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16話 冒険の終わり

 先に目を覚ましたのは、ミーシャだった。

 精神力を使い果たし、ダンジョンの中で昏倒してしまった彼女は、自分が置かれている状況を理解するまでやや時間がかかった。


――そうだ。ボスが現れて、私がなんとか雑魚を一掃して……それから……


「アーリン?」

 ミーシャは、自分のすぐとなりで倒れているアーリンの存在に気づいた。

 体に怪我が無いことから、どうやら魔物にやられたわけではないらしい。ということがわかる。

 自分と同じように、精神力を使い果たしてしまい、昏倒したらしい。


「アラド?」

 そしてミーシャは立ち上がった。


「ミーシャ。ようやく起きたのか」


 アラドは、巨大な魔物の腹の上に座っていた。


「アラド! もしかして、倒したの?」


「なんとかな」


 アラドが座っていたのは、ゴブリンキングの腹の上だった。

 彼はぴょんと飛び降りると、ミーシャの頭を撫でた。


「ありがとう。おかげで助かった」


「私の方こそだよ。アラドがボスを倒してくれなかったら、私達終わってた」


 二人はほほえみ合う。

 ミーシャとアラドの二人は、あまり攻撃的な性格をしていない。

 よって二人きりになると、のんびりとした空気が流れる。

 アラドが返り血に染まっていても、それは変わらない。


「うーん……あれ? 終わってる?」

 そこにアーリンも目を覚ました。

「よくやったわね! アラド!」


 負けず嫌いの褒め嫌いであるアーリンも、流石に自分の命を救われたからなのか、アラドに対する賞賛は惜しみないものだった。

 アラドも、思わず笑みが溢れる。


「ともかく、アイテムを漁ろう。それが終わったらさっさとダンジョンを脱出するぞ」


 三人は倒れているゴブリンキングの体を調べると、金貨が20枚。それと更に『金色の杖(未鑑定)』が見つかった。


 そして、部屋の最奥に設置されていた特別聖の赤い宝箱に近づく。

 

「えへへへへぇ、ボス部屋の宝箱なんて私初めて♪」

「俺も初めて見るな。金色の宝箱ってことは、LV5だ」

「最高級ってことだよね」


 三人は盛り上がりながら、その宝箱に手をかけ、蓋をあけた。

 その底に眠っていたのは、一本の剣だった。


「なにこれ?」

 アーリンの声にはやや失望の色が混じっていた。

 それも仕方ないことかもしれない。

 その剣は全体的にどこか古ぼけていて、まるで骨董品のようにも見えた。


「ともかく、これでダンジョンは完全制覇だ。早く外に出よう」


『古い刀剣(未鑑定)』を獲得した3人は、道を引き返して出口へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーー

ダンジョン攻略の成果品

 16100G

 大きな腰袋(一般品質)

 緑の指輪(未鑑定)

 ジェネラルの鎧(希少品質)

 金の杖(未鑑定)

 古い刀剣(未鑑定)

ーーーーーーーーーーーーー


「あぁーー、やっぱり外の空気は違うわね」

 ダンジョンの外に出るなり、アーリンは大きく深呼吸をはじめた。

 

「ダンジョンの中はカビ臭かったからな」

「それより、ゴブリン討伐の依頼はどうするの? まだ2匹しか倒してないよ」

「そんなの後回しで良いでしょ。それより戦利品の鑑定と、ダンジョン攻略完了の報告が先でしょ」

「そうだな」

 

 アーリンの言葉は正しい。

 三人は急いでリサカの街へと引き返すと、冒険者ギルドに入り、ホーマンに何が起きたのかを全て説明した。


「……お前ら、勝手にダンジョン攻略をしたのか?」

 話を聞き終えたホーマンの声は、震えていた。


「そう。だって、発見したらすぐに攻略しないと、他の人に宝物を盗られちゃうでしょ?」


「お前ら、まだ下石級だぞ! ダンジョンに挑むのは最低でも下鉄級になってからだ! 規則がなんのためにあると思ってる!」


「ど、怒鳴らないでよ。だって、そんなの知らなかったしぃ」

 アーリンは臆さずに反論する。

「それに、無事に攻略できたんだから良いでしょ? ほら、これ見てよ」


 そう言って、アーリンは先程のダンジョン攻略で入手した大量の金貨をテーブルの上に広げた。


「1万G以上はあるんだから。すごいでしょ?」


「……マジか」

 と、ホーマンも思わず声を漏らす。

「難易度はどれくらいだったんだ」


「えーっと、多分Dランクくらいだと思います。一番弱い敵がグレートゴブリンだったので」


「Dランクのダンジョンに挑んだのか!? お前達三人だけで?」

 ホーマンは頭を抱えて、今日一番の大きなため息をついた。

 信じられない。という気持ちが隠しきれていない。

「お前ら、たしかに凄いな」


「あはは、ようやく気づいたの?」

 アーリンは笑う。


「ダンジョンは完全に攻略したんだな?」


「はい。最奥に居たボスも撃破してきました」


「なら分かった。ちょっとまってろ」


 そう言って、ホーマンはギルドの奥へと引き返していった。

 しばらくして彼が戻ってくると、その手には銀色に輝く何かが握られていた。


「……それは?」


「これは下銀級の団印章だ」


「え?」


「本当なら、下銀級になるまで2年は掛かるところだが……お前ら程の実力者に、あまり低いランクの仕事をさせるのはむしろギルドにとって不利益になる。つまりこれはギルド支部長としての特例措置だ」


「えぇっ、良いのぉ?」

 そう言いながら、アーリンは早速その銀製のバッジを手に取ると、誇らしげに胸につけた。


「良いんですか? ホーマンさん」

 アラドはそんな軽率な行動は取らず、冷静にホーマンに質問をする。

「俺たちはルールを破って勝手にダンジョンを攻略したのに」


「いいさ。その代わり、冒険者ギルドの基本ルールにはしたがってもらう」

 ホーマンは、先程アーリンがテーブルの上にぶちまけた大量の金貨のうち、およそ半分ほどを手に取ると、自分の懐に入れた。

「『ダンジョン攻略を終えた際に獲得した金銭の5%はギルドに収めること』これがルールだ。でも、お前たちはルールを破ったから、今回は5%ではなく、50%を罰金として受け取っておく」


「50%は取りすぎでしょ!?」

 アーリンは叫んだ。


「まあまあ、6000Gでも十分だろ?」

 アラドはアーリンの肩に手を置く。

「これだけあれば、当面は金に困らないし、装備やアイテムを揃えることもできる。だろ? それに下銀級になったんだから、これからはもっと簡単に金を稼げるようになるんだぞ?」


「……うぐぐ」

 アーリンは、半分になってしまった金貨の山を睨みつけ、震えている。


「そんなことより、ダンジョンで拾った未鑑定品を調べてもらわないか?

 何か掘り出し物が見つかるかもしれないだろ?」

 アラドはそう言って、二人を引き連れてギルドを後にした。

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