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亡き夫と十七歳で再会しました~無愛想な彼に、今度は私から恋をする~  作者: 熾星


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このカードは俺のもの

夏帆の頼んだ二つのセットは、結局、ほとんど蒼介の腹へ収まった。セーラームーンとのコラボシールを、一枚は千紗へ渡した。自分はティッシュを手に、チキンのバケツから手羽元を一つ取り、バーガーからレタスを一枚抜いて、パンの端を少しちぎった。「ちょっとすいた」という言葉の証拠にはなる。残りは、全部、彼の前へ押し出した。

「これ、食べきれないから。お願い」

 両手を合わせて拝んだ。目が潤んで、きらきらしていた。

 蒼介は、彼女が食事をするところを見ている。頬は丸く、体も柔らかそうで、何でもおいしそうに食べた。食堂へ来たときは、ほとんど肉のない三百円の補助付き定食を、米一粒も残さなかった。それが今日に限って、食べられないと言う。

 たいていは、臆病な猫のようだった。怖がりながらも、少しずつ寄ってくる。もう長い年月、知り合っているかのように。ところが今は、少し年上の姉になって、何かを埋め合わせようとしているようだった。

 少しためらうだけで、脂っこすぎるのか、塩辛いのかと尋ねてくる。すぐにでも、別のものを買いそうだった。蒼介が包みを開き、うつむいてバーガーを何口か食べると、彼女はしばらく様子をうかがってから、ようやく顔を下げた。口元が緩み、両側にえくぼができた。

 肉を少し多く食べただけで、ひそかに、あんなに喜ぶ。はっきり見えていた。考えが何度も巡り、口の中の味さえ、かえってわからなくなった。チキンもバーガーも食べきり、コーラまで残さなかった。

◇

 秋休みの間、美津子は屋台を出す時間を長くしていて、深夜まで戻らないことも多かった。蒼介は先に、妹を連れて帰った。

 七歳の千紗は、入浴や着替えのときには、兄から離れたほうがいいと、もうわかっていた。身の回りのことも、ほとんど自分でできた。家の電源タップは、蒼介が置き直した。高くできるものは高くし、動かせないものは、フックで固定した。

 千紗は風呂を済ませ、くま柄のパジャマへ着替えると、ドライヤーを持って出てきた。兄にプラグを差してもらい、小さな鏡に向かって髪を乾かした。それから卓上ライトの下で日記を書き、手をつなぐ女の子を二人描いた。ノートを閉じると、扇風機を弱にして、電気を消し、ベッドへ入った。

 部屋が狭く、蒼介はずっと、外の部屋のソファで寝ていた。最初の一週間から、寝苦しかった。両脚の膝から下が肘掛けの外へ出て、起きると膝の裏がしびれた。今朝、中古の店で折り畳みベッドを見つけた。ソファの横の空きに、ちょうど入る。どうにか、脚を伸ばして眠れるようになった。

 片腕を枕にし、しばらく天井を見ていた。ガラスの引き戸越しに、奥の部屋の天井が光った。淡い青が回り始め、小さな星と月になって、いっぱいに広がった。

 家にいるのは、兄妹だけだった。起き上がって戸を開けると、千紗は枕元に腹ばいになり、白雪姫のナイトライトを手に、宝物のようにひっくり返して眺めていた。補聴器は脇に置かれ、まだ充電されていた。

 蒼介はそばへしゃがみ、ライトと天井を見比べた。箱が、すぐ手元にあった。暗い青の光の中で、ピンクのリボンつきケースに入った交通カードが、おもちゃの包装に紛れていた。ひと目見たところでは、妙に馴染んでいた。

 箱を持ち上げ、手話で尋ねた。

【夏帆の?】

 千紗はそこで、兄が来たと気づいた。揺らしていた小さな足が止まった。

「お姉ちゃんがね、最初から箱に入ってたんだって。大当たりだから、これから学校に行くとき使ってって!」

 帰り道の兄は、少し変な顔をしていた。うれしかった話を、ずっと我慢していたのだ。今はいつもどおりに見えたので、頬杖をつき、話し始めた。

「いつ、またお姉ちゃんと遊べるかな。私、お姉ちゃん好き。お姉ちゃんも私のこと好きで、お菓子もいっぱい入れてくれたの」

 別れて数時間で、もう会いたくて仕方ないらしい。蒼介は床のピンクの鞄へ目を落とした。ファスナーが開き、筆箱の横にチョコレートが詰められていた。その上には、苺のウエハースもある。白い子犬の包装は、以前、自分がもらったものと同じだった。

 食べ物を渡してくるときの、夏帆の顔を思い出した。それから、午後、妹にポテトを食べさせていた笑顔も。口元が、少しずつ固くなった。

 千紗は、兄の口数が少ないことには慣れていた。指を折り、真剣に数えた。

「休み、あと七日あるでしょ。毎日チョコを二つ食べて、最後の日にビスケット食べるの。そのときには宿題も終わってるから、先に見せて、それから食べる。いい?」

 蒼介は立ち上がり、期待を寄せる目に向かって、無表情に手を動かした。

【宿題は見せて。お菓子は、一口も食べちゃ駄目】

「どうして?」

 千紗が勢いよく起き上がった。蒼介はライトの箱を取り、ピンクの鞄も引っ掛けて右腕へ載せた。真面目な顔で、自分の歯を指した。

【虫歯になる。十時だよ、千紗。ライトを消して、寝なさい】

 背後で引き戸が閉まった。妹がもう何度かばたばたしたが、抗議の声も、戸の向こうへ閉じ込められた。蒼介は荷物を抱え、外の部屋へ戻った。

 幼いころから、近所の人にも父にも、ひどいことを言われた。言われなくても、自分はどこか、生まれつき人と違うと感じていた。羞恥心は薄く、道理は本から学ばなければならず、人を喜ばせる方法もわからない。多くのことを、本能だけで決めていた。

 妹を守ることも、妹から物を奪うことも、同じだった。悪いとは思わなかった。自分の妹でなければ、あのライトさえ、残してやったかわからない。

 夏帆は千紗に食べさせ、自分にも、そのまま食べさせる。それなら、なぜ、自分だけにしてはいけないのか。

 お菓子を二袋取り出し、鞄のファスナーを閉め、ソファへ戻した。チョコレートの箱を開け、二つ包みをむいた。ピンクの包装紙には、小さな雪の結晶が散っていた。中のフィリングは甘く重く、好きといえる味ではなかった。

 それでも甘さが喉を落ちていくと、午後から湧いていた焦げるような渇きが、一瞬、収まる気がした。また、ゆっくり浮いてきた。

 狭い折り畳みベッドへ、片膝を立てて寄りかかり、顔色も変えず、半箱以上のチョコレートを食べた。窓から街灯の光が少し差していた。ライトの箱を取り、リボンつきのカードケースを外した。

 交通カードは新しく、数回しか使っていないようだった。表には榊野交通のマスコットが印刷され、裏にはプリクラが貼ってあった。夏帆が目を細め、柔らかそうな頬を見せ、両手で猫の爪を作っていた。

 表面には光るホログラムのフィルムが掛かっていた。手首を少し動かすだけで、小さなハートがいくつも浮かび、きらきらした。蒼介は小さく鼻を鳴らし、手を止めた。口の端を、わずかに曲げた。

 黙って物を渡したくて、当たったのだと子どもを騙す。それなのに、自分の写真を剥がすことさえ忘れる。こんな下手な嘘を信じるのは、千紗くらいだろう。

 リュックの内ポケットから、使い古した財布を出した。写真の面を内へ向け、差し込んだ。

 千紗には、自分の子ども用交通カードがある。これは、自分のものだ。

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