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[第四章:守護の剣。彼女の決意]その1

「…これは」

 付近で一番高いビルの上に立ったムーンセイバーは、驚きと共に言う。

「一体…どういうことです?」

 彼女は先ほどまで、祭り会場周辺を都市警察と共に警備していた。

 理由は勿論、[UCEE]を警戒してのものである。

 未だ目的が不明な彼らが何をしてくるかは予測できず、[不確定存在者]も多く参加する今回の祭りの会場を襲撃してくる可能性もある。

 そのために、彼女らと警察は事前に祭りの運営と話し合いを行い、配置や巡回ルートなどを練り、強固な警備体制を構築していた。

 そうして彼らがこれまで以上にあちこちに目を光らせていた中、つい数分前、巨大な破砕音と同じく巨大かつ異常な鳴き声が発生したのである。

ムーンセイバーはそれを受け、何が起こったのかを確かめるため、近くのビルの上に昇り、音の発生した方向を見ているのであった。

「兵器…いえ、怪物、でしょうか」

 ムーンセイバーは、バイザー越しに目を細める。

 その目に映るのは、旧開発区で動き始めようとしている、巨大な怪物だ。

 一応人型に見えるシルエットをしたそれは、歪極まりない四肢と頭のない胴体を捩り、その場で震えている。

([UCEE]の新兵器かなにか、でしょうか?…ですが、それにしては…)

 妙に歪なデザインだと、ムーンセイバーは思う。

 彼女の足元のビルをやや超すほどの巨躯を構成するパーツは、その全てにおいて非常に纏まりがなく、まるで廃材を乱雑に組み合わせたかのような見た目をしている。

 余計な突起も多く、その形状は兵器として洗練されているとはとても言えない。

(…形状に無駄が多すぎます。本当に、新兵器なの、でしょうか…)

 疑問に思い、ムーンセイバーは目を細める。

「…。ここからでは判断できませんね。あれが一体何なのか。最低限の情報は集めないと」

 言って、ムーンセイバーは床を蹴り、ビルの側面を落下。

 ある程度の高さまで下りたところで、壁に掴まったまま真下で待っていた警官に言う。

「私が様子を見に行ってきます。皆さんは今のまま、周囲の警戒を続けてください。あれは[UCEE]の陽動かもしれない、ので」

 気を付けて、という言葉と共に指示を了承した警官を尻目に、ムーンセイバーはビルの側面を蹴り、移動を開始する。

(あれに気を取られている間に襲撃する計画かもしれませんから、ね。とりあえずは私

一人が様子見に、です)

 警官たちの方には同じ[守護剣]のマジカルセイバーとチェインセイバーもいる。

 もしムーンセイバーの予想通りにあの怪物が陽動で、[UCEE]が襲撃をしてきても、彼女らがいればある程度は大丈夫だろう。

 同僚への信頼からそう判断していたムーンセイバーは、別のビルへと飛び移り、怪物の出現場所へと近づいていく。

 怪物の出現で不安げな表情を浮かべる市民を視界の端に収めながら、進む。

(しかし、あれは本当になんなのでしょう…)

 徐々に近づくことによって視界内で大きくなっていく怪物を見据え、ムーンセイバーは思う。

(まさか本当に、怪物とは思い難いですが…。それに…)

 ムーンセイバーは思い出す。

 先ほど初めて怪物が咆哮した時に聞こえてきた声、それに彼女は、妙な聞き覚えがあった。

(どういうことです…?あんな怪物と対面なんてしていないはずなのに…)

 そう思い、大きな展望台の壁面に飛び移ったときだ。



『ぃ—————————————————ぁぁぁぁぁぁ!』



 まだかなり離れた位置の怪物が、再度咆哮する。

 子どもの上げる金切声にも似た大音量が、都市に響き渡る。

「…ッ!これは、まさか…!」

 二度目、かつより近い場所で音を聞き、ムーンセイバーは何故怪物の声に聞き覚えがあるのかを悟る。

 同時、再三怪物が咆哮し、それも聞くことによってムーンセイバーは声の正体を、その主を完全に理解する。

(ミィちゃん。間違いない…あれはミィちゃんの声、です…!)

 普段聞かないような大音量で、多少甲高いが、その声質はここ二週間ほどの間で何度も家で聞いたものと同じだ。

 あの怪物からは、間違いなくミィの声が、それも泣き叫ぶような声が発せられているのである。

 おそらく、あの巨躯の中にミィはいる。

「…しかし、何故です?ミィちゃんは今頃、るいと一緒に祭りに出ているあたりのはず…。なんで会場から離れた旧開発区の端に…」

 しかも、あんな怪物より声が発せられているのもおかしい。

 明らかに、状況は普通ではなかった。

「…とにかく、ミィちゃんなら助けるかなにか、しないとです」

 どういう経緯でこのような状態になっているのかは不明だ。

だが、とりあえずはミィの身を確保し、安否を確かめようと思い、ムーンセイバーは壁面を蹴って跳躍。それまでよりは怪物に近い建物の上に着地する。

…そのときだ。

ムーンセイバーは眼下に広がる薄暗い路地に、ある者の姿を捉える。

(あれは…!)

 線形の四肢とバイザー型の頭部、そして履帯のついた足。

 それらの特徴を備えていてかつ、最近この都市に潜り込んだ相手のことを、ムーンセイバーは知っている。

 その名は。

(ブイラド…!)

 [UCEE]の代表的構成員であるブイラドが、他何人かの構成員を引き連れ、怪物のいる方向へと向かっている。

「これは、一体…」

 バイザーの奥で険しい表情をし、ムーンセイバーは呟く。

(彼らは何をしようとして…。状況がよくわかりませんね)

 ミィは何故か旧開発区の一角にいて廃材の怪物の中にいて、ブイラドが仲間を引き連れて怪物へ向かって動いている。

 何がどういうことなのかは、現状持っている情報だけでは、ムーンセイバーには判断しかねた。

「…ですが」

 ムーンセイバーは思う。

(危険な匂いがします…)

ブイラド達は明らかに、ミィちゃんであろうものへ向かって動いている。このまま放っておいてもロクなことになるとは、ムーンセイバーには思えなかった。

(ミィちゃんを危険に晒すことになるかもしれない。ならば…)

 ムーンセイバーは体を眼下のブイラド達の方へ向ける。

「とりあえず、あちらをすぐになんとかしましょう」

(何も起こらないうちに…!)

 言って、ムーンセイバーは腰の装甲裏より剣を抜き放ち、跳躍。

 周囲の建物の屋根伝いにブイラド達の背後へと接近する。

(仕留め、ます…!)

 ブイラド達が気づかないうちに一方的に制圧する。

 そう考えるムーンセイバーは目的の路地に隣接する屋根を蹴り、ブイラド達の背後から攻撃を見舞おうと、剣を振り上げて奇襲をかける…そのときである。

「邪魔させない。エクスロス」

「!」

 突如、別の聞き覚えのある声と共に、誰かが物陰から飛び上がり、ブイラド達とムーンセイバーの間に躍り出る。

 同時、その両手に握られた黒光りする刃が、ムーンセイバーが振り下ろそうとしていた剣とぶつかり合い、激しい音を立てる。

「くっ!」

「…なんだ?」

 後方での音にブイラドが足を止めて振り返る中、攻撃を弾かれたムーンセイバーは危なげなく、彼らから少し離れた位置に着地する。

 直後に立ち上がり、ほぼ同時に着地した邪魔者を見据える。

「一度警告はした。邪魔はさせないと」

「…」

 警戒感を露わにするムーンセイバーに言ったのは、ブイラド達を背に立ち上がる、貫頭衣の少女だ。

 両手に剣を握り、服の下に装甲を纏った彼女は、白いフードの下より、同じく白い髪と緑の右目と、赤く光る左目を覗かせる。

 そしてそれに、ムーンセイバーは見覚えがあった。

「一週間前のあのとき、襲い掛かってきた…」

「そう」

 答え、貫頭衣の少女は貫頭衣を破り捨てる。

 そうして身軽になった状態で、彼女は言う。

「久しぶり、[守護剣]」

「…そうですね、久しぶりです」

 言って、ムーンセイバーは続けて少女に問う。

「…それで、なんのつもりですか。彼らを庇うとは」

 ムーンセイバーは構成員に守られた状態のブイラドを見る。

 全身機械の体となった彼の顔からは、表情をうかがい知ることはできない。

 だが、彼の体からは軽い苛立ちのようなものが放たれていた。

([UCEE]の代表的構成であるブイラドへの攻撃を防ぎ、こうして今、私の前に立ちはだかる…)

 少女は両手に剣を握ったまま、ブイラド達を守るように立っている。

 そして、色違いの両目を細め、ムーンセイバーを見てきている。

 彼女は一体何なのか、何のつもりなのか。

 その問いに答えたのは、

「実に簡単なことだ」

「…」

 ブイラドであった。

 彼はバイザーの奥にある機械の目を光らせながら、ムーンセイバーに言う。

「こいつ…タイプスには役割がある。俺たちのやることを邪魔するものを排除するというな。そのためにこいつは生まれた」

 ブイラドの言葉に、タイプスは頷く。

 それを見て、ムーンセイバーは納得する。

(なるほど。やはり[UCEE]の仲間でしたか。…それに邪魔する者を排除する…)

 その言葉から、ムーンセイバーはタイプスがどういった存在か理解する。

「戦闘兵器、と言ったところでしょうか」

「そう。タイプスは本質的にはそう。最近はアレ探しとか違うことしていたけど。タイプスの本分は戦闘。そして…」

 タイプスは右手の剣をムーンセイバーに向ける。

「今、それを行う時が来た…」

「ああ、そうだ。こいつには役割を全うしてもらう。俺たちを邪魔するものを消してもらう」

 ブイラドの言葉に、ムーンセイバーは目を細める。

「邪魔、と。…あなたたち、何をしようとしているのですか。あの怪物のところへ向かって、何を…!」

 剣を握り直し、いつでもタイプスの攻撃に対応できるようにし、ムーンセイバーはブイラドに問う。

 確実に何かを考えている彼らの狙いを暴くために言葉を投げる。

 それに、ブイラドは鼻を鳴らして答える。

「ふん、決まっているだろう。殺すんだよ…」

 機械の腕が、怪物のいる方向に向けられる。

「[幻影魔女]、依留ミィをな!」

「!?」

 ムーンセイバーは驚きで目を見開く。

(ミィちゃんが[幻影魔女]…!?)

「…どういうことです」

「どうもこうもないだろう。奴は[幻影魔女]…物と同化し、好き勝手ができるクズだ。俺の体に同化して壊した他の奴と同じようにな!」

 ブイラドは怒りに震え、衝動的に一歩踏み出す。

「俺たちは奴を殺すためにここまで来た。そしてついに、見つけた…殺す機会を得た」

「…」

「奴は暴走状態だ。殺すのも手間がかかる…なのに貴様に邪魔なんぞさせてはたまらない」

 ブイラドが言うと同時、怪物の四度目の方向が響き渡り、少し離れたところにある廃ビルが砕け散る。

 ムーンセイバーの視界の端に映るそれを起こしたのは、ついに暴れ出した怪物だ。

 ミィの鳴き声と共にあるそれは、[幻影魔女]を殺せと叫ぶ、[UCEE]であろう者たちと戦いを開始する。

 その中でムーンセイバーは思う。

([幻影魔女]…それに暴走、ですか。なるほど、経緯は不明ですが、それならあんなものがでるのも説明はできます、ね…)

 鳴き声などから判断するに、何らかの理由で精神的に危うくなったミィが暴走、[幻影魔女]の力を持ってあの歪な怪物を構築したのだろうと、ムーンセイバーは考える。

「しかし、ミィちゃんを[幻影魔女]と呼び、殺そうなどとは…」

 確かに、彼女は能力上[幻影魔女]と同等なのかもしれない。

 だが、[幻影魔女]が[幻影魔女]とされるのは、持つ能力もあるが、何よりもその身勝手さや残虐性故である。

 そして、妹のるいの夢のために手伝いをしていたミィは、[幻影魔女]と呼ばれる[不確定存在者]達のような人格をしているわけでは、当然ない。

「…例え、同じ能力をもっていようと。彼女は[幻影魔女]と呼ばれる者たちとは違います。ただの優しい女の子、です。にもかかわらず殺そうなどとと」

 咎めるムーンセイバーであるが、それにブイラドは先ほどよりも露骨に鼻を鳴らす。

 直後、彼は感情を露わにして言う。

「馬鹿め。[幻影魔女]は[幻影魔女]だ。お前がどう思おうと奴らは所詮身勝手で迷惑な畜生だ。アレも、例外ではない…殺すべき、削除すべき、消去すべき害悪に過ぎない…!」

(…っ、彼は…)

 ムーンセイバーは感じ取る。

 [幻影魔女]によって家族と体を失ったと知られる彼は、憎しみに囚われている。

 それはもはや止めようがないほどに肥大化し、[幻影魔女]とは言い難いミィにまで手にかけるようとするほどに暴走している。

 もはや、言葉で留められるような状態ではない。 

(…話は、通じなさそうですね)

 思い、ムーンセイバーは体に力を籠める。

 それに反応したタイプスが構える中、ムーンセイバーはブイラドに言う。

「…あなた達はミィちゃんを殺すと言う。ですがそれを許すわけにはいかない」

「…邪魔をするか」

 ブイラドの言葉に、ムーンセイバーは頷く。

「ええ。[守護剣]として…あなたたちの好きには、させません!」

 瞬間、戦闘は開始される。

「…邪魔はさせない」

 タイプスが動く。

「前の小手調べで実力は分かっている。もはや勝てないと知るといい…!」

 タイプスが跳躍する。

 瞬間、彼女の背後にいた構成員たちが一斉に手に持った銃を乱射、ムーンセイバーを蜂の巣にしようとする。

「その程度で…!」

 ムーンセイバーは地を蹴り、上へ。

 同時、腰の装甲裏より別の剣を素早く取り出し、横向きに力強く投げる。

『な!?』

 素早い回避行動と反撃に構成員たちが驚いた直後、高速で横回転をする剣が弧状の軌道を描き、逃げる暇なく彼らの頭を次々と打ち、瞬く間に昏倒させる。

 虚空を撃った弾丸が、遠くで落ちる音がする。

「…やる!」

「!」

 ムーンセイバーが屋根に着地した直後、壁を蹴って跳躍したタイプスが両腕の剣を振り下ろしながら襲い掛かる。

 それに反応し、ムーンセイバーは剣を正面に構え、迎撃。

 剣の動きを上手く調節し、接触時にタイプスの得物を弾き飛ばす。

(武器を排除…!)

弾かれたことで一つ向こうの屋根に着地するタイプスを見ながらムーンセイバーは思う。

(他に武器は見えません。体勢も整えられていない。…今です…!)

 屋根を蹴り、ムーンセイバーはタイプスに向かって高速で接近する。

(ブイラドが逃げないうちにタイプスを排除、ブイラドも捕まえる!)

 そう思ってのムーンセイバーの攻めを見たタイプスは近くの花壇においてある植木鉢を掴み、素早く言った。

「エクスロス」

 (隙!)

 その瞬間、ムーンセイバーは光と共に姿を変え始めるタイプスの胴体めがけて、剣先を突き出す。

「はぁっ!」

「クロス…」

 高速の刺突が、植木鉢を右手に嵌めたタイプスを…、

「プランター」

 貫けなかった。

「なっ!」

 突如タイプスの胴体に出現した白い装甲。それがムーンセイバーの一撃をかろうじて、ではあるが食い止めたのだ。

 ついで来る顔面を狙って一撃を回避するため、ムーンセイバーは素早く剣を抜いて左方へ退避する。

「一体何が…」

 眉をひそめて呟くムーンセイバーに、片手に植木鉢を填め、体を白い装甲で覆ったタイプスは、言う。

「エクスロス。タイプスは、ありとあらゆるものを武器として扱うのに最適な形態をとることができる」

「…なんですか、その凄い力は」

「お父さん達が[通波]の技術を発展させた技術で、空間に働きかけて、任意の[有波]を発生、構造体をつくって装着しているだけ。そこまで凄いじゃない」

 そう言って、タイプスは自分を指さす。そういう機能があるんだと。

「…物体をつくりだす時点で、十分ですよ。何気に新発明、ですね」

(それを[不確定存在者]を…ミィちゃんを殺そうとする自分達を守るためではなく、別のことに使ってくれれば)

 ブイラドに対しそう思ったムーンセイバーは、すぐに意識を切り替える。

「それはそれとして。例えどれだけ凄くても、私は勝ちます」

「させない。邪魔者は、排除する」

 再び、二人がビル上でぶつかり合う。

 ムーンセイバーが剣を振るい、それをタイプスは最低限の動きで回避、一撃を見舞おうとする。

 だが、それをムーンセイバーは体を後ろに反らせて回避。次いでその勢いのままタイプスの胴体の装甲に蹴りを入れ、砕く。

 さらに植木鉢を、回した剣の先端で粉砕する。

「…やる!」

「なら、終わってください、です!」

「それは、無理。エクスロス」

 タイプスは植木鉢の破片の幾らかを掴んでエクスロス。砕けた装甲が別の装甲に上書きされ、着地直後の突進で勝負を決めようとしたムーンセイバーの一撃を防ぐ。

「…っ!」

「クロスフラグメント。…投擲の気分!」

「っう!」

 ムーンセイバーは身を捩って回避。だが、投擲された破片の一つがバイザーに当たり、少し罅が入る。

「く…」

 後ろに下がるムーンセイバー。逆に前に進むタイプス。

 二人は対照的に動く。

 さらに幾度かの攻防をするが、幾ら攻撃し、得物を失わせ、装甲を削っても再生し、カウンターを狙うタイプスに、ムーンセイバーは、若干押され気味になる。

「エクスロス」

 タイプスは屋上の配管をもぎ取り、それを鈍器として扱う、また別の形態になる。

「…タイプスにとって、武器は周りの物全て。鎧は無限につくれる。だから」

 そうではない[守護剣]に対し、タイプスは圧倒的に有利。

 その言葉を放つと同時、タイプスはムーンセイバーに接近。

「…はぁ!」

「ふん!」

 一撃ずつが交錯。

 ムーンセイバーの剣の一薙ぎがタイプスの装甲を割り砕き、いなかきの一撃がムーンセイバーの武器を弾く。

(くっ。まだです…!)

 三つ目の剣を素早く装甲裏から取り出し、ムーンセイバーは動く。

(相手には特殊な力がっても、技量に差はない。勝機はどこかにあるはず、です…!)

 そう思い、再び攻めようとした、そのときだ。

「…は!」

「なに…!?」

 突如、遠方より巨大な瓦礫がムーンセイバーとタイプスのところへと飛来してくる。

 ミィだ。

 別の[UCEE]の攻撃を受ける彼女は、近くの廃墟をもぎ取り、投げていた。

 その中、あらぬ方向へ飛んでしまった一つが、来る。

 二人は接近に気づき、屋上の床を蹴って回避はする。

 だが。

「…!」

 唐突に大質量を叩き尽きられた建物の側面は一瞬にしてひび割れ、崩れ始める。

「足が、つけない…!」

 つい数舜前まであった周辺の足場全てがなくなり、着地に失敗する。そのことにムーンセイバーが僅かながらも焦りを覚えた瞬間だ。

「タイプス、合体だ」

 いつの間にか別の建物屋根に上っていたブイラドが、タイプスにそう言う。

「分かった。エクスロス」

 タイプスはブライドの言葉に頷いて跳躍、同じく飛んだ彼と宙で一つになる。

「!?」

 ムーンセイバーは、タイプスがブイラドエクスロスするのを見ることになる。

 ついで、

「…クロスドライブ」

 横長に変形したブイラドを追加装備のように背中に接続し、その腕を自分の腕と重ね合わせ、加えてそれらの上に軽装甲を纏い、鋼鉄の翼を広げるタイプスが出現する。

「これで、終わり」

 言って、タイプスは両腕に合体した、ブイラドの腕がエクスロスによって少し形を変えた、三角型の装備を起動させる。

 同時、これまで装甲が構築された時と同じようにして、装置より発光する二つの実体剣が出現する。

「くっ…!」

 不味い予感がし、ムーンセイバーは瓦礫を蹴って無理やり距離を取る。

 しかし。

「終わりと言った」

「!」

 翼を得たタイプスは飛翔、無理な動作で無防備となったムーンセイバーの直上より、二つの剣を振り下ろす。

「ああ!」

 ついにムーンセイバーに攻撃が直撃する。

 纏った装甲が砕け、インナーが破け、部分的に実体化が不安定になり、剣は衝撃で手を離れる。

 そして、その身は地上に立つ廃ビルの一つに落ち、ムーンセイバーはひび割れた外壁に勢いよく叩きつけられた。

 直後、破壊音と共に、彼女が当たった箇所が崩落し、まもなくあたりに沈黙が訪れる。

 それを見て、ブイラドはタイプスの背で鼻を鳴らす。

「ふん、邪魔者は消えたか」

「多分。排除はできた」

 タイプスは頷き、ブイラドに視線を寄こす。

「もう、行ける」

「…ああ、そうだな。クヅクドと合流するぞ。あの[幻影魔女]を目の前で殺しに行く」

「分かった」

 言って、ブイラドとの合流と言う目的を果たしてタイプスは、彼と一つになったまま、怪物の方へ飛んでいった。

 

 そうして、邪魔者を排除した彼らは、目的を果たすために動く。

 ミィと言う何の罪もない少女を消そうと、本格的に動き始める。

 …それを、

「…」

 瓦礫の中より二つの目が見上げる中。




 状況は進行する。

 憎しみと悪意に満ちた集団が、一人の少女に牙をむく。

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