表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連作短編027】 迷い猫 全10話 ―夜の街に、名前のない者たちがいる―  作者: macchao


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
6/10

第六話 数:名前を失った子猫たちは、数で呼ばれていた

今回は、新たな子猫との出会いから、「名前を持つこと」の意味が少しずつ見えてきます。


静かな一話ですが、この先につながる大切な回です。

どうぞ最後までお楽しみください。

 三匹目は、商店街のアーケードの隙間で見つかった。


 見つけたのはリンだった。夜の見回りで、雨どいの裏に隠れているのを聞きつけた。


「鳴き声がしたんです。普通の子猫の鳴き方じゃなかった」


「どう違った」


 ハルが聞くと、リンは少し考えた。


「助けを呼ぶ声じゃなくて……数を、数えるみたいな声でした」



 その子猫は、ユキより少し年上に見えた。耳に同じ欠け、同じ間隔の傷があった。


 名前を聞いても、答えなかった。だが、ユキの方を見たとき、何かが動いた。


「お前、知ってる」


 ユキが言うと、子猫は小さく頷いた。


「順番、だった」


「順番?」


「一匹目、二匹目、三匹目。そう呼ばれてた」


 ハルは、その言い方に何かが引っかかった。



 集会で、ゴロがそれを聞いて目を細めた。


「番号で呼んでいたのか」


「名前を、付けなかったということだ」


 クマが言った。一拍遅れて。


「名前を付けないのは、覚えなくて済むようにするためだ」


「なぜ覚えなくて済むようにする」


 ジジが聞いた。誰も、すぐには答えなかった。


 長い沈黙のあとで、テンが言った。


「失っても、痛まないようにだ」



 ハルはロクのところへ行った。今度は、待たずに探しに行った。


「番号で呼んでいたのか」


「呼んでいた」


「お前も、覚えなくて済むようにしたのか」


 ロクは初めて、はっきりとハルを見た。


「お前は、覚えていたか。十年前の、あの子の名前を」


 ハルは答えられなかった。


「覚えてない。それが答えだ」


 ロクは静かに言った。


「だから、俺は番号にした。覚えていないことに、痛みを感じなくて済むように」



 三匹目の子猫は、結局、自分で名前を選ばなかった。


 ユキが「呼びたいときは、呼んでいい」と言うと、ただ頷いた。


 その夜、橋の下で三匹が並んで眠った。ハルはその様子を、少し離れた場所から見ていた。


 数える、という行為が、今は名前を持たない者たちの間で、唯一の繋がりになっていた。


 それでいいのか、ハルにはまだわからなかった。

第六話をお読みいただき、ありがとうございました。


「数」というタイトルには、数えることと、名前を失うことの両方の意味を込めました。

名前がないからこそ生まれる距離と、それでもつながろうとする子猫たちの姿を書いています。


次回も少しずつ過去の出来事が明らかになっていきます。

引き続き『迷い猫』をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ