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無奏

 理由など、さして重要ではない。

 原因など、それ以上に馬鹿らしい。

「ただ、その時だったから。それの何がいけない」

 世界は真っ白だった。天井も、床も、壁も。

 己を取り囲む世界全てが、白かった。

 どうしてと泣き崩れた母。

 何がいけなかったのだと拳を握り締めた父。

 何があったのかと、問うてきた大人達。

 だから、答えたのだ。

「原因も理由もない。ただ、私にとって、その時だっただけ」

 世界は白かった。

 天井の白。床の白。壁の白。包帯の白。

 違う色が存在する窓の外は、それは私にとって、世界ではなかった。


***

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