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英雄の法  作者: 西表山cat
2章 幼い歪み
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第5話     女王蜂

 二年の初めの授業が終わりそれから一月ほど時間が過ぎた。隣にいたレンとは啓のおかげ? で思いのほか仲良くなっていた。あの後は啓にレンと会話をさせる事もなかったがあの言動は冗談として受け止められているようだった。授業も魔法に属性の説明が加わった他には多少過去の歴史の内容も入ってきたが、一月・・・恐らく一番変わったことは学園から帰ってから、その後の二時間を啓に使わせるようになった事だろう。




『なぁ、啓。いつもこんな事して楽しいのか?』

『こんな事? 楽しいさ、ケルスは楽しいと思わないのか?』

 ケルスの疑問はもっともかもしれない。啓が行っていたのは魔法の練習だったからだ。

『魔法の勉強の努力なんて自分は楽しいとは思わないね』

『ケルス・・・ケルスよ、おぉケルス・・・考えてもみろ? お前は見ただろ? 俺の知識の中にあった物を。想像してみろ! 魔法で空を飛ぶことが出来れば、思いのままに何処にでもすぐに行くことが出来れば、寒い日には温まり、暑い日には涼しく過ごす、それ以外にも様々なことが出来るようになるんだぞ?』

『芝居みたいなのやめろよ大体お前の世界はそもそも魔法が無かったじゃないか。この暇な時間、啓の知識を楽しませてもらってるけど、改めてみるとめちゃくちゃじゃないか。大体なんで魔法がないのに、魔法を想像してるんだ? お前の国は・・・』

 ケルスは知識の一つの物語を思い返す。それは、勇者と呼ばれる者が魔王と名乗る純粋な”悪”の存在を討ち滅ぼすために、仲間と努力する子供向けの話だった。

『属性が水、火、地、他にも、風、これはまだわかる。この世界にもあるからな・・・だけど! 雷って・・・伝説じゃないのか? 後、光とか闇ってなんだよ! 金とか月とか、もはや物質じゃないか、その他にもまだまだある! 呪文ってやつを戦闘中に唱えたり、必殺技叫んだり・・・なんなんだ』

『・・・・・・夢がないなー。カッコイイと思わないか? 光とか闇だぞ? よく考えたら俺もなにがなんだからわからないがな・・・月とか金はなんだろうな?』

『お前の知識だぞ? 知るか』




 そこで雑談を止め啓は想像する、吹き荒れる風を敵にぶつけるように手を振りぬくが、風が吹くことは無かった。イメージが悪いのかと思い、改めて風の発生する原理を考える。そもそも風って・・・一番身近なものはやっぱり団扇か。そう思い純粋な魔力を扇状にして上から下にふり抜いた。ふり抜いた力が強すぎた為、地面が扇状に大きく陥没して驚いたが、風は小さく吹き抜けていった。

『今のいいんじゃない?』

『だめ・・・かな。あんなんじゃ弱すぎる』

『それはそうだけど・・・しかしあれだけ大きな魔力を使う位なら普通にぶつけた強そうだ』

『・・・それをいうな』

 しばらく考えたがいい案が思い浮かばず他に挑戦できる属性を考える。基本的に使いたいのは風だが、それ以外にも簡単そうな"氷"、多少危険が伴うだろうが"雷"もいずれは試したいと考えていた。光と闇はそもそもなんなのかすらイメージ出来なかったので、一番最初に除外した。しばらく悩んだが

『残念だな、時間だ』

 ケルスのその言葉でその日の訓練は終了した。思ったよりも集中していたのか二時間が過ぎていたようだ。




 次の日はいつも通り授業を受けていたが珍しいことがあった。午後の授業が終わり同じクラスの人に話しかけられたのだ! ・・・どれぐらい珍しいかというと、この一ヶ月の間に一度も無かったことだったりする。つっこまないでくれ、悲しくなるから。

「ケルスさん、今空いてるかしら? ちょっと勉強で聞きたいことがございまして」

「勉強? 知ってるかもしれないけど私の成績は良くないですよ。フランさん」

 話しかけてきたのは自分がまず関わらないような、クラスの男性女性問わず人気の女性のフランであった。活発的に行動をし格闘、魔法共にこのクラスでは上位であり、休み時間も常に誰かと一緒にお話をしているような、そんな人であった。ディスチェ? 偶然隣にいたから社交辞令で仲良くなっただけの人だし・・・さらに言えばあの猫種、人気だったけど別に社交的じゃなかったなと、一月前まで一緒にいた彼女を思い出し目の前のフランと見比べてしまう。

「存じております。・・・ここで話すのもなんですから人目のない外に出ませんか?」

「あーそうしましょうか」

 多少悩んだが教室を出て考える。なぜ自分に話しかけてきたのか。まず接点がなさそうなんだがなーと。

『勉強も格闘もだめなお前に声かけるとか・・・しかも・・・存じておりますだってさ! ククククク』

『・・・事実だけど指摘しないでくれよ。悲しくなるから、あと変な笑い方やめろ』




 外に出てもしばらくフランはケルスの前をついてきて、と言うかのように静かに歩いた。着いたひと気のない場所は毎日ケルスが、正確には啓が魔法の練習をしている場所だった。

「ここまでくればわかるわよね?」

「・・・ごめん、全然わからない」

「にぶいわね・・・それとも惚けてるのかしら? 最近この場所で格闘や魔法の練習をされてますわよね?」

「あーあ、それはですね――――――」


『啓よ・・・あの姿ばっちり見られてたらしいぞ』

『・・・すまない。ケルスのしたいように話を進めてくれ。場合によっては苦手だと思ったら俺に振ってくれ。』

『いや・・・そこまではいいかな。まぁちょっと話してみる』


「―――それはですね、授業でならった魔法の復習をしてたんですよ。やっぱり普段の勉強だけではついていくのも精一杯ですか―――」

「―――それは嘘でしょ? 私この前も、昨日も見ていたんですよ? "風"を使われていませんでしたか? いえ、あれは"風"で間違いないですわよね?」

 嘘の言葉はフランの強い否定にかき消された。丁寧な言葉使いではあるがその喋り方は確かな確信を持った問いかけであった。




「さて・・・なぜ嘘をついたんでしょうか?」


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