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『反逆の咎人(とがびと)勇者 〜仲間に裏切られ追放された俺は、邪神の力を喰らって真の救世主(魔王)となる〜』  作者: 白狸
第1部 王国崩壊編 第2章【偽聖女と腐敗の霊樹編】〜慈愛を騙る裏切り者たちを、絶望の底へ叩き落とす〜
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【剛力粉砕】戦士ガレスの絶望

赤黒く脈打つ巨大な霊樹へと続く、枯れ果てた森の獣道。


アレンとイリスがその歩みを進めていると、突如として前方の空間が大きく歪み、強烈な殺気と共に一人の巨漢が立ち塞がった。


「待ちやがれ、アレン!! てめえのくだらねえお散歩はここまでだ!」


大地を揺らすような怒声。


そこに立っていたのは、身の丈2メートルを優に超える筋肉の塊――かつてアレンを見下し、追放を最も喜んでいた元パーティーメンバーの戦士ガレスだった。


ガレスの全身は、聖女エレイナがかけた何重もの強力な強化魔法(バフ)によって、神々しい光のオーラに包まれている。


彼の両手には、竜の鱗すら両断するという大剣が握られていた。


「ガレスか。……相変わらず、脳みそまで筋肉でできているような暑苦しいツラだな」


アレンは足を止め、ひどく退屈そうに目を細めた。


「ほざけ! 王都のシステムを壊して魔王を名乗ってるらしいが、俺の目は誤魔化せねえぞ! てめえのその貧弱な体は、昔から俺の足元にも及ばなかっただろうが!」


ガレスは首の骨をボキボキと鳴らしながら、凶悪な笑みを浮かべた。


「今の俺は、エレイナの究極の強化魔法で『魔王軍の幹部』すら凌駕する力を手に入れている! てめえが得意な魔法を使う前に、この剛腕で一瞬にして肉塊に変えてやるよ!」


「なるほど。魔法を使わせなければ勝てる、という単純な計算か」


「その通りだ! 死ねェッ、ゴミクズがァッ!!」


大地を深くえぐりながら、ガレスが弾丸のような速度でアレンへと飛びかかった。


エレイナの魔法で極限まで強化されたその一撃は、まさに災害級。


巨大な大剣が、空気を切り裂く轟音と共にアレンの脳天へと振り下ろされる。


イリスが「アレン様!」と声を上げかけた、その瞬間。


――ガキィィィィンッ!!!


森中に響き渡ったのは、肉が潰れる音ではなく、硬い金属同士が激突したような甲高い音だった。


「……は?」


ガレスは、目の前の光景を理解できず、間抜けな声を漏らした。


自身が全身全霊で振り下ろした、絶対に回避不可能なはずの必殺の一撃。


それが……アレンの**『素手の左手』**によって、刃の腹をあっさりと受け止められていたのだ。


「な、なんだと……!? 魔法の障壁じゃねえ、素手で……俺の剣を止めた、だと!?」


「これが自慢の怪力か? ……欠伸(あくび)が出るな」


アレンの体からは、得意の『黒炎』も、魔力すらも一切放出されていなかった。


彼は純粋な、ただの**『物理的な握力』**だけで、強化されたガレスの全力の一撃を受け止めていたのだ。


邪神と融合したアレンの肉体は、もはや魔法を使わずとも、人間の限界を遥かに超えた神の領域に達している。


「ば、馬鹿な! ふざけるな、離せッ!!」


「魔法がなければ無力だとでも思ったか? お前のちっぽけなプライドごと、へし折ってやる」


アレンが、左手の指先にスッと力を込める。


――メキッ……パァァァンッ!!


「なっ!?」


ガレスの自慢の大剣が、まるで薄いガラス細工のように、アレンの握力だけで粉々に砕け散った。


武器を失い、完全に無防備になったガレスの太い右腕を、アレンは残った右手でガシッと掴み上げる。


「ヒッ……!?」


「痛いのは嫌いだったよな、ガレス」


氷のように冷たい宣告と共に。


アレンはガレスの太い右腕を、雑巾でも絞るかのように、無造作に捻り上げた。


――ボキボキボキィィッ!! グチャァッ!!


「ギャ、ア、アアアアアアアアアアアアアアッ!?」


森中に、男の鼓膜を破るような絶叫がこだました。


骨が皮膚を突き破り、無惨な方向にへし折れた右腕。


ガレスは白目を剥き、あまりの激痛と恐怖に鼻水と涎を垂らしながら地面に崩れ落ちた。


「あ、あああ……! お、俺の腕が……俺の最強の腕がぁぁぁっ!」


「最強? 魔王軍の幹部を凌駕する? 笑わせるな」


地面を転げ回って泣き喚くかつての仲間に、アレンは容赦のない一瞥をくれた。


そして、その顔面に向かって、無慈悲な蹴りを全力で叩き込んだ。


――ドゴォッ!!


「ゴブッ!?」


ガレスの巨体がボールのように宙を舞い、十メートル以上先の枯れ木に激突してようやく止まった。


彼は数回痙攣したあと、完全に意識を失い、ピクリとも動かなくなった。


「魔法も使わず、ただの力比べで負ける気分はどうだ。……そのまま泥をすすって生きていろ」


かつてアレンの力不足を嘲笑い、自らの剛腕を誇っていた戦士のプライドは、自身が最も得意とする「物理的な力」によって、完膚なきまでに粉砕されたのだった。


「素晴らしいです、アレン様……! あの忌々しい筋肉だるまを、あのような暴力で蹂躙なさるなんて……!」


頬を紅潮させたイリスが、うっとりとした表情でアレンの背中を見つめる。


「時間の無駄だったな。行くぞ、イリス」


アレンは、ゴミクズのように転がるガレスに二度と目を向けることなく、諸悪の根源である聖女が待つ、霊樹の最深部へと再び歩みを進めた。

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