第11話 盗賊の住処
エイクァの話をすべて聞き終わり、今は二人でランの背中に乗りエイクァの示す場所、盗賊の住処に向かっている。
その巨体からは信じられない俊敏さで森の中を駆けていく、ランに乗るのは一苦労で想像以上に揺れる。啓は自分の前にいる"エイクァ"をしっかり抱きしめ振り落とされないようにしていた。それがエイクァはどうしても納得出来なかった。
「・・・なぁ」
「エイクァ、喋ると舌を噛むから危ないぞ」
「・・・ごめん」
「・・・」
「・・・いや、やっぱり言わなきゃダメだ」
「なんだ?」
「どうして俺が前に乗らなきゃいけないんだ!」
「・・・」
そう、エイクァはランの前側に乗り啓はそれにしがみついていた。何故そんな体勢になってしまったのか。
―――言えない、振り落とされるのが怖いからなんて
ランに乗る時、最初にエイクァは嫌がった。畏れ多いとか、私は走ればいいとか抵抗していたがどうせなら一緒に乗るほうがいいと思い無理矢理乗せた。
その時、つい自然に前は揺れそうだなと思いなんとなく、ごく自然にエイクァを先に乗せ自分は後ろに跨った。
「・・・特に理由は無い」
「ならオオカミ様を止めてくれ、俺が後ろに座りたい」
「・・・断る」
「何故だ!」
「・・・そもそも何故後ろに座りたい? このままでいいじゃないか」
断る、当たり前だ。何を好き好んで揺れが激しい前に自分が座らなければいけないのか? メリットが無い。そう、理由はそれだけだ。
「・・・俺の体から手を離せ」
「・・・ふざけるな。そんな事をしたら落ちるだろ」
「ならオオカミ様を止めてくれ。男に触られるなんて不愉快だ」
「気にするな。俺は愉快だ、中々の抱き心地だぞ」
「お前! うあっ―――」
どうやら前方不注意で木の枝がエイクァを掠ったようだ。エイクァは目を擦りながら振り向きにらみつけてきた。
「お前!・・・お前、お前お前! オオカミ様が止まったら覚悟しろよ!」
「それも断る」
それからは無情な格闘の火蓋が切られた。高速で走るランの上に跨る二人の戦い。しかしどのゲームでもそうだが戦いは常に後ろを取った方が勝つ、すでに後ろをとっている自分の勝利は揺るがないだろう。
「このっ!」
先制はエイクァ、体にしがみ付いている自分の腕を解こうと鋭い爪を刺してくる。
「ごめん! 待って、めちゃくちゃ痛い!!」
「なら離せ!」
「断る」
後攻は自分、少しでもエイクァの力が抜けるように両手でエイクァの体を撫で回す。
「なっ! 卑怯だ、っひょわあぁぁあ!」
その悲鳴を聞いた瞬間、自分は確信した。勝ったのだと。
しかし勝利の余韻は長くは残らなかった。自分の腕に突き立てられていた痛みはなくなっていたが、同時に自分の体が宙に浮いたような感覚に襲われた。
「ちょっ!」
「あぁ!」
どうやら遊びに夢中でエイクァごとランに振り落とされたようだ。咄嗟に水の魔法で自分とエイクァを包んで地面に激突する衝撃を弱めようとする。
「間、に、合え!」
発動させた魔法はすぐに水を地面に具現化させ衝撃をやわらげてくれた。
水面にぶつかってなお衝撃は死なず、三回ほど体が跳ねてようやく止まった。
「はぁ、はぁ、大丈夫か? エイクァ」
「・・・大丈夫だ」
地面に叩きつけられた痛みで二人ともうずくまっている中、心配そうな顔をしたランが戻ってきた。
「クゥーン」
「ごめんな、エイクァがランから手を放すから落ちちゃったよ」
「・・・・・・」
「ん、何も言い返さないのか?」
「・・・ここだ」
「ここ?」
「この先が盗賊たちの住処だ」
エイクァの目の向ける先。
ただ大きい森が広がっていた。
Q 前の話 おかしくね? まず復讐の優先順位が高いはずだろ
A 作者もそう思います
とりあえず読者の心の代弁をしました。
・・・しかた無いんです;; 復讐先にしたらバッドエンドしか思い浮かばなくて;; なんとか改訂版で整合性を持たせます
本編なかなか進みません・・・難しいです




