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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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サプライズ

 今日の鍛錬も、楽しかった。

 アモディエナの動きが、前よりもよく見えた気がする。


 魔力の扱い方も、何だか最初よりも大分コントロールできてると、アモディエナにも認められた。


 とはいえ、あまり長くは動けない。鍛錬の体力は、まだまだ足りない。


 疲れて鍛錬場の椅子に寄りかかっていると、頬に冷たい感触がした。


「ひゃっ…」

「疲れただろう。飲みな」


 視線を向けると、飲み物を持っているアモディエナの姿があった。汗を拭いながら、その飲み物を受け取り、口へと運ぶ。


 ーーー冷たくて、美味しい。

 ペルセにとってはこれが、鍛錬後の小さな楽しみでもあった。


 ふと、アモディエナに目を向ける。

 何だか、今日は少しいつもと様子が違う。


 言葉にするのは難しいのだが、アモディエナの奥の方に、何だか落ち着かなさがあるような気がする。

 そして、やけに時間を気にしている。


 一体、何なのだろうか。

 ペルセは飲み物を飲みながら、首を傾げた。


「…入りますよ、アモディエナさん」


 すると、入り口の方から、女性の声が聞こえてきた。

 どこかで、聞いたような覚えがある。だが、思い出せない。


「…やっと、ですかね」


 その声に、アモディエナが待ち侘びたかのように呟いた。もしかして、この声の主が来るのを待っていたのか。


 不思議に思いながら見ていると、入り口の扉が開いた。

 そこにいた者の顔を見て、ペルセは止まった。


「…えっ?」


 一瞬、自分の顔が鏡に映ったのかと思った。

 しかし、自分は今、間違いなくアモディエナの隣にいる。顔だけが、向こうへ行ってしまったのか。


 そう思ってしまうほど、扉の向こうにいた女性の顔は、自分に似ていた。


「…ペルセ、紹介するぞ。この方は、デメナ。お前の…母親だ」


 アモディエナが若干言いにくそうに、女性を紹介してくる。


 デメナ。

 そういえば、最初にサトゥニアに来た時、母親の名前を聞き、写真を見せられた記憶がある。


 あの写真の人物が、今、目の前にいるのか。


 なんだか、実感が湧かない。


 しかし、これだけ似ているのならば、母娘と言われても不思議と納得はいく。


 目の前にいるデメナは、こちらを見て、今にも泣きそうな表情をしていた。


「…お母さん…なの…?」


 そんな表情を見て、やっとのことでペルセの口から出た言葉は、それだけだった。

 にも関わらず、デメナは震えながら、こちらにゆっくりと近付いてくる。


「…ペルセさん…?ペルセさん…」


 ペルセの前に来ると、デメナは膝をついて、ペルセに視線を合わせた。

 近くで見ると、本当に自分とそっくりな顔だ。髪の色も、自分と同じである。とはいえ、体つきはさすがに大人な女性だ。

 その体つきを余すことなく披露する、ちょっとセクシーな上半身の衣装とズボンという、動きやすそうな格好だ。


 何だか、ハイーラが羨ましがりそうな体付きだ。

 そんなどうでもいいことを考えていると、デメナは手を地面について、泣き始めた。


「…ごめんなさい…ごめんなさい…!!」


 その声は弱々しく、なんとか絞り出したような、掠れた声だった。

 何に対して謝っているのか。何で、自分に謝るのか。全く、分からない。


「あなたが辛い時に、支えられなかったのに…!母のケジメとして…もう会わないつもりだったのに…ッ!もう、我慢ができなくて…!!」


 デメナが何か言っている。でも、ペルセには、その内容を完全には理解できなかった。

 だが、デメナが母として決めたことを曲げてまで、自分に会いに来たことは理解できた。


 ペルセは上下する母の肩に、そっと手を添えた。


「…お母さん」


 優しくそう呼ぶと、デメナは顔を上げる。

 涙と鼻水が交じって、酷い顔になっている。汗を拭くためにもらって、まだ使っていなかったタオルを、デメナの顔に押し当てる。

 以前、マールに自分の泣き顔を拭かれたように、優しく拭き取っていく。何だか、自分の親の涙を拭くのは、不思議な感覚だった。


「本音が聞けて、良かった」

「…え?」


 ペルセはタオルを顔から離すと同時に、安堵のため息を吐いた。

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