第八話新婚旅行
第八話新婚旅行
アルガナ公国に向かうのならばセフィナに会わせたい人物がいる。
それは師匠であるエーヴェル=フィル=アバルゼルドだ。
強いのは良いんだが、結構荒れている点が玉に瑕だ。
久しぶりに師匠の荒れ具合を見るのもアリかもな。
……師匠周りだけ雰囲気甘くなさすぎておそらく異国ならば鬼と表現するのだろうな。
師匠は認めてくれるのだろうか?
「そんな思い悩んだ顔をしてどうしましたか?」
「セフィナに師匠に会ってもらいたいと思ってな」
俺にとって師匠は親同然の人であり、聖魔討伐戦で俺を助けその後育ててくれた人だ。
あの時の俺は今みたく準備をしていなかった。
冒険者になったばかりだったと言い訳は出来ない、何故なら準備をしていれば助けられた命がありすぎるからだ。
……これ以上考えるのはやめておこう。
もし考えるならこのことをセフィナにどう話すかだ。
そのことも大切だが、優先すべきは一つだ。
「アルガナ公国では旅の話で通してもいいか?」
セフィナとの旅だ。
俺の過去はその中に混ぜ込めばいい。
必要となればセフィナに話すぐらいでちょうどいいはずだ。
了承を得た俺は日が暮れ始めたのでセフィナを少し急かした。
その結果案外早くアルガナ公国の門前までたどり着いた。
アルガナ公国は、恋人・夫婦の聖地と呼ばれて賑わっているのは門前だけでも理解できるほどだった。
俺たちはアルガナ公国の門前で、ある看板を見つけた。
看板には語れば割引されると書かれていた。
前に来た時はこんな看板なかったはずだが、セフィナと話し合う口実としては良いのかもしれない。
それにこの割引ならカンザスから貰ったこの券を使えば済む。
看板を見終わり周囲を見渡すと、門をくぐったすぐの辺りに群衆を見つけた。
セフィナを連れ群衆を避けようとしたが、違和感を覚えてしまった。
そこで俺はセフィナに提案をした。
「式神を呼べないか、試したいことがあるんだ」
前回と同様の詠唱をセフィナは行った。
「未来を見つめし我が神(相棒)よ暗闇を照らす希望となりて顕現せよっ!!」
だが以前と違ったのは、顕現したのが、人型の女式神だという点だ。
見た目と呼吸の仕方自体が魔鳥の時とは違い、別個体なのだろうということは自ずと理解出来た。
そして俺は式神に隠密魔法と幻影魔法を使ってくれるかを確認した。
幻影魔法で俺とセフィナを群衆の中に潜らせてこの違和感の状態を探るためだ。
「セフィナに頼めそうか?」
「はい、なんとかなりそうな雰囲気です」
『了解、隠密魔法と幻影魔法をかけておいてあげるね。聖地で二人でラブラブに楽しんでね~。邪魔してごめんねセフィナ、じゃあね~』
人型の式神が姿を消そうとした矢先、魔鳥の式神が顕現した。
『おい、ワシの仕事を奪うでない、貴様にはまだ荷が重いじゃろうが! 小僧分かっているだろうがあの群衆を警戒を緩めるでないのじゃ、あれは普通の観光客ではない』
式神紙について調べた時に複数登録が可能だとは聞いていたことが役に立ったな。
式神たちが姿を消した際、セフィナが教えてくれた。
「あの女の子の式神はシェルエルが、私が寂しくないようにって登録してくれた式神なの」
魔法をかけてもらった俺たちは群衆に紛れた。
「師匠のところまでは俺が案内するからついてきてくれないかセフィナ?」
「ついては行きますが、私は隣を歩かせてもらえませんか?」
セフィナは相変わらずだったが、この場所では、なんとも思われないだろうと安心感すらある。
そして幻影が群衆の中に入っていくと
セフィナは有名であり聖女なのだということをこれでもかというほど思い知らされた。
そして違和感の正体に気づいた。
群衆の中に魔法使用後の魔力が残っている男がいた。
「セフィナ様よ、こっち向いて!!」
「セフィナ様、隣の男について説明を!!」
「特定の相手を側に置くのは聖女としてどうなのでしょうか!!」
「司教様のお言葉通りではないか、ここで消さなければ」
そして魔法を使った男を探し、探知魔力に設定した。
一時的にこの男を泳がせて司教様とやらまで辿る。
それだけでなく、幻影の俺に向けられる視線が突き刺さる。
恋人・夫婦の聖地にセフィナが男と来ているのだから当然と言えば当然の結果か。
ガラガラ
「お久しぶりです、師匠……お変わりなくお元気そうで何よりです」
師匠は山積みにされた血塗れの弟子たちの頂上で膝を組んで座っている。
「久方ぶりだなグレン」
師匠のこの圧を浴びると自ずと膝を折ってしまう。
師匠は聖魔討伐戦での影の英雄なのだ。
何故影の英雄かというとめんどくさいという理由で英雄の座を他人に譲ったからだ。
セフィナが師匠を見つめる瞳には怯えが混じっていた。
そしてセフィナの義手から魔法発動前の魔力循環の音が鳴り、口は無意識に魔法を放とうとしていた。
俺はセフィナの義手に手を添えた。
セフィナが何故そうなるのかが理解できたからだ。
師匠が聖魔討伐戦で教会側の人間を殺戮した光景を目にしたのだから。
「その女、彼奴等の手の者だろう。何故連れてきた。グレンの故郷の仇なのは知っているのか」
「はい、知っています師匠。ですが、聖女は教皇に命じられ参戦しただけです。そして現在は俺が生涯をかけて守ると誓った相手です」
俺はセフィナとの出会いも星空での誓いや結婚を省かず話した。
「ほう、知っていたのか。追われている聖女と。
状況を鑑みるに外が騒がしかったのはそのためか。彼奴等も懲りずにやるものだな。泊まることは許可するが、聖女には当然役に立ってもらう。それでも良いなら泊まるが良い」
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