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英雄の法  作者: 西表山cat
3章 違えた道
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第12話    手向け 氷の花

 ここだ―――そう言われて見た先にはそれらしき物が一切無かった。

「少し進んだ先に奴らがいる。さすがにこれ以上先に行くと気づかれるかも知れないから行けないぞ」

「・・・ふ~ん」

 日はまだ高いのに見つめる先は真っ暗だ。此処にくる前の場所もそれなりに深い森の中だと思っていたが、今いる場所に比べればまだまだだったようだ。

「で、どうするんだ?」

「ん? 殺せばいいんだよな?」

「だからどうやって殺すんだ! お前一人で―――」

「気にしなくていいよ」

「え?」

「だから、気にしなくていいよ。俺一人でやるから」

「っ! 相手は50人以上は―――」

「エイクァ」

 焦りはわかる、苛立ちもわかる、だけどエイクァに殺し方の説明などする気は無かった。

「ここで待ってて。すぐに終わらせてくるから」


◇◇◇


 風の魔法で空に浮き上がり、エイクァが教えてくれた盗賊達がいる場所を眺める。

「空からだと森に遮られて良く見えないな・・・まぁいいか」

 集中すれば人間が体に帯びる魔力は、木々の間からちゃんと見える。

 それを狙う事にしよう。


 集中する。

 まず魔力に混ぜる法技を選ぶ。"貫通"と"粘着"との初めての合成・・・成功。

 次に生成。作り出すのは水、握りこぶしほどの水玉をたくさん・・・成功。


 水は自分が思ったよりも順調に生成され、貫通と粘着の二つの特性を持つそれは高速で自転しながら自分のまわりを浮遊した。


―――――――

「村の男が近くの町から来た役人に連れて行かれた。抵抗した人は見せしめに殺された」

「目的は?」

「徴兵・・・スゥイジンの王はイェンフォウに・・・獣人の国に戦争を仕掛けるつもりだって大人達は言っていた」

―――――――

 自分には関係無い事だけど盗賊を倒すぐらいの手伝いはしてやるか、そう思った。


 次はフリーズオーラ。魔力を操作し自分の周囲の熱を奪う。通常であれば0℃を下回った時点で凍るはずの浮遊する水は、貫通の性質で絶えず螺旋に自転し、凍らず液体のまま-100度を超えてなお冷え続ける。

 うまく魔力を操作できている。まるで水属性を操作するのが苦手だったというのが嘘だったように、順調に順調に思い描く魔法が完成しようとしている。


―――――――

「戦争? どうして戦争なんて・・・」

「スゥイジンの国王がある日突然、だ。イェンフォウも噂だろうと思ってスゥイジンに外交官を派遣したらしいがダメだったって」

「・・・駄目だった?」

「殺されたらしい。言っとくけどこの話、全部本当かはわからないぞ?」

「いい、教えてくれ」

―――――――

 自分には関係無い事だと、そう"勘違いしていた"。


 極限まで熱を奪い温度を下げそして魔法は完成した。

 空から下を見ればランとエイクァが心配そうに自分を見つめていた。

 あまり待たせるのも悪いのですぐに覚悟を決め目標の盗賊がいる所を見定める。


―――――――

「国王に英雄? ってやつがついて、それからスゥイジンの国はおかしくなり始めたって言ってるよ」

「・・・その英雄の名前は分かるか?」

「ケルス、英雄ケルス。これから起こる戦争の元凶言われてる人だよ。スゥイジンの国に就いたのは二年前位って言われてる」

「・・・」

「で、盗賊は」

「もういい」

「え? だって―――」

「その盗賊の所に俺を連れて行け」

―――――――

 関係は大有りだった。諸悪の権化と言われてもいいぐらいに自分はその問題に結びつき、絡まりあい、そして中心にいた。


 死んだケルスへのせめてのも手向けだ。

 完成した魔法を地上に降らせる。浮遊している無数の水の玉は狙い違わず、そこに存在している一切の生物の生存を許さなかった。

 ある者は水の玉に胸を貫かれて、ある者は体に掠っただけで掠った部位が柔らかいサクサクのお菓子みたいに自壊した。

 水の玉は地上に一つ、着弾する度に大輪の花を咲かせる。ほとんどが透明な花だが中には真っ赤な薔薇の様な美しい花も咲いた。

 運悪く水の玉にまったく触れなかった盗賊がいた。それは次々と生きながらに赤や透明の花に"圧死"させられていった。


 赤や透明の花のように見えるそれは氷であった。極限まで冷え切った水の玉は地面に着弾すれば周りから一気に熱を奪い、風船のように氷の花びらを咲かせていた。当たればほとんどが即死であったが当たらなかったものは、氷で出来た巨大な花びらのような壁という壁にすりつぶされた。


 綺麗な・・・本当に綺麗な大輪の花が咲き乱れた。


 三分ほどで見える範囲での生命の気配は消え去った。

「・・・名づけて"氷花(アイスフラワー)"ってところかな」


◇◇◇


「啓。どこに行くんだ」

 ランに跨るとエイクァが声をかけてきた。

「色々やる事があるからね。近くの町にはどういけばいい?」

「あっちの方角」

 エイクァが指差した先は相変わらず森が続いていた。

「迷いそうだな・・・」

「なら俺が―――」

「駄目だ、村に帰りなよ。親が心配するだろ」

「でも・・・」

 これからの目的にエイクァは巻き込めない。まだ幼すぎるのだ。


 またな


 そういってエイクァとは分かれて離れた町に向かう。


 目的はスゥイジンに存在する英雄ケルスの殺害。

 更新が遅れて本当にすみません、ごめんなさい。

 一旦間を空けてしまうとなかなか筆がすすみません;;

 最後まで流れは考えてるんですが;;

 これで 章 違えた道 は終了です

 壊れた世界のケルス視点、デュランの国に帰った後の話を入れて最終章 人の国の滅亡です

 

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