第7話 褐色の子供
自分を信じて疑わぬ二つの大きな瞳は、純粋に自分を見つめ返す。
「・・・なんで」
そう言いながら手に力を込め振り上げる。
「クゥーン」
炎が目の前にありながら、振り下ろされそうなのにランは、ただ穏やかに自分に頭をこすり付ける。溢れる喜びをあらわすように、離れたくないと言いたそうに。
「・・・なんでそんなに俺を!」
振り下ろす。
―――ぽふ
なんとなく出来ないような気がしていた。ランに振り下ろされていた拳の魔法は消え、結果的には毛皮に覆われた横腹を撫でるような形になった。
「・・・臆病なのは、俺のせいだ・・・わかってるけどっ!」
出会いから暴力の連続だった。生かす為とはいえ自分がした行為が、ランを臆病にしたのは間違いない。わかっている。
ランがいてもあの兵達が止まるはずも無かっただろうし、ランも無駄死にするだけだっただろう。わかっている。
もうどうしようもない。わかっている。
なのに、なのにと考えてしまう。その考え事は突然中断させられた。暗闇の中、徐々に大きくなる駆け足の音と共に、突然小さな子供が自分の前に現れ飛び掛ってきた。反射的に体を庇う為腕を前に出したが、まだ子供とも言えるような少年から放たれた回し蹴りは強烈だった。
「っが!」
体が少し空中に浮き、背中から地面に落ちる。
「・・・痛い」
「・・・お前は誰だ?」
ゆっくりと体を起こす。寝起きの体に蹴りの一撃は中々つらいものだった。
「・・・もう一度聞く。お前は誰だ? このお方は我々の守り神だ。何用で近づいた?」
観察する。自分に蹴りを放った子供は、ランに背を向け自分と対峙している。
褐色の肌に整った髪、民族衣装なのか独特な装飾の施された服は、啓から見ると綺麗だと思えるものだった。また全体は小さいのに引き締まった体は強烈な蹴りも納得が出来るものだった。
「・・・おい、やめろ」
出来るだけ刺激をしないように言う。
「・・・何を言っている? 私はお前が何者なのかを聞いてるだけだ」
少年は気がつかない。自分への一撃が真後ろにいるランを怒らせた事を。ランは先ほどまで浮かべていた穏やかな顔からすっかり表情を変え、牙をむき出しにし今にも目の前の少年を噛み殺しそうだった。
「・・・言えないような目的を持つ者か。ならば殺すしかやむなしだな」
目の前の少年は構える。それが引き金になった。
「馬鹿野郎!!」
―――ドン
光が夜を照らし少年を貫き、その身を焦がし意識を刈り取った。
―――ガチ
その音にかぶさるように少年の頭が会った場所を、ランが噛み付いた。
「ラン、落ち着け。俺は大丈夫だ」
全然大丈夫じゃない。骨が折れた。魔法でも直りが遅い位に酷い。
「・・・ったく。あと少し魔法で倒れるのが遅かったら首なしだぞ」
ランを撫でながら倒れた少年を見下ろす。
「お前の知り合い? 守り神とかなんとか言ってたけど・・・」
「オォン?」
地面に倒れる子供に小さく感謝をする。
身を焦がすかもしれないと思われていた憎しみをしばし忘れさせてくれた事に。
はい 女です
・・・きっとしばらくすればどろどろしますよ




