サトゥニアの思惑
一方、サトゥニアの町ーーー。
玉座の間にて、魔王サトゥニアが、二人の悪魔たちと円卓越しに向かい合っている。
「…どういうつもりだ、サトゥニア」
魔界参謀のクロニオスが、サトゥニアへ不快さを隠そうともせずに、こちらを睨みつけてくる。
その隣には、唖然としているデメナの姿もあった。
「言葉通りだ。今日、ペルセの鍛錬の際に、貴様らも顔を出せ」
サトゥニアは平然と言い放つ。
それに対し、クロニオスは思い切り机を殴りつける。
クロニオスの怪力が、空気を揺らがせる。
しかし、サトゥニアは全く動じなかった。
「ふざけてんのか!!今更俺らが…!!」
「ふざけてなどいない。貴様はペルセに会う資格がない、と言っているが、それは貴様らの自己満足だろう」
その言葉に、クロニオスの表情が歪む。
この夫婦との付き合いは長い。だからこそ、この二人の感情の機微などお見通しだ。
「…特にデメナ。貴様は配下のイアノを通じて、ペルセの様子を聞いているだろう。何か、聞いていたりするか?」
サトゥニアはデメナへ視線を向けた。
デメナは一瞬視線を落とす。うつむいてしまって表情は見えないが、明らかに何かを堪えてるような、そんな様子だ。
何を堪えてるかなど、明白だと言うのに。
サトゥニアには、無駄に抗ってるようにしか見えなかった。
「…少なくとも…ペルセさんは、私たち両親を、拒む様子を見せていない、と…」
デメナは、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。
その言葉に、クロニオスの視線が自分から反れる。
しかし、ここで話を止める気はなかった。サトゥニアは、口を開いた。
「そういうことだ。少なくともペルセは、貴様らを拒絶するつもりはない。あとは、貴様らの意識だけだ」
サトゥニアはそう言いながら、二人を真っ直ぐに見つめていた。
その言葉に、デメナは肩を大きく動かした。
「だが、俺らは…!!」
クロニオスはそれでも、首を縦には振らない。
この男の真面目さと初志貫徹振りは、評価すべきところだ。だが、今回に限っては、明らかに枷だ。
サトゥニアは相手のその頑固さに、軽くため息をつき、席を立った。
「…俺が間を取り持つのは今回だけだ。この機会に会わぬというのなら、それも止めはせん」
サトゥニアは呆れたように、二人を見る。
クロニオスは震えている。それが怒りなのか、何かを我慢しているのかは分からない。だが、明らかに迷っているのは確かだ。
デメナは、もう限界そうだ。クロニオスの方に向けて、何かを囁いている。だが、その中身に興味は無い。
ここからは、夫婦で決めること。そう考えるサトゥニアに、これ以上介入する気はなかった。
サトゥニアは出口へと歩を進めつつ、視線を自身の腕時計へと向ける。そろそろ、イアノがペルセを鍛錬場に連れてくる時間だ。
「…二時間後に、第一鍛錬室。そこに来れば、鍛錬後のペルセに会えるよう、手筈を整えている」
通り過ぎるその瞬間に、サトゥニアは低く言い放つ。
クロニオスの纏う空気は、それでも変わらない。
サトゥニアは二人からの反応を待つことなく、玉座の間を出ていった。
言うべきことは、言った。
あとは、あの二人がどう動くか。
「…バカ者共が…」
静かな廊下で、思わずそう呟かずにはいられなかった。




