↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/80

第40話 焦土の魔導元帥と、新必殺技の「魔動脚」

「……よくもやってくれたな、パシフィカの家畜どもが……ッ!!」


立ち込める黒煙を吹き飛ばし、姿を現したガレリア海洋帝国最強の魔導士――エストゥス・グラドミル魔導元帥の叫びは、まさに地獄の底から響く呪詛のようだった。


彼の周囲で燃え盛る莫大な魔力の炎は、周囲の空間すら陽炎のように歪ませている。完璧だったはずの本拠地、無敵を誇る艦隊をすべてフリフリ水着の十二歳児(私)に更地にされたのだ。そのプライドはズタズタに引き裂かれ、もはや髪を逆立ててブチ切れモードに突入していた。


「このままで済むと思うなよ、パシフィカの家畜どもが! 貴様らをここで肉片に変えた後、私自らが乗り込んでパシフィカを焦土に変えてくれるわ! 貴様らのせいで、パシフィカは滅びるのだ!!」


エストゥス元帥が両手を天へと掲げると、軍港の空全体が不気味な赤黒い光に染まり始めた。

雲が渦を巻き、そこから街を丸ごと一つ消し飛ばせそうなほどの、超巨大な魔力の質量兵器が形成されていく。


「な、何だあの魔法は……。魔力が高すぎて、息が……」


エイン少尉が魔法剣を構えたまま、その圧倒的なプレッシャーに顔を蒼白にして膝をガタガタと震わせている。キャプティ王女も、恐怖のあまりエインの背中にしがみついて涙目を浮かべていた。


そんな中、エインの峰打ちを喰らって砂浜に倒れていたベンダー中佐が、かろうじて意識を取り戻し、空を見上げて絶望の声を絞り出した。


「だ、だから言ったのだ……。あの男がいる限り、ガレリアには勝てない……。終わった……パシフィカはもう終わりだ……! 私が、私が国を売ってでも民を救おうとしたのは、あの理不尽なまでの絶望(エストゥス)から目を背けなかったからだぞ……!!」


己の信じた冷酷な正義。その根拠であったエストゥスの絶対的な武力を前に、ベンダー中佐は完全に心を折られ、砂を握りしめて慟哭していた。


(あぁ、なるほどねぇ。頑固親父さんがそこまで絶望するのも分からなくはないよ)


私はフリフリの水着を潮風に揺らしながら、空を埋め尽くす超巨大な焦土魔法を据わった目で見上げた。


確かに、普通の人類じゃ逆立ちしたって勝てない、ラノベの章ボスにふさわしい大火力だ。もし私がここにいなかったら、エインくんも王女様も、パシフィカの国も、文字通り灰になって亡国ルート突入だっただろうねぇ。


(だけどさぁ、若造。あんたさっき『パシフィカを焦土にする』って言ったかい?)


私の口元に、冷徹で凶悪な笑みが浮かぶ。

右の拳、そして左の拳に、ありったけの闇魔力をミチミチと集束させていく。


(冗談じゃないよ。パシフィカにはね、美味しいリンゴをタダでくれた果物屋のおばちゃんがいるんだ。お気に入りのいちごかき氷を売ってくれる海の家もあるんだよ。あんたたちの身勝手な侵略のせいで、私のささやかで平和な余生(バカンス)をこれ以上汚させやしないよ……!)


「死ねぇ、パシフィカの有象無象どもがァァァッ!!


エストゥス元帥の咆哮と共に、空を覆う巨大な焦土の炎が、隕石のような速度で私たち目掛けて一斉に降り注いできた。


「危ないじゃないかい、この分からず屋がァ!!」


私は一歩前に踏み出すと、両の拳を交互に突き出した。


「くらえ! 魔動拳! 魔動拳! 魔動拳! 魔動拳連打ァァァァッ!!」


前世の格ゲーの超必殺技の如く、私は神速の正拳突きをマシンのように超高速で連打した。

私の拳から放たれた漆黒の魔力波動――『魔動拳』の弾丸が、空間を埋め尽くすように無数に撃ち出される。


ドゴォォォン! バゴォォォン! ズガァァァァァンッ!!!


空から降り注ぐエストゥス元帥の極大魔法と、私の『魔動拳』の連打が空中で衝突し、お互いを相殺しながら大爆発を起こしていく。夜空の花火なんてチャチに見えるほどの光と爆音の嵐。軍港を焦土にせんと降る炎の雨を、私はただのパンチの連打だけで、一発残らず空中で叩き落とし、完全に迎撃して見せた。


「ば、バカな……!? 私の、国をも滅ぼす禁忌魔法が……ただの拳の衝撃に相殺されているだと……!?」


エストゥス元帥の顔から、完全に余裕が消え失せた。目が点になり、顎が外れそうなほど口を開けて愕然としている。

後ろのベンダー中佐にいたっては、「な、何なのだあの子供は……。エストゥス元帥の魔法を、素手で……?」と、もう絶望を通り越して宇宙の真理でも見せられたかのように放心していた。


「ふぅ。パンチばっかりじゃ芸がないし、最後は華麗に新技といこうかねぇ!」


私は両足に思いきり闇魔力を込めた。

桟橋の床を粉砕するほどの勢いで、エストゥス元帥の頭上へと大ジャンプする。放物線の頂点で、私は空中で大きく身体をひねり、右の足にこれまでの『魔動拳』を遥かに凌駕する、高密度の闇魔力を極限まで収束させた。バチバチと、漆黒の稲妻のような魔力が私の右足を包み込む。


格闘技の極致たる、美しい回し蹴りのフォーム。

「拳が『魔動拳』なら、蹴りはこれさね! いきなッ――『魔動脚』!!!!」


空中で放たれた鋭い回し蹴り。

その私の足先から、物質化せんばかりに巨大化した、三日月型の超巨大な漆黒の魔力波動が撃ち出された。


ドッパァァァァァァァンッ!!!!


それは空気を、海を、空間そのものを一刀両断するような圧倒的な光の刃となって直進。エストゥス元帥が必死に展開した何重もの魔力障壁を、まるで薄い紙のようにパリンパリンと一瞬で消し飛ばし、彼の肉体へとクリーンヒットした。


「ごふぁっ!? が、ガレリアが、この私がァァァァァッ!?」


悲鳴と共に、ガレリア最強の魔導元帥は、私の『魔動脚』の波動に押し流されながら、遥か彼方の水平線の霧の向こうへと、綺麗な放物線を描いて弾け飛んでいった。キラーン、と星になるかのような見事なホームラン(キック)である。


後に残されたのは、文字通り塵一つ残らない、綺麗さっぱり平地(更地)にリフォームされたガレリア海洋帝国の軍港だけだった。


私はフワリと砂浜に着地し、パッパと水着の砂を払う。


「ふぅ。やっぱり夏は、思いっきり身体を動かすに限るねぇ。……って、あぁ! 結局、日焼け止め塗り直すの忘れて大暴れしちゃったじゃないかい! シミになったらどうしてくれるんだい、あの若造どもめ!」


自分の肌のシミを本気で心配して頭を抱える私。

そんな中、背後からは、命を救われたエイン少尉と王女殿下、そしてすべてを失って呆然とするベンダー中佐の、言葉にならない限界突破した驚愕の視線が、私へと突き刺さっていた。


元アラフィフ空手OL、中身還暦の十二歳児。彼女の気まぐれな防犯活動(バカンス)によって、世界最強の海洋帝国の一角が、今ここに完全消滅(更地化)したのであった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「ちょっと面白いかも」「続きが気になる」と思ってくださったら、画面下の【ブックマークに追加】や、【評価の☆☆☆☆☆(星)】をぽちっと押して応援していただけると、執筆の物凄い励みになります!

よろしくお願いいたします!

(次回更新:明日19時40分!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。