*** 狂乱
壊れた世界の外で起こっていた出来事
雨はより一層強くなる。体は凍えるほど冷たいのに手は焼け爛れるほど熱い。
死ね。
「かはははっ! あはははぁ!」
深々と突き刺した手で心臓を掴む。
「がはっ! まだこれしきの―――」
その言葉と共に掴んだ心臓を捻るように騎士の体から引き千切り"爆散"させる。何故笑い声が漏れるんだろう・・・大切な人を失ったのに。
死ね、みんな死んでくれ。
頼むから、みんな、みんな、死んでくれ。
お願いだから。
◆◆◆
「応戦せよ! 弓、魔法部隊は味方への誤射を気をつけい。敵は素早い」
デュランがその言葉を発する間に騎士は五人殺された。目の前で繰り広げられる惨劇を防ぐ事は出来なかった。一方的な虐殺である。相手の魔法による移動はとても速く追いかけられず、攻撃を防ぐには部下達は対処できる術が無いのだ。剣士達はケルスを取り囲めず近づいた者からすぐに殺されていく。弓や魔法の攻撃は多少当たっているが、傷を庇うそぶりすら見せない。
「ひっ! あ、っあ"ー!」
「デュ、デュラン様!」
「あ、熱い、あつ――」
ある者は体を業火に焼かれ、ある者は体が内側から弾け細かい肉片と化した。
それは命を削るような戦い方であった。魔法による移動は非常に速い、が、遠目から見てもわかる様に足に壮絶な負担を掛けているようである。炎による攻撃は騎士を次々と葬り去って行くが、魔法の制御が出来ていないのか己の手を焼き、両手はすでに先の指の骨がむき出しになっている。
一人、また一人倒れていく。何も出来ていないわけでは無い。相手の動きは徐々にではあるが間違いなく鈍っているのである。当たっている。弓も、魔法も、そして徐々に剣士達の斬撃も。
―――速すぎる
「集まれ! 一箇所に集まり取り囲めるように―――」
最後までデュランはその言葉を続ける事が出来なかった。無意味だと悟ったからだ。
どさり、と部下の最後の一人が倒れた。
「お前で、最後だ」
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