キーアへの報い
そのページには、キーアに与える刑罰が一覧として書かれていた。
それは一つではなく、どうやら複数あるようだ。
「まず、イアノ様からの提案として、財産の没収、詐欺被害者への全額補償、その不足分をダスノム復旧労働へ従事することでの給与所得で分割払い、という罰を課すことが決まりました」
リリエスはページに記された一覧を、淡々と読み上げた。
ーーーえげつない。
容赦なくやってくれて全然良いのだが、それにしてもかなり重い。
金と看板だけで取り繕うしかなかった連中が、全て取り上げられ、ダスノムという自分達が徹底的に下に見てるであろう場所で働いて金を返す。屈辱の極みだろう。
だが、資料を見ると、下に補足説明があった。
「なお、被害者への弁済については、加害者及びキーアが被害者宅へ直接出向き、対面で謝罪と共に行うこと…?」
「えぇ。ただ弁済させるだけでは不足してると感じましたので」
ハイーラが補足を読み上げた。その内容に、隣のマールも目を見開く。
補足を見ると、より重さが増している。
しかも、リリエスの口ぶりからすると、これはリリエスからの追加提案のようだ。
ベリアスの被害者に、プライドの高いキーア達が頭を下げ、自分の金を差し出す。その姿を想像すると、物凄く滑稽だ。
「エグい…でもこれ、キーア達は逃げ出しませんかね?」
だが、ハイーラは心配だった。
こんな罰、キーア達が耐えられるわけがない。むしろ、数時間も持たずに逃げ出す未来しか見えない。
しかし、そんなことはリリエスも想定済みだったのか、ハイーラを見ながらニッコリと笑った。
「心配は無用です。財産没収は既に実行しておりますし、謝罪行脚やダスノム復旧作業の労務監督も、私達キュエル家の者が責任持って行いますので」
こちらに向けられたリリエスの笑顔が、何だか怖い。思わず背筋が伸びる。
敵に回してはいけない。
直感的に、そう感じた。
「逃す気など、微塵もありませんから。死に逃げることもさせませんし、私達が立て替えることもしません。本人の給与から、必ず返させます」
リリエスのその言葉は、ハイーラとマールに刺さった。
イアノの膝のうえにいるペルセは、イアノの胸元に頭を預け、完全に抱き着いており、リリエスの様子は気にも留めていない。それが、せめてもの救いか。
「徹底しておりますわね。さすがリリエス」
「このくらいさせなければ、マールさんへの償いにもなりません」
ペルセの頭を撫でながら、イアノはリリエスへ声をかける。リリエスは肩をすくめてはいるが、当然だと言わんばかりの態度だ。
キーア達にとっては、発狂ものの刑罰だ。だが、この言動からすると、それすらも許してくれなさそうだ。
リリエスはすべき説明が終わったのか、魔力の紙を霧散させ、自分の手中へと戻した。
「…これが、キーア達への処分になります。私達キュエル家が責任持って、子供の面倒も、キーアへの処罰も併せて見させていただきます。ご納得いただけるかは分かりませんが、可能な限り筋を通したつもりです」
リリエスはそう言いつつ、ハイーラ達へ視線を向ける。
自分としては、文句つける気はない。むしろ、ここまでやってくれるのか、という感想しか出ない。だが、マールはどう思っているのか。
視線を向けると、マールは少し考えた後に、ゆっくり口を開いた。
「ま〜…それであいつらがへし折れてくれれば、私も楽ですね〜」
…相変わらず軽い。でも、少しマールの本音が出てる辺り、何だかちょっと嬉しい。
リリエスはその言葉を聞き、ほっと一息ついた。
「…では、私はこれで失礼します。イアノ様、あとお任せしても?」
「構いませんわ。お忙しい所来ていただいて、感謝いたしますの」
「分かりました。ありがとうございます」
リリエスはそう言うと、椅子からゆっくり立ち上がり、ハイーラ達へ改めて、深々と頭を下げてきた。
「…本当に、申し訳ありませんでした」
「えっ…!?」
ハイーラが何か言う間もなく、リリエスはそれだけ言うと、家から出ていってしまった。




