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第24話 初荷のリンゴと、お盆を守る後ろ回し蹴り

あの大陸最大規模の盗賊団『終焉の凶刃』の首領ディザスを、慣性を乗せた三段加速からの『弾丸回し蹴り』で砦の壁ごとぶっ倒してから、早いもので一ヶ月の月日が流れた。


後から聞いた話によると、盗賊団の構成員たちはあの時点で、例の金髪大魔導士アリアちゃんの手によってすでに壊滅状態だったらしく、残党たちもほどなくして国の衛兵によって一網打尽に殲滅されたらしい。


おかげで街道の物流は完全に元通り。

街に並ぶ果物の価格もすっかり安定し、果物屋のおばちゃんも「本当に助かったよ」と毎日大喜びである。


というわけで。

今日も今日とて私――リザ・ウェカム(12歳・中身還暦)は、相変わらず平和すぎて退屈しきっていた。


「あー……。今日も、びっくりするほど穏やかだねぇ……」


バキバキに凝り固まった肩を回しながら町を散歩していると、いつものように威勢のいい声が飛んできた。


「おーい、リザちゃん! 今日も相変わらず可愛いねぇ! ほら、もぎたての美味いリンゴあげるからおいで!」

「お、おばちゃん! ありがとう、いただきまーす!」


私は大喜びで真っ赤なリンゴを受け取ると、その場でシャキッと小気味よい音を立てて丸齧りした。やっぱりこの瑞々しい甘酸っぱさが最高だ。


「ねぇおばちゃん、最近また何か、割のいい高時給バイトの広告とか入ってないかねぇ?」

私がリンゴをもぐもぐしながらサバサバと尋ねると、おばちゃんは「もー、リザちゃんは本当に働き者だねぇ。相変わらず物騒なことばっかり言ってるよ」と、苦笑いを浮かべて首を振った。平和が一番だよ、本当に。


そんな風にリンゴを齧っていると、ガラガラと大きな荷車を引いた見覚えのある赤髪の男が、こちらを見つけて嬉しそうに手を振ってきた。


「あ、リザさん!」

「お、ガルドくんじゃない。その大きな荷車はどうしたんだい?」


私が声をかけると、元・高性能カーナビのガルドは、見違えるほど爽やかで頼もしい笑顔を見せた。

「リザさんのおかげで『終焉の凶刃』がいなくなったので、物流が安全になったんです。だから俺、こうやって亡くなった親父の後を継いで、新しく行商の商売を始められるようになりました!」


「そりゃよかったね! 本当におめでとう!」

「ありがとうございます。……あ、リザさん、本当にリンゴがお好きなんですね。もしよかったらこれ、俺の行商人としての『初荷』なんです。全部受け取ってください!」


そう言って、ガルドは荷車から、獲れたてツヤツヤのリンゴがこれでもかと詰まった大きなカゴを丸ごと一つ、私にプレゼントしてくれた。


「ええ!? カゴごと丸々かい? いいのかい、ありがとねぇ! 商売頑張りなよ!」


私はホクホク顔で重量感のあるカゴを受け取ると、ガルドに手を振って別れた。カゴいっぱいの大好物を抱え、ウキウキと小躍りしそうな気分で帰り道をスタスタと歩く。


――その、私の後ろ姿を。

殺気を完全に消し去った、暗殺者とおぼしき謎の男が、ギラリと光る短剣を逆手に構えて音もなく忍び寄っていた。


男が私の背後にピタッと立ち、その凶刃を突き出そうとした、まさにその瞬間。

またしても、私の肉体が前世の修練によって無意識のうちに作動した――『オートカウンター』の防衛本能である。


(ハッ!? しまった、このまま動いたら大好きなリンゴが遠心力でバラバラにぶちまけちゃうじゃんか!!)


一瞬の判断。私はリンゴを一個たりとも無駄にしないよう、胸元に大きなカゴを両腕でガッチリとホールド。そのまま自身の身体をコマのように鋭く軸回転させ、カゴを死守しながら真後ろへ向かって強烈な『後ろ回し蹴り』を放った。


ドォォォォォォォン!!!


「ぶべふぁっ!?」


謎の暗殺者は、私の十二歳児(中身還暦)の理不尽な脚力を顎にモロに喰らい、綺麗な放物線を描きながら遥か彼方へと吹っ飛んでいった。そして白目を剥いたまま床にベチャッと叩きつけられ、一撃で完全沈黙した。


「おっとっと……。危ない危ない、大事な初荷のリンゴが地面に落ちて傷物になるところだったわ……。――って、ありゃ?」


私がサバサバとカゴの中身をチェックしたあと、ようやく吹っ飛んだ男の姿を見て、ポカンと口を開けた。


(しまった……!! ついにやっちゃったよ!!)


完全に殺気を隠されていたせいで、私は暗殺されかけたとはつゆ知らず、「後ろから急に驚かそうとしてきた一般人のお兄さんを、無意識のオートカウンターでシバき倒してしまった」と大勘違いしたのだ。


「お兄さん大丈夫!? ごめんね、後ろから急に気配が消えるから、体が勝手に作動しちゃったんだよ! 生きてる!?」


私は大慌てで駆け寄ると、大後悔の念に駆られながら、片手に大事なリンゴのカゴを抱え、もう片方の手で、白目を剥いて泡を吹いている謎の暗殺者を軽々と丸太のように脇に抱え込んだ。


「待ってなよ! 今すぐ街の治療院に連れてってあげるからねぇぇぇ!!」


清楚な黒髪美少女(12歳)が、男を脇に挟んだまま、地面を爆破するような凄まじいダッシュで治療院へと猛突進していくのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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よろしくお願いいたします!

(次回更新:明日19時40分!)

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