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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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102/110

102.火の王

 

「って、火の王様!? 精霊の!?」


 思わずミヤコちゃんとアウルを見たら、まだ怖い顔でお店を見てた。

 お店は厨房だけじゃなく売り場まで延焼してて、火は消えたけど悲惨なことになってる。

 けが人がいないだけ幸いだと思うしかないけど、せっかくのお父さんたちの新しいお店が……。

 どうやら外のほうも騒がしくなってきてて、ご近所さんが起きてきたみたい。


「ジャッキーと権兵衛の姿は他の人にも見えるの?」

『いや、この家の者たちだけだ。余もミヤコも姿を変えるか?』

「ううん、私たちも含めて親戚ってことにするから大丈夫」


 そう言ってる間にお父さんとお母さん、おばあちゃんは外に出てご近所さんに謝ってた。

 ご近所さんの中には気をつけてくれって怒ってる人もいて、お父さんたちは何度も頭を下げてる。

 その姿を見てると、だんだん腹が立ってきた。


「ジャッキー、今回の火事に火の王様がかかわってるの?」

『そのようだな。吾輩は先ほどノスリとヒガラが水を操ったことでそなたらの気配を感じてやってきたのだ。すると火の王の気配までするではないか。なあ、風の王よ。これは火の王の仕業であるな?』


 ふわふわと筋斗雲に乗ったまま、ジャッキーが権兵衛に質問した。

 すると権兵衛は大きく頷いて私を見る。


『そうそう、火の王がコルリに会いたいと申しておってな。一度会いにくるようにと伝言を受けていたのだが、すっかり伝えるのを忘れておったのだ。どうやら火の王は無視をされたと腹を立てたようだな』

「……私が挨拶に行かなかったからって、こんなことをしたの?」


 どうしよう。思いっきり火の王様を殴りたいって思う。

 何とか落ち着こうと深呼吸するけど、怒りが収まらない。

 落ち着け、私。

 何度か深呼吸を繰り返していると、固めた拳に温かな手が触れた。

 驚いて見たらノスリが私の右手を包むように握ってる。


「ノスリ……?」

「アウルから話は聞いた。お前が怒るのは当たり前で、それを抑えようとしているのもわかる。何もしてやれなくて悪い」

「う、ううン。ありガとう。少し落ち着いたヨ」


 本当にどうしようもなくイライラモヤモヤガンガンしていた気持ちが少し落ち着いた。

 すると周りを見る余裕もできてきて、お兄ちゃんはツグミさんと怯えるアトリとセッカを慰めてくれてるのが見えた。

 お父さんたちはまだ外でご近所さんに謝ってて、アウルは権兵衛とジャッキーと何か話してて……。


「ミヤコちゃんは?」

『どうした?』

「ミヤコちゃんはどこに行ったの?」


 ついさっきまでここにいたのに、ミヤコちゃんの姿がない。

 お兄ちゃんたちともアウルたちとも外にもいない。


「アウル、ミヤコちゃんがどこにいったか知らない?」

『ミヤコ? ……あ、まずいな』

「何が!? ミヤコちゃんは大丈夫なの!?」

『ミヤコは大丈夫だ。大丈夫でないのは火の王なのだ』

「火の王様?」


 火の王様のことなんてどうでもいいよ。

 だけどミヤコちゃんがかかわってるなら放ってはおけない。

 そう思ったのにアウルたちは気にした様子がない。


「ねえ、ミヤコちゃんはどこに……あ、ミヤコちゃん!」


 ミヤコちゃんはさっきまでみんながいたダイニングの向こう――キッチンから出てきたのが見えた。

 ほっとして駆け寄ろうとしたら、ミヤコちゃんは何かを捕まえてた。

 ミヤコちゃんの小さな手の中でもがいているのは……。


「ネズミ!?」


 うそ! この家、ネズミがいたの!?

 殺鼠剤はお父さんたちの主義に反するからすごく気をつけてたのに、ひょっとしてこの辺りってネズミがよく出るの?

 王都は街中にネコがたくさんいて飼う必要がなかったけど、ここでは飼うべき?

 なんて頭の中で今はどうでもいいことを考えてたら、ジャッキーが楽しそうに笑った。


『なんと、さすがはドラゴン猊下。火の王である火ネズミをあっという間に捕まえられたのですね!』

「え……火の王様?」

「ネズミが出たのかい?」

「あ、お父さん。ううン、違うの。これは……火の精霊の王様デ、ミヤコちゃんが捕まえたノ」

「ああ、精霊の王様か。ネズミとは心臓に悪いなあ。火事の次はネズミ対策かと思ったよ」


 ご近所さんたちが引き上げたらしくて、お父さんたちは家の中に戻ってきた。

 それでミヤコちゃんの手の中のネズミを見てびっくり。

 うん。飲食業にとってネズミは大敵だからね。

 でもちょっと呑気すぎない?


「お父さん、あのネ、この火事はネ――」

「火の不始末だったのかなあ。気をつけていたつもりなんだけど、もっと気をつけないといけないね。おや、お客様かい?」

「う、ウン。こっちはさっき説明シた風の精霊の王様と水の精霊の王様」

「これはこれは、精霊の王様でしたか。コルリがいつもお世話になっております。コルリの父です」

「母です。王様たちはお茶を飲まれます? あまりいいものではありませんが……」

「コルリたちはこの短い旅でお友達をたくさん作れたんだねえ」


 いや、うん。友達といえばそうなんだけど。

 お父さんもお母さんもおばあちゃんも、もっとこうリアクションがね。

 まあ、ミヤコちゃんやアウルで慣れちゃったか。

 だけど権兵衛たちに言葉は通じないから……って、アウルが通訳してるし!

 アトリとセッカのテンションは急上昇だし!


『ふむ。人間界の茶というものでも飲んでみるか』

『俺様の口に合うとは思えぬがな!』


 じゃあ、飲まなくていいよ。

 もう何なの、この状況。

 ノスリには励まされるように肩をぽんぽんって叩かれるし、お兄ちゃんは諦めろって顔で首を振るし、ツグミさんは戸惑ってるし。

 うん、ツグミさんの反応が一番正しいよ。


『コルリ、こやつはどうする?』

「火の王様? うん、そうだね。火鼠の皮衣なら皇帝さんに蓬莱の珠の枝のお返しにしたらいいと思うよ」




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