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【連作短編027】 迷い猫 全10話 ―夜の街に、名前のない者たちがいる―  作者: macchao


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7/10

第七話 予告:迫る期限、消える居場所

取り壊しの予告が貼られ、猫たちの暮らす場所にも終わりが近づきます。


残る二匹を見つけるため、それぞれができることを始める第七話です。

 倉庫の壁に、貼り紙が出たのは、ある朝のことだった。


 テンが最初に見つけて、集会に持ち帰った。人間の言葉は読めないが、紙の角に押された赤い印は、皆が知っていた。


「取り壊しの印だ」


 ゴロが言った。


「いつだ」


「読めない。だが――この印が出てから、長くは持たない」



 ハルはロクを探した。今度はすぐに見つかった。倉庫の前で、貼り紙を見上げていた。


「知ってたか」


「いつかは来ると思っていた」


「いつかは、じゃない。もう、来てる」


 ロクは答えなかった。長い沈黙の後、ようやく口を開いた。


「あと二匹、見つかってない」


「探す時間は」


「わからない。人間の言葉が読めれば、わかったかもしれない」



 集会は、いつもより長く続いた。


「全員で手分けする」


 ゴロが言った。


「テンは地図、リンは人の声を聞く、ジジは縄張りの外を見張る。クマは——」


「俺は、待つ場所を作る」


 クマが言った。少し考えて、いつもより長い間を置いて。


「見つかった子が、すぐに休める場所を」



 ユキが、自分から手を挙げた。


「私も探す」


「足は覚えてるのか」


 ハルが聞くと、ユキは少し考えた。


「全部は覚えてない。でも、似た傷を持つ子の匂いなら、わかる気がする」


 それで十分だった。誰も、深くは追わなかった。



 その夜、街は静かだった。だが、いつもの静かさとは違った。


 ハルは塀の上から、貼り紙のある建物を見た。期限のある静けさは、ただの静けさより重かった。


「間に合うか」


 隣に来たロクが、初めて、答えのない問いを口にした。


 ハルは答えなかった。答えを持っていなかった。


 ただ、今度は目を逸らさずに、ロクの横に立っていた。

第七話をお読みいただき、ありがとうございました。


これまで少しずつ積み重ねてきた出来事が、「時間」という形で猫たちに突きつけられる回になりました。


次回はいよいよ捜索が大きく動き始めます。最後まで見守っていただけたら嬉しいです。

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