第七話 予告:迫る期限、消える居場所
取り壊しの予告が貼られ、猫たちの暮らす場所にも終わりが近づきます。
残る二匹を見つけるため、それぞれができることを始める第七話です。
倉庫の壁に、貼り紙が出たのは、ある朝のことだった。
テンが最初に見つけて、集会に持ち帰った。人間の言葉は読めないが、紙の角に押された赤い印は、皆が知っていた。
「取り壊しの印だ」
ゴロが言った。
「いつだ」
「読めない。だが――この印が出てから、長くは持たない」
*
ハルはロクを探した。今度はすぐに見つかった。倉庫の前で、貼り紙を見上げていた。
「知ってたか」
「いつかは来ると思っていた」
「いつかは、じゃない。もう、来てる」
ロクは答えなかった。長い沈黙の後、ようやく口を開いた。
「あと二匹、見つかってない」
「探す時間は」
「わからない。人間の言葉が読めれば、わかったかもしれない」
*
集会は、いつもより長く続いた。
「全員で手分けする」
ゴロが言った。
「テンは地図、リンは人の声を聞く、ジジは縄張りの外を見張る。クマは——」
「俺は、待つ場所を作る」
クマが言った。少し考えて、いつもより長い間を置いて。
「見つかった子が、すぐに休める場所を」
*
ユキが、自分から手を挙げた。
「私も探す」
「足は覚えてるのか」
ハルが聞くと、ユキは少し考えた。
「全部は覚えてない。でも、似た傷を持つ子の匂いなら、わかる気がする」
それで十分だった。誰も、深くは追わなかった。
*
その夜、街は静かだった。だが、いつもの静かさとは違った。
ハルは塀の上から、貼り紙のある建物を見た。期限のある静けさは、ただの静けさより重かった。
「間に合うか」
隣に来たロクが、初めて、答えのない問いを口にした。
ハルは答えなかった。答えを持っていなかった。
ただ、今度は目を逸らさずに、ロクの横に立っていた。
第七話をお読みいただき、ありがとうございました。
これまで少しずつ積み重ねてきた出来事が、「時間」という形で猫たちに突きつけられる回になりました。
次回はいよいよ捜索が大きく動き始めます。最後まで見守っていただけたら嬉しいです。




