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英雄の法  作者: 西表山cat
2章 幼い歪み
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第8話     啓の闇 ―観察―

「失礼します」

 部屋の中に入るとすでに自分を・・・正確にはケルスを殴った三人とジェンヤ先生が待っていた。今頃だが三人の名前を聞いてなかった事に気がついたが、もうどうでもいいと思い不良達と呼ぶことにする。どうせ彼らにはこの世界からすぐに退場してもらうことになっている。

「そこに掛けてくれ」

 ジェンヤ先生に不良たちの対面の椅子に促される。丸いテーブルを囲み、お互い向かい合う。



「さて・・・これから乱闘に至った経緯を訊かせてもらうが、まずはケルス。言いたい事もあるだろう。先に言っておけ」

 言いたい事も・・・悪意は無いのだろうが先生の言葉に少しイラつきながら笑顔で応じる。

「はははっ、先生、朝はすみませんでした。この方達の話から聞いてあげてください。自分は少し疲れているので、後でいいです」


 自分の笑い声がそれほど意外だったのか先生は少し安堵したような顔をする。不安でいてもらっては困る。安心してもらわなくては困るのだ。


「おぉ、朝と比べて大分落ち着いたようだな。疲れているなら仕方ないな。フェイウ、ラージ、シャオシ、最初に手を出した原因はなんだったんだ? クラスの者からもお前達が最初に殴ったと聞いてるぞ」

「いえ、実は・・・」

 真ん中の、ケルスを一番最初に殴ったラージが申し訳なさそうに小さな声で喋る。

「本当にすみませんでした。実は他の人からフランさんが、ケルスさんに付きまとわれてる、という話を聞いて最初は注意すれば良いかと思っていたのですが、次の日にまた付きまとっていたという話を聞いたものでつい・・・」

 他の二人にも話を聞くがラージと同じような話を聞いて三人で協力しよう、という事になったらしい。

「そうか、誤解か・・・しかし誤解とはいえ手を出したのだ。相応の罰を与えなければならない。寮で一ヶ月の謹慎を言い渡す」

「そんなっ!」

「なんだ? ケルス不満か?」



 違うんだ・・・ジェンヤ先生。ここでこいつらに謹慎されたら困るんだ。ケルスが休んでる間に掃除が出来なくなるじゃないですか・・・。



「いえ、誤解とは言えその行動は正しい行いをしようとした故の行いですし、なんとか処分を無しにする事は出来ないでしょうか?」

「・・・そうかお前がそう言うなら出来なくもないが、本当にそれでいいのか?」

「はい、ところでその噂って誰から聞いたんですか?」

「すまない・・・複数の人から聞いていて、どれも"らしい"というもので本当に自分達が噂の確認をしなかったのが悪いものなんだ・・・」

 そういって三人は頭を下げる。




 よく噂の確認をせずに、噂の出所すら言えず、フラン本人にすら確認をせずに、ケルスの顔をいきなり殴り、押さえ、動けなくなるまで暴行した。


今、彼らは、言葉は違えど、確かにそう言ったのだ。




「気にしないで下さい、不幸な行き違いですし、明日からは気にせず普通に接してください」


 抑える、まだ手を出してはいけない。彼らにはまだ"訊きたい"事があるのだ。


「いやー本当によかった、話し合いで済んで。こういった問題はそれぞれの家同士の不和の原因にもなる事があるからな。ケルス、お前も誤解がされるような行動はこれから控えろよ!」


 馬鹿なのか? この先生・・・本当にケルスに休んでもらっていてよかった。この無神経は異世界だからか? いままでこんなこと一年の間で一度もなかったのに・・・。


「じゃぁもう帰れ。今日はゆっくり休めよ!」

 そう言われて四人で途中まで少し気まずかったが談笑しながらそれぞれの寮に帰った。喋りながら啓が考えていたことは一つだけだった。





―――こいつら、どうやって殺そうかな―――



************************




 寮に戻りケルスに声を掛ける。今まであんな事が無かったのだ。どれほど落ち込んでいるか心配だ。

『ケルス、休めたか?』

『あぁ、啓ありがとう。だいぶ休めたよ』

『・・・辛かったら俺に言え、授業も俺は一緒に勉強してきたんだ。変われるぞ』

『そんな優しい言葉が出るなら、あの暴行から助けて欲しかったぞ』

『・・・前に言わなかったかな? 体は勝手に使わない。それが例え自分が死ぬ事になっても。助けて欲しかったならそう言えばいつでも助けたよ。しかも自分で殴りかかってたじゃん』

『ははは、そんな事もあったかな・・・いつの話だよ。なんとなく覚えてるけど』

 ずいぶん乾いた笑い声になったな。表情もまだ固い。それが少し話したケルスに感じた印象だった。


『もう寝ようか』

『あぁ寝よう』

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