第10話 啓の闇 ―偽り―
四日ぶりに学園に登校すると"あの"三人の生徒の席は空いていた。ただ先生が入ってくると、それには一切触れる事無く授業が始まった。これから関わることもないだろうと思っていたが、突然いなくなるとは思わず気になって啓に聞いてみた。
『啓』
『なんじゃ』
つっこまない、時間の無駄だ。
『・・・あの三人どうなったか知ってるか?』
『・・・つっこめよ、俺が馬鹿みたいじゃないか』
『いい加減、そういうのやめろよ。どう返せばいいか俺が困るってわかるだろ?』
『待て、前提がおかしい。俺がケルスに合わせるんじゃない、ケルスが俺に合わせるべきなんだ』
時々おかしい事いうなと思ったが、これも恐らく異世界の冗談みたいなものだろうと思い、徹底的に合わせないことにした。
『・・・もういい。んで?』
『ケルスは心にゆとりが無いな~。・・・知らないよ、俺は』
『はぁ、なんだそれ? もしかして俺が居ない四日間ずっと休みだったのかよ』
『いや、昨日までは来ていた。原因は先生に聞いてみないとわからないな』
もともと"あの"喧嘩が原因で少しどう顔を合わせるか不安だったが、いないならどうでもいい。原因は気になるが先生に聞くほどあの三人に興味があるかというと、別にそんな間柄でもないのだ。
『・・・そうなのか、ならいいや』
それで話を終え、先生の講義に耳を傾ける。
昼休憩の時間になるとジェンヤ先生がまっすぐにこちらに来る。
「ケルス、少しいいか?」
「・・・なんでしょう?」
そしてそのまま教室の外の廊下連れて行かれる。誰も居ない事を確認してジェンヤ先生が出した声はいつもの授業とは違い大分小さいものだった。。
「・・・お前には悪いと思うが昨日のことでな、これで最後にするが・・・」
なんの事だか分からなかったが啓を見ると明らかにおかしな様子だった。
『お前・・・なにをした』
『・・・』
無言で顔をそらされる。
「それ以上は聞くこともないようにしよう。授業が終わったら、忘れずに来るんだぞ」
先生は自分が沈黙だったのを何か理解したように、そのまま去っていった。
啓の顔は何かを重大な悩みを抱えたような複雑な表情をしていた。きっちりと問い詰めておくことにする。
『おい、な! に! を! したんだ』
『・・・』
『啓―――』
『・・・・・・・・・くっくっく』
突然笑い声を上げる啓に一つだけ思い当たったことがあった。
『・・・お前』
『くっくっく、あっはっはっは!』
『・・・っくっそ! お前・・・』
『何必死になってるんだよ!』
『お前、朝無視したことを根に持って―――』
それしか思い当たることが無かった。
『悪いと思ってるよ。くくく・・・実は昨日、地魔法の練習をしてたんだけど、つい学園のすぐ外にある校庭を荒らしちゃってね、それだけだよ』
『それだけって・・・じゃぁなんで先生はあんなに』
『いやー、その後罰だって、校庭直せって言われてね、まだ綺麗に直してなかったり・・・する』
思ったよりも、酷いものでは無く少し安堵する。
『・・・っはぁー、もちろんお前が―――』
『当たり前だ。ジェンヤ先生にもちゃんと謝るし、片付けも二時間の中で綺麗にやっておくさ』
『まったく、あまり派手にやるなよ? 家に何か言われたら嫌だしな』
『悪いな』
『わかってるなら気をつけてくれ』
そうやってケルスとこの話は終わった。言い訳も自分と先生の後で行われる会話からケルスの興味を消すのには十分だったようだ。午後の授業をケルスが受けてる最中に予め先生と話す内容をより深く考えておく。
『じゃぁ啓、ちゃんと怒られろよ』
授業が終わり先生と"お話"をしに行く為、立ち上がる。
『わかってる、ケルスも一緒に怒られるか?』
『いー、やー、だ。奥に行ってるよ、何が悲しくて啓と一緒に先生の怒った顔見なくちゃいけないんだ』
そこまで話すとフランがこちらに向かってくるのが見えた。
『んじゃ、頑張れ』
そういい残し、ケルスは奥に行った。
「今日なら・・・って言ってましたわね。ケルスさん」
「"あの"場所で待っててくれ。ちょっとジェンヤ先生に呼ばれちゃってね」
それだけ伝えてすぐに教室を出た。
「悪いな。昨日も話を聞かせてもらったが学園側からどうしても、もう少し詳細な話を、と言われてな」
ジェンヤ先生はとても重苦しそうな口調で話しかけてくる。しずかな生徒指導室には二人しかいなかった。
「はい・・・本当に・・・これきりにしてくだ・・・さい」
自分から出た声は、小さく震えるようなものだった。
「それじゃ再確認だな。お前を襲った奴はどんな姿をしていた?」
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ラージ達を殺した後に、昨日先生をすぐに呼びに行き、あった事はこうだった。
先生! すぐ来てください! ラージ達が・・・襲われてるんです!
学園に飛び込みすぐにそう叫んだ。学生はすでに学園におらず、まだいた複数人の先生がすぐに自分について来てくれた。そして着いた場所は少し焦げ臭く、ジェンヤ先生を含め他の先生も愕然とした表情で"それ"をみた。
ところどころに穴の空いた球状の岩。その中にある真っ黒な"何か"。
その"よく分からない"物の前で泣き崩れる自分。
「どうしたんだ、ケルス」
「ここに・・・」
「ここに?」
「ここにラージ達が閉じ込められて・・・いたんです」
それを聞くとジェンヤ先生は静かに岩の中にいる"物"を見た。
「これが・・・なのか・・・」
「僕が・・・僕がいけないんです、勉強に誘っていなければ! ラージ達が庇ってくれてなければ・・・僕が・・・死ねば良かったんです・・・」
「落ち着け。まだ"あれ"がラージ達だとは限らない。とりあえず岩は壊すぞ」
そういい、ジェンヤ先生は素手でラージ達が一生懸命壊そうとしても大きな傷がつけられなかったそれを"砕いた"。その後、黒い物は先生達が回収し、他の先生とジェンヤ先生で襲われたときの状況を説明させられた。
"あの"後、すぐに仲直りしたんです。
で、自分の成績を心配してラージ達に相談して勉強に誘いました。
寮だとせまいから、森で勉強をするようになりました。
そしたら昨日、黒い服を来た何者かが突然自分の前に現れて襲ってきました。
自分を助けようとラージ達がそいつに魔法で攻撃しましたが、"地"の魔法で自分以外すぐに閉じ込められて・・・
何やってるかはわからなかったです、自分ではどうする事も出来ず助けを呼ぼうと、先生を探しに学園に来たんです。
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昨日と同じ確認の言葉を聞きながら予め用意していたセリフ言う。
「先生・・・僕は・・・一緒にラージ達と戦うべきだったんでしょうか・・・」
「ん?・・・いや・・・それは」
憔悴した表情の自分の様子を見てジェンヤ先生は答えずらそう言葉を濁す。
「なんでそんな顔をするんですか・・・ジェンヤ先生も僕が逃げたことを責めようとしているんじゃ―――」
「ケルス、あまり思いつめるな。他の先生が確認した結果、あれはラージ達で間違いないそうだ」
「やっぱり・・・僕が・・・僕が逃げていなければ―――」
「だから思いつめるな。あの"よくわからない"ような魔法を使った跡を見ると、とてもお前が逃げなくてもあいつらが死ななかったとは思わん」
「僕は・・・ラージ達に庇われた! なのに閉じ込められたあいつらを見て僕は・・・逃げた」
そこまで言って、両手を顔に当て涙を・・・水魔法だが流して思い出を騙る。
「あいつらとは本当に"親友"だったんです。この前はお互いに夢を語ってました。ラージは・・・"王の剣"を目指して・・・いたって」
「・・・もういい」
「やめません! 僕が殺したようなものなんだ! だから学園もこうやって昨日あった事をまた聞いてるんでしょう!」
激昂する。少しでも疑われる要素を少なくするために。強い感情を小さい嘘を覆い隠せる事を知っている。自分の声につられジェンヤ先生の声も険しくなる。
「違う! ・・・もういい。あくまでも確認だけだったんだ。昼も言ったがこれ以上はお前に何も聞かん、確認したい事はほぼしたしな。ラージ達の家には俺から連絡する。お前はこの事は忘れろ。他の先生からもこの話は今後お前には何も言わせん」
「・・・いいんですか。もしかしたら僕は・・・何か疑われて―――」
それは無い。疑われるような事が無いようにここ数日行動をした。
「馬鹿な事を言うな。教室内でもお前達は仲が良かったと誰もが言ってる。もちろん私もそれを知っている。あれだけ仲良くしていたお前を誰が疑うんだ。・・・・・・終わりだ! もう帰れ。いいな! 忘れろ。犯人の事なんて考えるな。後の事は全部先生達が片付ける、ゆっくり休め!」
これで嫌疑が晴れた。先生はこれでケルスにこの話題を出す事はないだろう。生徒はそもそもこの事件があった事すら知らないだろう。生徒の誰かが先生に聞くかもしれないが先生達が生徒にわざわざ事件の内容を教えるとは思わない。
さて・・・すぐに会いにいくか。
・・・啓の闇終わらないよー・・・
支配・・・はい、訂正します。あと四日ぐらいかかりそうな・・・
語る、騙る・・・たぶん誤字じゃないですよ。
あともう更新がとまるのも悪いので迷わず一気に書いていこうと思います。




