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第13話 最終兵器の自爆と、怒りの還暦上げ突き

有能なカーナビことジウスの完璧なルート案内に従い、私――リザ・ウェカム(12歳・中身還暦)は、ついに帝国の心臓部である帝都の目の前までたどり着いた。


しかし、そこに立ちはだかったのは、かつてない文字通りの『壁』だった。

渓谷の山林を埋め尽くすように展開しているのは、全高三メートルはあろうかという不気味な量産型ゴーレムの軍勢。そしてその中心には、山のように巨大な、禍々しい輝きを放つ帝国の最終防衛システム『超巨大魔導ゴーレム』が鎮座していた。


「リザ殿……! あれは帝国の国家予算を何年分も注ぎ込んで極秘裏に開発された、あらゆる魔法も物理攻撃も通用せぬと謳われる鉄壁のゴーレムです!」


横を歩くジウスが、手帳を握りしめながら大真面目に驚愕の声を上げる。


その超巨大ゴーレムの頭上から、血走った目をひんむいたマッドサイエンティスト、マディウス将軍が狂気の笑顔で私たちを見下ろしていた。


「フハハハハ! ジウス、そして黒髪の魔獣め! よくぞここまで来られたものだ! だが、我が帝国の誇る最高防衛システムの前で、跡形もなく塵に変わるがいいわ!」


マディウスのヒステリックな号令が響き渡ると同時に、量産型ゴーレムたちが地鳴りを立てて一斉に襲いかかってきた。


「それっ!」


私はサバサバと軽い声を上げながら、正面のゴーレムの胸部へ『前蹴り』を突き刺し、返す刀で隣の個体に『正拳突き』を叩き込む。

魔法も物理も効かないはずの国家予算の結晶たちは、私の黒属性チートの前ではただのブリキのおもちゃ同然だった。触れた先から一撃で木っ端微塵に粉砕され、ガラクタの山に変わっていく。


「くそっ! バケモノめ……! ならばこれならどうだ!」


焦ったマディウスがゴーレムの制御レバーを引く。

超巨大ゴーレムの胸部がカパッと開き、そこから目も眩むような超極太の『超火力魔導砲』が放たれた。空間が熱波で歪み、大地を消し飛ばすような光線が私に向かって一直線に迫る。


「おっと、あれはちょっと痛そうだねぇ!」


私はサバサバと首をすくめると、その場にどっしりと腰を落とし、両腕を顔の前で交差させる空手の防御技――『十字受け』をガチッと力強く構えた。


ドカァァァァァァァン!!!!!


凄まじい大爆発が巻き起こり、戦場全体が真っ黒な爆煙に包まれる。


「ハハハ、仕留めたぞ! ざまをみろ! ジウス、次は貴様の番だ!」

マディウスが勝利を確信して高笑いを上げる。

しかし。


「あちちちちっ! おい、服に火がつくじゃんか! 洗濯するお母さんの身にもなりなよ!」


黒煙の向こうから、何事もなかったかのように平然と歩きながら出てくる私の姿を見て、マディウスの笑い声がピタッと止まり、顔を完全にフリーズさせた。


私はスタスタと超巨大ゴーレムの足元まで歩み寄ると、そのビル並みに巨大な鉄の足に向かって、無造作に『正拳突き』をドンッ! と叩き込んだ。


バキィィィン! と衝撃が走り、あまりの質量差を無視した一撃に、超巨大ゴーレムは一瞬でバランスを崩して大転倒。頭上にいたマディウスは、悲鳴を上げながら地面の泥水へと派手に放り出された。


「今だ! やれ、やれェェェエエ!」

地面に這いつくばりながら、マディウスが狂った目で叫ぶ


その隙を突き、生き残っていた数十体の量産型ゴーレムたちが、私の背後から一斉に抱きついてきた。そして、全身の魔力結晶を自発的に暴発させる――究極の『自爆』が発動した。


ドガガガガシャーーーーン!!!


渓谷全体が激しく震えるほどの、特大の自爆爆発。激しい炎と衝撃波が、私の小さな身体を完全に包み込む。


「ハハハハ! 見たか! これには耐えられまい! 肉体ごと消し飛ぶがいい!」

マディウスが泥まみれになりながら再び狂喜の声を上げるが、その願いは一瞬で打ち砕かれた。


フゥ……と黒い煙が晴れていく。

そこには、煤でちょっとだけ顔を汚し、シクシクと目をうるうるさせて本気で怒っている私が立っていた。


「……私、前世でも今世でもさぁ、痛いのと熱いのは死ぬほど大嫌いだったんだよね。女の子のデリケートな肌を煤けさせてさぁ……これは、『ざまぁ』が必要だよね?」


「ざ、ざまぁって何だ!? ひぃっ……ま、まいった! 降参だ! 助けてくれ!」


怒りで黒い覇気をモクモクと立ち上らせる私の姿に、マディウスは本能的な恐怖を察知し、ガタガタと震えながら命乞いを始めた。


だが、キレた還暦超え(中身60歳)の手加減は、もうこれっぽっちも残っていない。


「『自業自得、ざまあみやがれ』の略だよ!身をもって勉強しな!」


私はスタスタとマディウスの元まで歩み寄ると、空手の基本技、下から顎を鋭く突き上げる『上げ突き(アッパー)』を、彼の顎のド真ん中へとドォォォン! と容赦なく叩き込んだ。


「ぎゃあああああああおん!?」


重力を完全に無視した凄まじい風圧と共に、マディウス将軍は悲鳴を上げながら雲の彼方まで綺麗な放物線を描き、キリキリマイの状態で文字通り星の彼方へと吹き飛んでいった。


「ふぅ……ちょっとスッキリしたね」


私がサバサバと服の煤を払っていると、後ろでジウスが涙目を浮かべ、大真面目な顔で手帳にガリガリとメモを書き込んでいた。


「国家予算をワンパンで粉砕する、終末の暗黒魔術【ザ・マー】……。やはりリザ殿は人知を超えたお方だ……!」


いや、ただの略語だから。あと、それ闇魔法じゃなくてただの空手のアッパーだから。そんな禍々しい中二病フォントで手帳にメモするのやめてもらえる?


こうして帝国の最終防衛システムは一瞬でジャンクパーツへと変わり、私たちの前には、ついに黒幕である大魔導士ドミナス卿の待つ『帝国の玉座』が姿を現すのだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

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