第七話運命の誓い
第七話運命の誓い
温泉は男湯、女湯、混浴の三種類があるが俺は当然男湯だ。
そう決めていたというのに
「グレンさんは温泉の後に牛乳は飲む派ですか?」
「俺は飲む派だな。聞いてきたんだからセフィナにも答えてもらおうか」
「私は、飲んだ事はないですね」
何故俺はセフィナと混浴に入っている。
いや何故というわけでもないか。セフィナに一緒に入ろうと言われたから入ったという単純な理由なのだが、こういうのは恋人同士とか家族とかで入るものではないのか?
混浴自体入るのは今回が初めてでよくわかってないんだよな。
「なあセフィナ、俺たち混浴に入っているが男女で入るのは普通なのか?」
「何を言っているのですか、普通に決まっていますよ(私とグレンさんの関係なら)」
「そうなのか……そうなのか?」
「そうなんですっ!」
ここまで強く言うならセフィナの方が正しいのかもしれない。
その後入ってきた子連れの家族の一言で俺はさらに不安になった。
「見てみてママ、カップルがいるよ!!」
「そうねぇ。ミサもあんな風に幸せになるのよ」
「うん、トウマくんと幸せになる!!」
傍から見ると俺とセフィナはカップルに見えているようだ。
……ということは普通ではないのでは?
「グレンさん、のぼせてませんか? そろそろ出ますか?」
「……そうさせてもらう」
温泉から出た俺は休憩ついでに牛乳を飲んだ。
「はー、美味い」
この牛乳今まで飲んだどれよりも美味しいな。
「アンタいい飲みっぷりだねぇ」
ロビーのおばあちゃんが飲み終えた俺の肩を叩いて話しかけてきた。
「この街の癒しの効果は温泉だけじゃない、この牛乳にもあるんじゃよ。彼女さんにも飲ませておやり」
「セフィナは彼女じゃないです。相棒です」
「おや、嫁さんだったかい。そりゃあ失敬」
これ以上否定するのは、さすがにセフィナに失礼だろうと考えた俺は肯定してしまった。
……セフィナに見られているとも知らずに。
おばあちゃんは、セフィナの姿を見てくしゃっとした笑みを浮かべ去っていった。
「あのグレンさん、先程のは…………いえなんでもありません」
「セフィナ違うんだ、さっきのは……」
おばあちゃんとの会話と肯定した経緯を念入りに説明した。
「そこまで説明されるのも、なんだか癪ですね」
その後のセフィナの照れながらの呟きを俺は生涯忘れないだろう。
「グレンさんにお嫁さんと言ってもらえて嬉しかったのですが」
これが、セフィナが俺を混浴に誘った理由なのだろうか。
俺が理由を聞くべきか悩んでいるとセフィナは俺の眼を見てぶっ飛んだ理由を説明し始めた。
「私はグレンさんなしでは生きていけません。私とグレンさんは結婚するので、一緒に入っておく必要があると思ったのです」
「…………セフィナ、俺の聞き間違いだと思うんだが、いずれ結婚すると言ったのか?」
「しないのですか?」
「するかしないか問われればするが、急すぎないか?」
「急ではないですよ。対等になれるよう護り合うのでしたら夫婦という関係の方が都合が良いと思いませんか?」
「まあそれはそうだが、セフィナは俺でいいのか」
「グレンさん以外考えられません」
「なら結婚するか」
俺が旅に出た理由がこういう予想外の出来事を味わってみたいからだったから……結果的にはいいのか。
俺はセフィナに改めて誓った。
「再び誓おう、星空の下の誓い以上に俺はセフィナを生涯をかけて護ることを」
「私もグレンさんを生涯護りますから」
これはセフィナの妹の願いを叶える旅なのだからセフィナに幸せになってもらわないことには旅の意味がない。
「なあセフィナ、次はどこか行きたい場所はあるのか?」
俺が尋ねるとセフィナは一言『グレンさんの実家』とだけ答えた。
「俺の実家……か。すまない、連れて行く事は出来ない」
「何故ですか?」
「存在しないからだ。三年前の聖魔討伐戦で俺の街は滅んだ」
聖魔討伐戦とは逆徒である魔人を討伐するために教会が立てた作戦であり、セフィナが聖女と呼ばれることになった戦いでもある。
「申し訳ありません、私のせいで」
「セフィナは教皇に言われてやっただけだろ。セフィナのせいじゃない。それを分かってるから結婚すると言っているんだ。セフィナは信用出来るからな」
「そう言っていただけると幸いです」
セフィナの表情に影が落ちたのを見て俺は提案をした。
「アルガナ公国に向かわないか?」
アルガナ公国は恋人・夫婦の聖地と呼ばれるほど愛に満ち溢れている国……今の俺とセフィナにとって一番良い場所のはずだ。
父さんと母さんが産まれ出会った場所でもある。
「いいと思います。ぜひ向かいましょう」
俺とセフィナはアルガナ公国へ向かうことにした。
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