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【連作短編027】 迷い猫 全10話 ―夜の街に、名前のない者たちがいる―  作者: macchao


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第九話 刻限:迫る期限、閉ざされた場所に残る命

第九話「刻限」です。


迫る時間の中、ハルたちは最後の一匹を探します。


小さな命を救うために、彼らが向かう先とは――。

 貼り紙の赤い印に、もう一枚、紙が重なった。


 テンが読めない文字を、何度も見た。


「形が変わった。たぶん——日付だ」


「いつだ」


 ゴロが聞いた。


「わからない。だが、紙が増えるたびに、近づいている気がする」



 その夜、重機が一台、倉庫の前に止まった。


 動いてはいなかった。だが、止まっているだけで、街の匂いが変わった。リンが一番先にそれに気づいた。


「機械の匂いです。嫌な匂い」


「嫌な匂いじゃない」


 ジジが言った。


「終わりの匂いだ」



 ハルは倉庫の中を、隅から隅まで回った。五匹目の匂いは、どこにもなかった。


「中にはいない」


 ロクが、ハルの後ろに立っていた。


「中にいないなら、どこだ」


「わからない」


 ロクの声が、初めて揺れた。


「五匹目だけ、最初から見つからなかった。運んだ覚えがない」


「運んでいないのか」


「運ぶ前に、いなくなった」


 ハルは、その言葉の意味を、しばらく考えた。



 ユキが、倉庫の裏で足を止めた。


「ここ」


「何かあるのか」


「足が、止まれと言ってる」


 今までは、足が「進め」と言っていた。止まれと言うのは、初めてだった。


 壁の隙間に、小さな穴があった。子猫一匹がやっと通れる大きさだった。


「ここから、出たのか」


「出た、んじゃない」


 ユキが言った。


「閉じ込められた」



 穴の奥は、配管の隙間だった。狭く、長く、出口が見えなかった。


「入れるのは、子猫だけだ」


 クマが言った。


「俺たちでは届かない」


 全員が、ユキを見た。ユキも、自分の体を見た。


「私が、入る」


「危ない」


 ハルが言った。だが、止める言葉が、それ以上出てこなかった。


「危ないのは、知ってる」


 ユキが言った。


「でも、足が、止まれと言ってない」


 重機の音が、遠くで一度、低く響いた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


第九話「刻限」では、ハルたちに残された時間が少しずつ迫ってきました。


見つからない五匹目の子猫。

変化する貼り紙。

そして、ユキが感じ取った小さな違和感。


次回はいよいよ、最後の救出へ向かいます。


引き続き『迷い猫』をよろしくお願いいたします。

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