↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
51/80

第51話 戦女神の超法規的措置と、凸凹トリオ

海賊同盟の本拠地を文字通り何もない綺麗な更地へとリフォームしてから、数日後のこと。

私はパシフィカ王国の港町にある、海軍の臨時指揮所のオフィスへと足を運んでいた。


「失礼するよぉ」


私がガチャリとドアを開けると、そこには案の定、先月昇格したばかりのエイン中尉と、三階級降格を喰らって同じ『中尉(タメ)』になった元上司、ベンダー中尉の凸凹コンビが、何やら気まずそうに書類仕事を進めている真っ最中だった。


「お、リザ大公……! リモートワーク中のはずでは、一体どうされたのですか?」


エイン中尉が弾かれたように立ち上がり、深い敬礼を捧げてくる。ベンダー中尉も慌てて居住まいを正した。


「いやね、ちょっと頼み事があってさ。――おーい、入っておいで」


私が後ろを振り返って手招きすると、部屋のドアから、全身の汚れを綺麗に洗い流し、端正な顔立ちを露わにした一人の男が静かに入ってきた。

『不殺のルキノ』こと、ルキノ・ニアトパックである。その背後には、彼が命懸けで救い出した元クルー(家族)たちの姿もあった。


ルキノの姿を捉えた瞬間、凸凹中尉コンビの顔色がカッと変わった。


「き、貴様は不殺のルキノ……! なぜリザ大公と一緒にいる!」


ベンダー中尉が鋭い声を上げるが、私はその前に一歩踏み出し、ポンと自分の胸を張った。


「落ち着きな、若造。今日からこのルキノくんと彼のクルーたちは、パシフィカ王国海軍の『新規採用枠』として、あんたたちの部隊で預かってもらうことにしたからねぇ」


「「……は、はいぃぃぃぃ!?!?!?」」


エインとベンダーの声が、本日一番の綺麗さでハモった。


「り、リザ大公、それはいくら何でも無理があります! 彼は元海賊の船長ですよ!? いくら国を救う手助けをしてくれたとはいえ、そんな超法規的措置が許されるはずが――」


「許されるんだよ。私がパシフィカ王国の『最高名誉大公』だからねぇ」


私が懐から、キャプティ王女から無理やり押し付けられた王室最高顧問の特権紋章(金の鎖つき)をジャラジャラと見せつけると、二人の凸凹中尉はぐうの音も出なくなって冷や汗を流した。そうさ、国を二つ更地にした戦女神の権限(ゴリ押し)を舐めるんじゃないよ。


「ルキノくんは『不殺』が主義なんだろ? 無駄な殺生を嫌う人間なんて、これからのパシフィカ海軍の立て直しにはうってつけのクリーンな人材じゃないかい。ルキノくんを『海軍中尉』、彼のクルーたちはそのまま彼の部下として一括採用さね!」


「ち、中尉……!? 我々と、同じ階級ですか……っ!?」


エイン中尉が頭を抱えた。


そう、これによって、この港町を守るパシフィカ海軍の小隊に、恐るべき『全員中尉の凸凹トリオ』が爆誕したのである。


ベンダー中尉:元海軍中佐(裏切りから三階級降格)

エイン中尉:元海軍少尉(功績により一階級昇格)

ルキノ中尉:元海賊船長(戦女神のコネで特別中尉採用)


プライドの高い元中佐、生真面目な若き魔法剣士、地獄から生還した元海賊の船長。全員が同じ「中尉(タメ)」として、これから同じオフィスで顔を突き合わせて書類仕事をしなければならないのだ。今後の職場環境の気まずさは、控えめに言っても地獄の極みである。


「ル、ルキノ中尉……。今日から、よろしく頼む……」


ベンダー中佐……じゃなくてベンダー中尉が顔を真っ赤にしながら、引きつった笑みで右手を差し出す。


「ああ、よろしくな、ベンダー中尉。……ところで、俺は元海賊だから書類仕事の『規律(ルール)』ってやつがよく分からなくてね。今度じっくり、エイン中尉と一緒に教えてくれないか?」


ルキノがフッと不敵な笑みを浮かべ、彼らの差し出した手を握り返した。


「「うっ……」」


エインとベンダーが気まずそうに視線を交わし合う。その様子を横で見届けた私は、心の中で大喜びでサイリウムをブンブンと振り回していた。


(あぁ、素晴らしい! 元上司と部下、そして元海賊の三人が、同階級の同僚としてギクシャクしながら一緒に国を立て直していくバディ(トリオ)展開! ラノベの後日譚のコメディシーンとして、一〇〇点満点の完璧なオチじゃないかい!)


「よし、人事異動(おもてなし)はこれでおしまい! 私は今日こそ、誰も邪魔の入らない完璧なバカンスの続き(三度目の正直)をしてくるからねぇ! あんたたち、しっかり残業(お仕事)に励むんだよ!」


「「「は、ははっ……!」」」


三人の凸凹中尉トリオの気まずい敬礼に見送られながら、私はフリフリの水着の裾を翻し、ウキウキとした足取りで今度こそ静まり返ったビーチへ、美味しいいちごかき氷を食べに駆け出していくのだった。




(第五章 完)

これにて第五章完結です!

明日からは第六章が始まります!

「第五章も面白かった」「第六章も楽しみ」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!

よろしくお願いいたします!

(次回更新:明日19時40分!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。