に利用され、生命力を吸い上げられるだけのただの『生体バッテリー』へと成り下がった、この世で最も醜悪な化け物だった。
「やれぇっ! お前の全力で、あのゴミを焼き払え!!」
王の命令が下ると同時に、機神レオンの全身に備わった砲管が一斉に光を放つ。
そして、胸部に位置する極大の主砲から、浮遊城そのものを半壊させるほどの超絶的な魔力ビームが放たれた。
――ズババババババァァァァァッ!!!
玉座の間の壁も、豪華な柱も、一切合切を光の奔流が消し飛ばしながらアレンへと迫る。
直撃すれば、山を丸ごと一つ蒸発させるほどの致死の閃光。
しかし。アレンは避ける素振りすら見せなかった。
「……目障りな光だ」
アレンは深いため息をつくと、ひどく退屈そうに、右手だけをスッと前に突き出した。
――ゴウッ!!
アレンの右手から噴き出した**『漆黒の炎』が巨大な壁となり、機神レオンの極大ビームを正面からガッチリと受け止める。
いや、防いでいるのではない。
邪神の黒炎はまるで巨大な顎のように、迫り来る光の奔流をバリバリと音を立てて「喰らい尽くして」**いたのだ。
「な……!? バ、馬鹿なァァッ! 機神の最大出力だぞ! なぜ防げるッ!?」
アルベルトが玉座の陰から目を剥いて絶叫する。
『ギ、ギギィィッ……!? ナ、ゼダ……ナゼ、オレハ、ユウシャ……ナノニ……ッ!』
機神レオンが狂ったように出力を上げるが、光はただ黒炎に飲み込まれ、アレンの足元を一歩たりとも退かせることはできない。
燃え盛る黒炎の向こう側。
無傷のまま立つアレンは、憐れみすら混じった、絶対的な見下しの目をレオンへと向けた。
「お前が執着した『勇者』の成れの果てが、誰かに操られるだけの醜い生体部品か」
アレンが右手をギリッと握り込むと、ビームを喰らって膨張した黒炎が、逆に機神レオンの方へと向かって猛烈な勢いで逆流を始めた。
「姿だけでなく、魂まで化け物に堕ちたな。……お前はもう、ただの鉄クズだ。俺の敵ですらない」
圧倒的な力の差。
そして、冷酷で決定的な存在の否定。
かつて親友を陥れ、高笑いしていた偽りの勇者は、最も惨めで無力な「ただの機械の部品」として、魔王の漆黒の炎に完全に飲み込まれていくのであった。




