表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレ王子 Ⅱ 〜輪廻の輪から外れた俺は転生させられて王子になる〜  作者: さつき けい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/65

17・良くないこと


 一旦、部屋に戻った俺は、あまり食欲がなかった。


ドサリとソファに座ってぐったりしていると、ギディが俺の首に触れる。


この世界での体温を測る箇所だ。


魔力の通り道があるんだってさ。


「やはり熱が出てますね。 奥でお休みください」


昨夜の水浴びのせいか。


「嫌だ、やらなきゃならんことがいっぱいある」


頭が痛い。


熱のせいだけじゃない。


「指示だけすれば良い。 後は俺たちがやっておく。


コリルは六日後の宴までに体調を戻せ」


エオジさんはそう言ってくれるけど、そんなに寝てられるかっての。




「回復魔法を使えばすぐ良くなる」


俺が反論すると、エオジさんはため息を吐く。


「そんな状態じゃ、まともに使えないだろうが」


そうでしたー。

  

 俺は今回のヤーガスア行きの前に、念のため、王宮の治癒師に医療系の魔法を掛けてもらって習得した。


光魔法の治癒と回復だ。


回復魔法とは、その身体の回復力を上げるための魔法で、実際には病を治すものではないんだ。


初めて知ったけど、これ、かなり精神的な負担が大きい。


今の俺じゃあ、逆にダメージくらうかも。


しかも「体調が良くなる」だけで、病気を完治しない。


だから何度もぶり返す。




「分かった、休む」


例の侍女はこちらで預かると、ギディからマルに伝えてもらう。


「あいつの我が儘で侍女が拘束されていることは知ってるはずだ」


そのままでいこう。


「『タラリヤ』は酪農場へ。 使用人の女性たちと同じ扱いで良い」


あそこなら魔獣が苦手なヤツは近付けない。


護衛代わりになる。


隔離といっても酪農場の中では自由にしてもらって構わないしね。


「よろしいので?」


ズキ兄が不思議そうな顔をする。


「訊きたいことがあるだけだ。 今更、罰する気はないよ。


だけど、近寄って来る者がいると面倒だから保護したい」


エオジさんと女性兵士たちに連行をお願いし、向こうでの取り扱いの注意を伝える。


まあ、俺も明日からまた顔を出すから大丈夫だと思う。


俺が行かないと拗ねるヤツがいるからな。




 騎士たちには、マルの部屋の出入りを厳重に制限するように指示する。


「どうしても手に負えないと判断したら、ここに連れて来い」


「承知いたしました」


全員が動き出す。


 ギディがいなくなるので、俺の世話係はクオ兄とズキ兄になる。


重りの入った服を脱がされてベッドに放り込まれた。


「お腹空いたでしょ」


クオ兄がパンで作った粥を持って来てくれる。


「米という野菜はまだ見つからないけど、これで我慢して」


いやいや、全然ありがたいです。


美味しい。


キュルキュル


ツンツンが興味を示す。


「ほら、こぼすなよ」


少し行儀悪いけど、粥の残りを舐めさせた。


そしたら、チィチィも姿を見せて、一緒になって俺の器に顔を突っ込んでいる。


ふふふ、弟たちもクオ兄の料理が好きだな。


つまり俺の周りの皆んなが、前世の料理というか、味に慣れつつある。


良いのか悪いのかは、まだ分からないけどね。




 一眠りして、お昼近くになった。


「殿下、今、よろしいですか?」


パルレイクさんがやって来た。


一緒に昼食を取りながら話を聞く。


「昨夜お渡しした小赤の件で、一度ピア様と打ち合わせがしたいのです」


俺に呼び出せということか。


「分かった。 ズキ兄に使者をお願いする」


扉の側に立っていたズキ兄が軽く頷く。


だーかーら、公子なんだからそこまでしなくて良いんだってば。


こっちに来て座ってて良いんだよ。


「それと、会場に水槽を設置する件ですが」


シェーサイル妃や他の参加者には内緒だということで、かなり設営が難しい。

 

「一晩だけですから何とか致しますが。


……あの文官は何とかなりませんか」


「ザッジか」


ブガタリアの者が何かする度に口を挟んでくるらしい。




 俺自身なら身に覚えがあるから仕方ないけど、関係ない他の使用人や騎士たちにまで迷惑が掛かるのは困る。


まったく、イロエストの教育ってのはどうなってるんだ。


「分かった。 領主の文官だから俺には直接文句は言えない。


領主には苦情を入れておくよ」


あの義大叔父おおおじがサプライズなんて考えるから、ややこしいことになるんだよ。


奥さんだけにしておけば良かったのに。


はあ、小赤を売り込むチャンスだと思った俺も悪いか。


何とか後六日、耐えられるかなあ。




 ピアを呼び出すのと同時に、俺は領主への面会を申し込む。


あー、今日は体調がすぐれないので明日の予定だったんだけど。


「コリル様、大丈夫ですか?」


心配そうなピアが部屋にやって来た。


用事があるのはパルレイクさんなんだけど、どこ行った?。


「探して来ますので、ピア嬢はここでお待ちください」


お芝居みたいな口調で言うと、ズキ兄はニヤニヤしながら出て行った。


俺とピアは少し照れながら見送る。


 熱を測ろうと、俺の首に伸ばしたピアの手を掴む。


「大丈夫だよ、たいしたことない」


その手を口元まで引き寄せて口付ける。


「今朝、少し様子がおかしかったから心配してたの」


『タラリヤ』の件か。


確かに体調不良のせいで色々抑えられていなかったな。


王族としては良くなかった、反省しよう。


 


 ソファで手を握り見つめ合っていたら、バタバタと廊下で物音がする。


「お待ちください、マルマーリア様」


ギディの声だなあ。


まだあまり動かない頭でぼんやり考えていたら、部屋の扉がバタンと開いた。


「あー!、ピア、離れなさい」


駆け寄ろうとするマルをギディが捕まえる。


「何をするのじゃ、離せ!。 あの男からピアを守らないと」


ジタバタするマルを、ギディはしっかりと拘束した。


「まだ分からないのですか、マルマーリア様。


他国の王族に対して、そのような態度をとるのは失礼に当たります」


「分かっておる!。 しかし、これは正義じゃぞ。


ピアは婚約者のいる身。 いくら王族だろうと、自分の部下の婚約者を横取りしようなど悪人ではないか。


わらわが成敗してくれる!」


へー、そう。


「ツンツン」


キュルン


「ぎゃあああ」


うるさいなあ。




 全員を座らせ、クオ兄にお茶とお菓子を頼む。


「大丈夫ですか?、コリルバート殿下」


ピアが俺を気遣ってくれるのはうれしい。


「あなたのお蔭で、だいぶ楽になりました」


だけど、お子ちゃまには一度言い聞かせておかないとな。


 プンプンと怒った顔をしながら、目の前に出て来たお菓子から目を離せないマル。


今日はふっくらとしたパンケーキに果物とクリームがキレイに盛り付けられている。


俺の最近のお気に入りで、ピアに食べさせたいと用意してもらっていた。

 

「食べても良いのか?」


「ええ、どうぞ」


何か裏があると思ったのか、周りが食べ始めてからマルはパンケーキに手を出す。 


「ふおお、柔らかいのじゃ」


ピアもマルのうれしそうな様子に安心して、フォークを動かす。


美味しいものは心が落ち着く。


俺は食欲が無いので、お茶を飲みながら、皆んなが食べているのを見ないふりをしていた。




 皿が片付いたところで、さて、どうしようかな。


「マル、えっと、マルマーリア姫。


私はツデ国のことを知らないので、教えていただけませんか」


お菓子に夢中になって、それ以前のことをすっかり忘れているお子ちゃまに質問する。


「ふむ、仕方がない。 他に教えられる者もおらぬしな」


うん、お前の我が儘のせいでな。


「じゃが、ツデ国はまだあるだろうか」

 

は?。


「もうすぐ魔獣が攻めて来ると言われたのじゃ。


わらわは侍女と二人、何とか逃してもろうたが、戻って行った兵たちはどうなったか分からぬ」


涙を堪えて俯く。


「それは何日前ですか?」


ピアも驚いている。


マルが領主館に来たのは俺たちが到着する数日前らしい。


「ギディ、東の砦に伝令を出せ。


エオジさんと酪農場にいる兵士長を呼べ。 すぐに会議だ」


バタバタと動き出す。


ポカンとするマルをピアに預け、俺は領主の執務室に向かった。


熱?。 そんなもん、吹っ飛んだよ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ