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英雄の法  作者: 西表山cat
序章 始まりは二人
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第7話     2年生になる前に・・・

「充実した3日だった」

 とても充実した顔でケルスは告げる。

『声に出てるぞ。気をつけろ、まぁこの3日間ほぼ部屋の中に篭りっぱなしだったから仕方ないかも知れないが』

『気をつけるよ、さてと・・・学園に向かわなきゃな』




「おはよう、風邪だって聞いたけど大丈夫だったか?」

 学校についてから早速隣のファークから声がかかる。たかが3日だったけどそれでも入学してからほぼ休んでいなかった自分からすれば、ずいぶん久しぶりに感じる。

「もうすっかり直ったよ。」

「体調管理ぐらいきちんとしろ。貴族としての自覚がたりないぞ? おはよう」

「そういわれると返す言葉もないよ。おはようディスチェ」

 いつの間にか隣にいたディスチェもなんだかんだ言いながら自分を心配そうに見てくれていた。大分まわりに迷惑をかけてしまっていたようだ。だが過ごした3日を振り返り自分にいいきかせる。


 まったく後悔はしていない。


 そして午前の授業が始まったが内容はあまり進んでいないようだ。基本的に学園での授業は貴族相手に物事を確実に教えるように力を入れているので、誰かが落ちこぼれる事は大分すくない。

「これにて午前の授業を終わる、午後は来月2年生になる前の最後の試験に関する説明をする。以上」


 午前の授業を終わりみなそれぞれ昼食を取り始める。

「最後の試験・・・なんなんだろうな? ディスチェはなんだと思う?」

「魔闘試験のようなものならリベンジしようと思ったんだが最後というぐらいだから違うんだろうな」

「さぁな」

「ファークはあんまり興味なさそうだな」

「試験なんて最下位と最上位以外あまり注目されないだろ? その点ディスチェは頑張らなきゃだめだな。最下位は決定として」

「おい・・・それは俺のことか?」

「言わなくてもわかるだろ? でも前回の試験の最後を見てる人はケルスを警戒するかもな」

「・・・まぐれなんだけどなー」

『さりげなく嘘を言う事になれたな』

『褒めてくれてありがとう。全部お前のおかげだけどな』

「おっと先生が来たようだな」

 どうやら試験の話をしていたら思ったよりも時間が経っていたようだ。




「さて、それでは午前話したとおり2年生になる前の試験の説明をする。この学年最終試験の前に10日間の休みがある。大体の生徒は帰省するが寮で過ごす事も可能だ。10日後、試験の内容は―――――――――――」

 だいぶ長々と説明されたがまとめると以下の内容になる。



・  行う場所は学園の東にある自然(と魔物が)溢れる森

・  魔物は危険が少ないものばかりだが極まれに強い固体もいるかもしれないので気をつけるように

・  森に入ってから1時間後に生徒同士で闘う

・  先に負けたものから退場

・  勝敗の判定は事前に配られる試験用の石を破壊された方が負け

・  配られる石は右胸に付ける

・  魔闘試験と同じように相手に過度の怪我を与える、殺害するような行為は禁止

・  魔闘試験のような明確な順序づけはされない

・  戦い方は自由



「以上だ。なにか質問は?」

「戦い方は自由とありますがどこまで自由なのでしょうか?」

「自由は自由だ。過度の怪我や殺害してしまうような事以外であればすべて認められると考えていい、武器は学校から支給されたもの以外の持ち込みは不可。これ以上は答えられない」

『あれ? 今まで魔闘試験とか筆記試験とか生ぬるいものしかなかったのにずいぶん厳しそうな試験だな』

『そうか? 森には弱い魔物しかいないし、生徒同士の戦いだしそんなに問題ないんじゃないか?』

『ケルス・・・極まれに強い魔物が出るって言ってたじゃないか』

『極まれならまずでないだろ?』

『この3日間何を見ていた・・・極まれって言われてたらほぼなにかイベントは無かったかい?』

『・・・そういえば』

「先生、強い魔物が出た場合、どのように対処すれば良いでしょうか?」

 タイミングがいいことに他の人が質問をしてくれたようだ。

「逃げろ、学園に向かって。そうすれば立会いの先生が対処するだろう。まぁ学園が設立されてから試験の時に一度もそういった話は聞かないがな。そういう可能性がある、とだけ考えてもらっていい」

「・・・・・・」

 それを聞いて質問がなくなったのかしばらく沈黙が続く。

「もうなさそうだな。忘れてしまうものがいるかも知れないから当日改めて説明する。それまで闘い方を考えるもよし、技術を磨くもよしだ。ここ数日休んでいた奴もいたように休日でも体調管理は怠らないように――――――」

『あーあ、ケルスの事だな』

『・・・うるさい』

「――――――以上だ!」




 授業が終わり皆それぞれ帰省をするのか普段置きっぱなしにしている勉強道具を片付け始める。

「ファークとディスチェはどうするの?」

「俺はすぐに帰省だな」

「私も帰省だな。一年近くも家を空けたんだケルスも帰るんだろう?」

「あぁ・・・次に会うときは試験だな」

「魔闘試験ではないが10日後の試験では負けないさ」

「・・・逃げさせてもらおう。全力で」

 ディスチェの返答を聞き、なぜ自分で試験の話題を出してしまったのかと肩を落とす。

『あはっは! なんでディスチェの前で試験の話をするんだよ。はは! どんな気持ち? ついさっきも試験の話題出してディスチェに対抗心むき出しで話し掛けられてなかったか? ははっは、ねぇなんで反省しないの? なんで学習しないの? ねぇ? はっはっは!!』

 啓は笑いの"つぼ"だったのか今のやり取りを聞いて大爆笑している。

『おい。啓、笑いすぎだぞ? お前の知識でも見たがその挑発は怒るぞ?』

『ごめん。カカカ・・・笑いすぎたよ。カカカ』

 自分にはよく分からないが今のやり取りの余韻なのか啓はまだ笑っている。本当に心で会話できて良かったと思う。こんな笑い声を他人に聞かれたら恥ずかしくて耐えられない。カカカってなんだよ、そんな笑い声動画の中だけだと思っていたのに・・・と。

「ケルスは狙われそうだな。普段下位だし」

 イラついた気分を切り替えながら応じる。

「まぁ何とかがんばるよ、準備も終わったし先に帰るよ」

「さよなら」

「あぁさよなら」

「さようなら、次の試験。覚悟しておけ」

 ディスチェこんなにしつこかったか?と微妙にイライラしながら我慢

「しつこい」

 しようとしたがつい口にでたようだ。




 さて・・・帰省前に準備だな。そういって部屋を片付け始めるケルス。

『ケルスの家族には初めて会うな』

『ん? 啓は・・・あぁ、学園に入ってからだったな。俺に憑依したの』

『そうそう、兄弟はいるのかい?』

『・・・弟が一人。本当によく出来た弟がいるよ』

『なんだ、妹じゃないのかよ』

『がっかりするなよ! ていうか妹ならお前なにをするつもりだった?』

『ど、ど、どどうもしないし? な、な、な、なにいってるのかな?」

『確認しておく。その反応は冗談だよな?』

『ごめん』

 怒っているようなので素直に謝る。まぁ自分が冗談でもこんな事言われたら怒るかもしれないしな。

『冗談だよ。ケルスの家族は俺の家族。なにかするわけないだろ? ところで何時帰るんだ?』

『明日、朝にそれぞれの家から迎えの馬車が来る』

『なるほど』

『それまでこの3日間で見切れなかった動画でも消化するかな・・・』

『・・・・・・』

 しばらくはお互いに距離が縮められないかも知れないと思いながらあきらめて自分もまたケルスが就寝する時間まで魔法の書籍を読むことに没頭する。

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