第5話 聖騎士の正義と、テンプレ全開の光の大剣
傭兵登録を済ませた私は、さっそく「ルナリア王国防衛戦」の任務に身を投じていた。
侵略を仕掛けてくるヴァルハイト帝国の軍勢を迎え撃つべく、やってきたのは国境沿いに広がる遮るもののない大平原。
地平線を埋め尽くすようにして進軍してくる敵の重装歩兵、風に翻る不気味な軍旗、そしてこちら側で固唾を呑んで武器を構える王国の傭兵たち。
「うわぁぁ……! 凄い、凄すぎる……!」
周りの傭兵たちが恐怖で歯をガタガタと鳴らす中、私――リザ・ウェカム(12歳・中身還暦)だけは、最前線でキラキラと目を輝かせていた。
(ラノベで1億回は見た大軍勢の激突イベントじゃん!! 何これ超リアル! 映画の特等席のスクリーンどころじゃない、完全にライブ映像だよ!!)
おにぎりでも広げてピクニックを始めそうな勢いでワクワクしていると、地を割るような地鳴りと共に、帝国軍の進軍がピタリと止まった。
その大軍勢の先頭に立っていたのは、一人の男。
血生臭い戦場には似合わない、純白の高貴な鎧を身にまとった目も眩むようなイケメンだった。彼はひどく悲しげな、憂いを帯びた瞳で王国の傭兵たちを見つめると、声を張り上げた。
「私はヴァルハイト帝国が誇る聖騎士、ジウス・アナイナード! 私はこれ以上、無駄な血を流したくない! 頼む、ルナリアの戦士たちよ、武器を収めて降伏してくれ……!」
ジウスが腰の洗練された美しい片手剣を抜き放つ。
直後、彼の身体から溢れ出た膨大な魔力が刃を覆い尽くし、またたく間に数メートルもの巨大な「光の大剣」へと変貌を遂げた。平原全体が、肌を刺すような圧倒的な威圧感に包まれる。
「ひぃっ、あ、あんなバケモノに勝てるわけねぇ……!」
「終わりだ、おしまいだぁ……!」
王国の傭兵たちが一瞬で絶望に染まり、戦意を喪失していく。
しかし、その絶望のド真ん中で、私の目はキラーン☆と本日最高値の輝きを放っていた。
(うわぁぁぁぁぁ!!!!! 敵側に所属してるけど本当はめちゃくちゃ良い奴で、国のために仕方がなく戦ってて、後々主人公の仲間になるか闇堕ち一歩手前で散っていくタイプの悲劇のイケメン聖騎士の実物キターーーーッ!!! しかも片手剣を光の大剣化させるとか、ビジュアル100点満点中5000点じゃん!! 運営の推しキャラかよ!!)
心の中の限界オタクが盛大にスタンディングオベーションを捧げている。
大真面目に世界の終わりを覚悟している周囲の傭兵たちの前に、私はスタスタと軽い足取りで一歩踏み出した。
「おい、そこの白ずくめのお兄さん! いいねぇ、そのピカピカ光るデカい剣! ちょっと私と遊ぼうじゃないか!」
「……何?」
戦場に響き渡った場違いな幼い声に、聖騎士ジウスは驚愕して目を見開いた。
自分の前に立ちはだかる、小さな黒髪の少女。ジウスはギリ、と奥歯を噛み締め、さらに深い悲しみを瞳に宿して剣を構え直す。
「……子供まで戦場に駆り出すとは、ルナリアもそこまで落ちたか。下がれ、少女。私にこれ以上、罪のない君のような子供を斬らせるな……!」
どこまでも自分の正義と悲劇に酔いしれるイケメン。実に素晴らしい。ご飯が三杯はいける。
(よし。還暦のお祝い代わりに、その綺麗な顔をちょいと歪ませてやるとするかね!)
私は十二歳の小柄な身体で、空手の基本姿勢である『前屈立ち』をカチッと美しく構えた。そして、相手のイケメンに向けて不敵にウインクを飛ばす。
「減らず口は、私のこの拳を止めてから言いな!」
「――くっ、来るな!」
眩い光の大剣が、空を裂くほどの勢いで振り下ろされる。
それに対し、私は拳に最大火力の『黒属性魔力』を凝縮させ、一気に地面を蹴り上げた。
白と黒、二つの最強の力が、今ここに激突する――!
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