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異世界に転生した平凡な私の非凡な日々~ドラゴンさんに懐かれました。  作者: もり


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101/110

101.挨拶

 

「お母さん、ただいマ!」

「おかえり、コルリ」


 私は裏口から部屋に入った途端、お母さんに抱きついた。

 子供っぽいことはわかってたけど、我慢できなかったんだもん。

 でもその後で、礼儀正しく挨拶をしてるツグミさんを見て反省した。

 ツグミさんはお母さんを亡くしてからまだあまり時間が経ってないのに。

 そう考えてると、後ろから軽く肩を叩かれた。


「何、ノスリ?」

「お前はお前らしくいればいいんだよ。変な気を回すな」


 どうやら私の考えはバレバレだったみたい。

 恐るべし、ノスリ。

 だけど、確かにノスリの言うとおりだよね。

 変に気を使うほうが気を使わせてしまうかも。

 いつも通りでいようとみんなでテーブルを囲んで思う。


 まだ朝もすごく早いのに、アトリとセッカも起きてきていて、ダイニングテーブルはぎゅうぎゅう。

 何があったかはざっと説明しただけ。

 でもアトリとセッカは碧国の話に興味津々でもっと聞きたがった。

 そこでツグミさんが少し場所を変えて詳しく話してくれる。


「ありがトう、ツグミさん」

「どういたしまして。私には兄弟がいないから、アトリ君とセッカちゃんと一緒に過ごすのは楽しいわ」


 にっこり笑うツグミさんは女神のようだよ。

 いたずら盛りの双子の相手をしてくれるなんて。

 私も一緒にいようとしたけど、なぜかツグミさんにはみんなと一緒にいてと言われてしまった。

 ツグミさんも気を遣ってくれてるのかな。

 ミヤコちゃんとアウルもツグミさんといることにしたみたいで、途端にダイニングが広く感じられる。


「お父さんたちはこの街で暮らしていて大丈夫だった? 何か問題はないかな?」

「そうだなあ。問題……問題というか、塩がちょっと高いなあ」

「そうねえ。お塩が高いからパンの値段を王都にいたときより上げないといけないのが心苦しいわねえ」

「それはたぶん人口と流通の問題だなあ。値段を上げたことで売り上げは?」

「やっぱり落ちたわねえ。大きさを小さくすることも考えたんだけど、なんだか詐欺のような気がして……」


 お兄ちゃんの質問にお父さんたちは考えながら答えてくれた。

 そうか。王都は人も物もたくさん集まるけど、こういう地方都市は逆に物流に偏りがあって、物価が上がったりするんだ。

 特にここは海から遠いし、ひょっとしてノスリの国の海岸線の魔獣被害が塩の値段に影響を与えてるのかなあ。

 だとしたら、これから少しずつ改善されていくかな?

 そのことも含めて、やっぱりノスリは早く国へ帰らないとダメなんだろうな。


「先ほども申しましたが、改めてお礼を言わせてください。皆さんにはお世話になりました。温かい食事やおもてなしにどれだけ救われたかわかりません。そしてコルリさんやヒガラさんの協力がなくては、今回のことは成し遂げられませんでした。大切なお子さんを旅に出すことをお許しくださり、本当にありがとうございました」

「あらあら、いいのよ。ヒガラもコルリも元気だし、少々無理したってへこたれないんだから」

「そうだよ、ノスリ君。君もツグミさんも家族も同然だし、気にしないでくれよ」


 ん? ぼんやりしているうちに話が変わってた。

 しかもノスリがすごくかしこまってて、お父さんたちは困ったように手を振って笑ってる。

 うん。もうお礼はいいと思うよ。

 そう思ったけど、ノスリは顔を上げるとまだ真剣な表情でお父さんを真っ直ぐに見つめた。

 お兄ちゃんはのんびりお茶を飲んでる。


「僕は……これから、国へ帰らなければなりません。おそらくここへ戻ってくることはこの先できないでしょう」

「ああ、うん……そうだね」

「寂しくなるわねえ」

「何か手伝えることがあればいいんだけどねえ」


 ノスリの言葉に、お父さんもお母さんもおばあちゃんも顔を曇らせた。

 うん、すごく同意だよ。

 きっとこの言葉を聞くとアトリとセッカは騒ぐから、ツグミさんは席を外してくれたんだ。

 すごい。そして私はなんて気が利かないんだ。反省。


「それで、とてもずうずうしいお願いなのですが、コルリさんさえよければ、僕と一緒にチャムラカ王国へ来てほしいと思っています」

「へ?」

「おや」

「あら」

「まあ」


 いきなり私のことまで出てびっくり。

 一緒にってことは、またついていってもいいってことだよね?

 お父さんとお母さんとおばあちゃんもびっくりした顔してる。

 うん。娘としてあんまり信用ないからね。

 でも邪魔にならないようにするから、ノスリと一緒に行きたいな。


「ノスリが邪魔に思わナイんだったラ、私も一緒に……なンか焦げ臭くナイ?」

「……ほんとだ」


 みんなが私の答えを待ってるように見たから、もちろん私も一緒に行くって言おうとして焦げ臭さに気付いた。

 お兄ちゃんもくんくん鼻を鳴らして答えた瞬間、お父さんが勢いよく立ち上がった。


「厨房だ!」

「ええ!?」


 みんな一斉に立ち上がってお父さんに続く。

 そしてお父さんがお店と住居部分の間のドアを開けると、確かに厨房から炎が上がっているのが見えた。

 火事!? なんで!? お父さんはいつも火の扱いには十分に注意してるはずなのに!?

 パニックになってるとゴオッて風が吹く。

 これって昔の映画か何かで見た、一気に酸素が入ると危ないってやつ!?

 危険を感じた瞬間、目の前に権兵衛が現れた。


『コルリ、思い出したぞ!』

「今それどころじゃない! ってか、風を起こさないで!」


 炎が大きくなるよ!

 ノスリとお兄ちゃんが水魔法で水をかけたけど全然炎は小さくならない。

 私の魔力は大したことはないけど、それでも――と思ったとき、騒ぎを聞きつけてかミヤコちゃんとアウルがやってきた。


『コルリ!』

『これはいったい――!?』


 これで安心だと思った私はミヤコちゃんに頼りすぎてると思う。

 ミヤコちゃんもアウルもお店を見て、権兵衛を見てすごく怖い顔をした。

 やっぱり権兵衛のせいで火が小さくならないの?


『コルリよ、なぜ吾輩を呼ばぬ。吾輩は友達ではなかったのか』

「あ……」


 すごく透明で綺麗な声が聞こえたと思ったら、水というより蒸気のようなものが炎を包んだ。

 それからあっという間に炎は小さくなって消えた。


「ありがとう、ジャッキー!」

『ふ……。当然のことをしたまでだ。友達だからな』

「うん、本当にありがとう! 水魔法が得意なお兄ちゃんでも消せないからどうなることかと思ったよ」

『それは当然であろう。人間ごときの力で、火の王の炎が消せるわけがないのだから』


 んん? 火の王?




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