↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『反逆の咎人(とがびと)勇者 〜仲間に裏切られ追放された俺は、邪神の力を喰らって真の救世主(魔王)となる〜』  作者: 白狸
第1部 王国崩壊編 第1章【偽聖討伐編】〜神を騙る狂信者たちを、漆黒の魔王が蹂躙する〜
10/30

【神殺しの黒炎】偽聖討伐

『――不浄ナル悪魔ヨ。神ノ御前ニテ、消滅セヨ』


空に浮かぶ異形の「天使」が、無数の目玉をギョロリとアレンに向けた。


直後、大気を震わせながら、天使の体から太陽そのもののような極大の光のエネルギーが圧縮されていく。


それは、山を丸ごと吹き飛ばすほどの威力を秘めた、最上位の神聖魔法だった。


「ひぃぃっ! や、やめろ! ここには俺もいるんだぞ!」


レオンが泣き叫ぶが、天使に止まる気配はない。


『天の裁き(ヘブンズ・ジャッジメント)』


天使の無数の目玉から、圧倒的な光の奔流が一直線にアレンへと放たれた。


だが、アレンは逃げも隠れもしない。


ただ片手を無造作に前に突き出しただけだ。


「……神の裁き、だと? 随分と安っぽい光だな」


アレンの右手から噴き出した**『漆黒の炎』**が、分厚い壁となって展開される。


ズガガガガガァッ!! という轟音と共に、極大の神聖魔法が黒炎と激突する。


光が闇を浄化するかと思われたが――現実は逆だった。


「な、ば、馬鹿な……! 天使様の魔法が、通じない……!?」


教皇ザカリアが絶望の声を上げる。


アレンの放つ邪神の黒炎は、天使の光を弾くのではなく、まるで餌を喰らう獣のように「光そのものを飲み込み、燃やし尽くしていた」のだ。


「そんな歪んだ魔力の塊で、俺の闇を照らせると思ったか。――本物の絶望を教えてやる」


アレンが右手を強く握り込むと、天使の周囲の空間そのものが真っ黒な炎に包囲された。


「消えろ、偽物」


「――『神殺しの黒炎』」


『ギギ、ギィィィィィィィィィッ!?』


絶対的な防御力を誇るはずの天使の光の障壁が、黒炎に触れた瞬間にガラスのように砕け散る。


機械的な無機物であったはずの異形の天使が、初めて「恐怖」と「苦痛」に満ちた断末魔の叫びを上げた。


漆黒の炎は天使の肉塊を喰らい、目玉を焼き潰し、そして魂すらも逃さず完全に灰へと変えていく。


数秒後。空に浮かんでいた絶対的な脅威は、文字通り「チリ一つ残さず」消滅した。


「あ、ああ……神が……神の使いが、殺された……」


ザカリアは両膝から崩れ落ち、白目を剥いてブツブツと譫言(うわごと)を唱え始めた。


自分の信じていた最強の切り札が、いともたやすく赤子の手をひねるように粉砕されたのだ。


その精神はすでに完全に崩壊していた。


一方、天使が消滅したことで、広場に展開されていた生贄の魔法陣もパリンと音を立てて砕け散った。


死を覚悟していたスラム街の貧民たちは、自分たちが助かったことに気づき、呆然と周囲を見回した。


彼らを救ったのは、光の神でも、王国の勇者でもない。


皮肉にも、人類の敵として忌み嫌われている「魔王」だったのだ。


「あ、ああ……魔王様……! ありがとうございます、ありがとうございます……ッ!」


「我々を、あの化け物から救ってくださって……!」


生き残った数万の貧民たちは、一斉にアレンに向かって平伏し、涙を流して祈りを捧げ始めた。


その光景を見たレオンは、激しい屈辱と混乱に顔を歪めた。


(な、なんでだ……! なんで魔王のアレンが、人間たちから感謝されてるんだ! 勇者は、救世主は俺のはずだろうが!!)


しかし、当のアレンは、感謝の言葉を向ける貧民たちを一瞥し、底冷えするような冷酷な声で言い放った。


「勘違いするな。俺はゴミ掃除をしただけだ」


「え……?」


「俺はお前たちを救ったわけじゃない。


俺の視界でデカい顔をしていた目障りな虫を、叩き潰しただけだ。


……俺は魔王だ。命が惜しければ、せいぜい俺に怯えて生きろ」


その氷のような冷たさに、貧民たちは息を呑んで震え上がった。


しかし、彼らの心の中に残ったのは「恐怖」だけではなかった。


冷酷な言葉を放ちながらも、結果的に自分たちを地獄から救い出してくれたその漆黒の背中から、彼らは目を離すことができなかった。


アレンは貧民たちから視線を外し、今度は地面に這いつくばってガタガタと震えるレオンを見下ろした。


「ヒッ……! く、来るな……! 殺さないでくれぇっ……!」


股間を濡らし、無様に命乞いをするかつての親友。


だが、アレンはレオンに黒炎を向けることすらなく、ただひどく退屈そうにため息をついた。


「殺す? 誰がお前のような、自分の手も汚せない無能を殺すと言った?」


「え……?」


「お前が頼りにしていた権威も、すがりついた神も、全て俺がぶっ壊した。……お前にはもう何もない。その惨めな姿のまま、せいぜい地獄のような現実を這いつくばって生きろ」


アレンはそれだけ言い捨てると、もはやレオンに一片の興味も失ったかのように背を向けた。


最大の屈辱だった。殺されるよりも酷い、「お前はもう俺の敵ですらない」という完全な無視。


レオンのちっぽけなプライドは、ここに完全に粉砕されたのだった。


「帰るぞ、お前ら」


アレンが声をかけると、背後に控えていたイリスたち魔王軍が一斉に歓喜の咆哮を上げた。


『オオオオォォォォッ!! 我らが魔王様に、絶対の勝利を!!』


世界を滅ぼす「悪(魔王)」でありながら、結果的に狂った神から人々を救ってしまった「救世主」。


その果てしなく矛盾した存在は、世界に新たな畏怖と混沌の伝説を刻み込みながら、荒野の彼方へと去っていくのであった。


【第1章:偽聖討伐編・完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。