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第26話 国境の門番と、お預けを喰らった不発のざまぁ

トロシカ聖皇国の暗殺者だったサースの案内により、私たちはついに目的の国――『トロシカ聖皇国』の国境へと到着した。


目の前にそびえ立つのは、宗教国家にふさわしい白亜の美しい巨大な城壁。そして、物々しい雰囲気が漂う厳重な検問所だ。

厳つい全身鎧を身にまとった兵士たちが、入国者一人一人を鋭い目つきで厳しくチェックしている。その光景を目にした瞬間、私の内なるラノベオタク魂がバチバチと燃え上がった。


(キタキタキターーーー!! ラノベの定番、国境の横暴で厳つい門番イベント!! ここで黒髪(闇属性)の私が呼び止められて、理不尽に絡まれて、それを私が返り討ちのワンパンでボコボコにして周囲の旅人を唖然とさせる『ざまぁ』テンプレの展開だね!? よし、いつでもこい!)


「……リザ、何を企んでいるか知らないが、顔が引きつってるぞ。フードを深く被れよ」

私の妙にギラついたワクワク顔を察知したサースが、冷や汗を流しながら釘を刺してくるが、私の耳には届かない。


入国の列に並び、いよいよ私たちの番が回ってきた。

案の定、鋭い目つきをした大柄な門番が、私の前でピタッと動きを止めた。


「おい、そこの子供。フードを外せ」


(よし来たァァ!! ラノベで一万回は読んだやつ!! ここで私がフードをパッと外して、門番が『ヒィッ、忌むべき悪魔の闇属性のガキだと!?』って驚いて武器を抜くんだよね!!)


内心テンションMAXになった私は、サバサバとした動作でフードをパッと勢いよく外してみせた。

私の艶やかな黒髪が露わになる。


門番のおじさんは私の髪を見て一瞬目を見開いた。だが、次の瞬間――彼は驚くよりも先に、慌てて周囲をサッと見回すと、私のフードをバサッと両手で頭に被せ直してきたのだ。


門番は周囲に聞こえないよう声を潜め、真剣そのものの目で私を見つめた。


「……君、今この国は闇属性の子供にとって非常に危険なんだ。この先に入ってはいけない。もし中央の役人に見つかれば、どうなるか分からないんだよ。……いいから、今すぐ回れ右をして、自分の国へ帰りなさい」


「…………」


(――そっちのパターン!?!?)


絡まれるどころか、めちゃくちゃ私の身を心配して必死に守ろうとしてくれた。


(おじさんが良い人すぎて、私のざまぁ計画が完全に不発に終わっちゃったじゃないかい! なんて親切設計な国境だよ、少しはラノベの治安の悪さを見習いなさいよ!)


テンプレをお預けされたオタクとしてのガッカリ感をサバサバと押し殺しつつ、門番のおじさんの優しさに心の中で感謝する。

すかさず、サースが私の前に一歩出て、事情(身内が中にいるという適当な嘘)を話し、なんとか中に入れてもらうよう必死に交渉を始めた。


門番は困ったように大きいため息をつくと、現在の国の歪んだ状況をこっそりと耳打ちしてくれた。


「実はな、現教皇デクトルのやり方に、俺たち前教皇派の兵士や国民は誰も納得しちゃいないんだ。『闇属性の間引き』なんて胸糞悪い悪法、デクトルとその側近の狂信者たちが勝手に騒いでいるだけで、一般の人間は誰も支持しちゃいない。だからこそ、あの生臭教皇は今、裏で相当焦っているんだよ」


「焦っている……?」

サースが怪訝そうに聞き返す。門番はさらに声を潜めた。


「ああ、デクトルは近々、不満を募らせる前教皇派の国民を完全に黙らせるつもりだ。そのために、国中から聖女として崇められている『純粋な光属性のプリシラ様』を無理やり自分の妃に据えて、自分の独裁を正当化しようと企んでいる。その婚姻の儀式の準備が、今まさに大聖堂で着々と進められているらしいんだ」


門番は「どうしても行くというなら止めないが……くれぐれも目立つなよ」と言い残し、特別に私たちの入国スタンプをポンと押して通してくれた。本当に良いおじさんだ。あとでリンゴを一個あげたいレベルである。


検問所を通り抜け、人気のない通りに入ったところで、サースが悔しそうに拳を強く握りしめた。

「やっぱり、デクトルはまだ国を完全に掌握できていないんだ……。プリシラが無理やり妃にされる前に、絶対にあの教皇を止めないといけない……!」


「そうだねぇ」


私はフードの下で、パチパチ、パチパチと両手の拳を冷ややかに鳴らした。

見た目は十二歳の清楚な美少女。だが、私の中の「還暦超え(60歳)」のガチの怒りが、静かに、そして激しく燃え上がっていた。


(なるほどねぇ。国民の支持もまともにないくせにさぁ。自分のくだらない保身と権力のために、十四歳の、まだ中学生みたいな女の子を政治利用しようってわけかい。デクトル教皇……あんたのその汚い野心ごと、私の拳で綺麗さっぱり更地にしてやるからね)


子供を泣かせる大人には、容赦ない鉄拳制裁が必要だ。

私はサバサバとした歩調の中に、確かな殺気(黒属性魔力)を孕ませながら、トロシカ聖皇国の中央大聖堂に向けて突き進むのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:明日19時40分!)

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