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最底辺の悪魔は世界を見る~ペルセの旅路~  作者: ルゥナ
第一部 第四章 家族の絆
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最後の要件

「さて…こんなところですわね」


 イアノはそう言いながら、机のうえに出していた資料をしまう。


 何だか、どっと疲れてしまった。だが、これでようやく話が終わる。


 そう思うと、ハイーラの口から安堵のため息が漏れる。


「…さて、実はあともう一件、お話がありますの」


 しかし、イアノのその一言で、再び場が緊張する。ハイーラもマールも、思わず背筋を伸ばす。


 一体、これ以上何があるというのか。

 キーアの処分、アンドレイスへの処罰。もう、ハイーラですらお腹いっぱいだ。


 不安に思いつつ、イアノを見つめる。

 イアノは静かに、マールの膝の上にいるペルセに、目を向ける。


「…ペルセちゃん」

「んぇ?」


 呼ばれると思ってなかったのか、ペルセは何だか間抜けな声を出した。


 幻影刑の話をされた時は怯えていたが、マールに頭を撫でられ、甘やかされた結果、かなり落ち着いている。


 ーーーマールの手には、癒し効果でもあるのだろうか。色々なことがありすぎて、そんな下らないことがハイーラの頭をよぎった。


「大したことではありませんわ。ペルセちゃん、また私とサトゥニアに行きましょう?」

「いつもの鍛錬!?」


 イアノの優しい声に、ペルセが歓喜の声をあげる。そのままの勢いで、イアノに再び突撃した。


 ーーー忙しない。けど、それが子供っぽくていい。


 この反応を見る限り、サトゥニアでの鍛錬は、ペルセにとって疲弊はするが、楽しい時間であるようだ。


 だが、あんな重苦しい空気で言うことではない。何か、裏があるはずだ。


「…イアノさん、一体何が?」


 ハイーラの口は、自然と動く。

 イアノは、自身に今にも飛びついてきそうなペルセを優しく抑えつつ、ハイーラの方を見た。


「実は、魔王サトゥニア様から今日中に町へ直接連れてきてほしい、ということを厳命されておりまして」

「え…謁見、というわけではなく?」

「詳細は私も…。ただ、魔王様に直接お会いする、という話ではありませんでしたわ」


 イアノは少し、困ったような笑みを浮かべる。


 サトゥニアからの呼び出し。以前にもあったことだ。

 だが、何だか今回のは、回りくどい呼び方だ。


 直接会いたいわけではないのに、サトゥニアの町へ来い、というのは、何だか変だ。


 一体、どういうつもりなのか。

 だが、ペルセの耳にそんなことは入っていないようで、イアノとサトゥニアへ行けることが嬉しいようだ。


「お姉ちゃん!!早く行こう!!」

「…まぁ、いつもより帰りが、少し遅くなるかもしれません。面倒は私がきちんと見させていただきますので、ご心配は無用ですわ」


 ペルセがイアノの服を軽く引っ張っている。もう、待ちきれないようだ。

 イアノはペルセの頭を軽く撫でつつ、ハイーラへ軽く会釈し、玄関へと向かい始めた。


「…分かりました」


 イアノにペルセを預けるのは、もう何度目か分からない。だから、そこの心配はしていない。

 しかし、サトゥニアへの呼び出しの中身には、どうにも引っかかる。


 とはいえ、ペルセが嬉しそうであるなら、そこへ何か言うのも野暮だ。


 ハイーラは一息つくと、ペルセが離れてしまって手持ち無沙汰になってしまったマールの頭を引っ叩いた。


「いったぁ〜…!何すんの〜!?」

「何ボーッとしてんの。お客さんがお帰りよ。見送らないと」


 マールは少し不満そうだが、このくらいの扱いで十分だ。そこは、昔も今も、変えるつもりはない。

 ハイーラが立ち上がるのと同時に、マールも渋々立ち上がった。


「…行ってらっしゃい、ペルセ」

「行ってきまーす!」


 ハイーラが手を振ると、ペルセはイアノと手を繋ぎながら、もう一方の手をハイーラに向けて大きく振った。


 ハイーラはそのまま、玄関の扉が閉められるまで、手を振り続けていた。

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